ひまわり畑を目指して
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『ドレスローザの国民達、および、客人達。別に初めからお前らを恐怖で支配しても良かったんだ』
ドフラミンゴのスピーチが国中に響き渡る。ついに本性を隠す気もなくなったようだ。ローの言う通り、皆殺しにするのであれば当然だ。ドフラミンゴが鳥カゴの解除条件に挙げたのは2点、ドフラミンゴを殺すか、ドフラミンゴが決めた賞金首を全員殺すこと。
「悪趣味……」
「そもそもあいつをやる以外に鳥カゴが解除されるわけがねェ」
賞金首が誰で何人いるかは分からないが、仮にそれを達成したところで、ドフラミンゴが約束を守る保証はどこにもない。つまり、この国を救うにはやはりドフラミンゴを倒す以外に方法はない。だがこの混乱の中、国民たちがその現実に気付くにはまだまだ時間がかかるだろう。
「おい、お前ら何があった」
「ゾロ!!」
「あ、鬼哭」
「ついでに拾っておいた」
ぽんと投げられた鬼哭を受け取るシノ。どこに転がっていたのか。ゾロは、ピーカがドフラミンゴのもとへやってきた時に、先に庭に放り出されていたらしい。
「ついでにローの椅子の背もたれ斬れる?そしたらロー動きやすくなると思うんだけど」
「あ?これでいいか?」
サクッと豆腐を斬るように椅子が刻まれた。手は相変わらず後ろで手錠を付けられ動かせないものの、足は自由になった。これで動き回ることは可能だろう。どちらにしろ鍵を見つけなければ自由に能力は使えないのだが。
ドフラミンゴの演説は続いている。ついに賞金首が発表されるらしい。映像電伝虫の画面に映し出される12人の写真。この島に残っている麦わらの一味、ロビン・フランキー・ゾロ、侍の錦えもん、ドレスローザ元王家のヴィオラとレベッカとキュロス。ルフィ、ロー、リク王、そして革命軍のサボの4人には何やら星が3つついていた。どうやら星1つにつき1億べりーの懸賞金という意味らしい。
「わぁ……ロー、私もついにお尋ね者だよ」
「この面子だったらそうなるだろうな」
ハートの海賊団として堂々と名前と写真を乗せられてしまった。手配書も出たことがないというのに、いつの間に写真を撮られたのか。ちなみにその後、星5としてウソップが発表された。ドフラミンゴを最も怒らせた男として紹介されていたので、オモチャ達を元に戻したのは、ウソップの功績なのだろう。
ぼんやりと映像を見ていると、ゾロの持っていた電伝虫に連絡が来た。ロビンがウソップやトンタッタ族を連れてここへ向かっているらしい。
「ローがいない間に、フランキー達がトンタッタ族っていう小人と仲良くなったらしくて、流れでドフラミンゴ倒すことになっちゃったんだよね」
「あいつらまた勝手なことを……」
「でもローだって、ドフラミンゴ倒したいでしょ?」
「……リスクの問題だ」
そうは言うがあんなズタボロにされた姿を一度見せられている身としては説得力がないのだが。
「おい、わかってんのか、麦わら屋。今ドフラミンゴを討てば、SMILEを失うカイドウの怒りは全ておれ達に向けられる。怒れる四皇と直接戦う事になるんだぞ!!」
「そんな先の話はあとでいい!この国よく見てみろ!今おれが止まってどうすんだ!!」
「……!!」
海賊としての目標よりも、今目の前のこの国をどうしたいか。どうにも情に厚すぎる海賊だ。だが、その言葉は確実にローにも響くだろう。利害を考えても、心情的にも、ドフラミンゴを討たないという手はない。そもそもここでドフラミンゴを討たなければ、この鳥カゴが解除されることは無い。ローの目的も、シノの目的も果たすことが出来ないのだ。シノは何も言わず、繋いでいたローの手を少し強く握った。
「そうは言っても、こっからあそこまで、なかなかな道のりだな」
「ドンキホーテファミリーもそうだが、海軍大将藤虎も来てるはずだ」
「あ、さっきドフラミンゴと会った時に、会った会った」
シノの言葉に眉を顰めるロー。厄介な人間に片っ端から遭遇していることを咎めているのだろうが、この状況では遅かれ早かれ遭遇する可能性はあったのだからしょうがない。
「あーあの賭場のおっちゃんなー強そうだったなー」
「立場上、確かに味方はしないけど、この状況じゃ、完全に邪魔するようなことはしてこないと思うよ」
「そういやお前さっきなんか話してたな」
「はぁ!?」
ゾロの言葉に余計顔をしかめるロー。今はシノより自分自身の心配をして欲しいのだが。藤虎と話したのは一瞬だったが、何となく彼の人柄が伺えた気がした。決して味方になることは無いが、現時点ではあくまで優先順位によっては完全に敵対しない可能性はある。
「まぁ本当に邪魔されねェなら有難い限りだがな」
「ただの勘だからわかんないけどね」
「遭遇しねェに越したことは無い。それより俺の鍵だ」
「あ、そうだね。ちょっと待って、探すから……」
ローの手を離し、くるりと背を向け、あたりを見回そうとした時だった。ルフィが笑顔で腕を伸ばした。その腕は、シノを通り越し、ローの首に巻かれる。これはまずいと思った時には既に遅かった。
「よっしゃ、じゃあミンゴの所行くぞ!!」
「あ、待って、ルフィ君!!先にローの鍵を……」
「おれは錠を外してからだ!!」
「そのうち外れるよ」
「外れるか!!」
ルフィはそのまま両腕でゾロとローを抱えるとドフラミンゴのいる城の方に走り出す。が、そもそも今いるここが既に高台だ。城にいくには一度町に降りて城の山へ登る必要がある。
「ロー!!私鍵探しておくからー!!」
「まさか飛び降りるの!?」
「待ってろドフラミンゴ~~~!!!!!」
ヴィオラの驚きをよそに、高台から飛び降りていったルフィ。風船のように膨らむことが出来るので着地の心配はないだろうが、そもそも下には既に海軍や国民が溢れかえっている。他に何か方法は無かったのか。
「行っちゃった……」
またしてもおいて行かれてしまったシノ。ルフィとゾロがいるなら安心、と言いたいところだが、ローも含め全員が自由人なので、不安ではある。シノはふぅとため息をつき、気持ちを切り替え、予定通り鍵を探して回る。ルフィの言う通りそのうち外れてくれればそれで良いが、まず無いだろう。
「私も手伝うわ」
「ヴィオラさん、ありがとう!」
「ドフラミンゴを倒すために海賊になってくれたんでしょ?」
ぱちんと綺麗な瞳でウインクをするヴィオラ。先ほどの道中の会話を覚えていたらしい。そもそもヴィオラは麦わらの一味が勝つことに賭けているのだ。だからこそ、あの時、王宮の前でルフィ達が来るのを待ってくれていた。
「ローもね、あんな事言ってたけど、本当にドフラミンゴを倒したいんだよ。この国のためとかじゃないけど、それでもドフラミンゴみたいな海賊の事は昔から大嫌いだから」
「わかってるわ。私は麦わら達だけに賭けてるんじゃない。貴方達も含めた同盟に賭けてるのよ。もちろん、貴方達は貴方達の目的のために動いてるのもわかっているわ。それでも、ドフラミンゴを倒したいという目的は一緒だもの」
「ヴィオラさん……」
表面上とは言えど海賊に10年も身を置いていただけのことはある。海賊に賭けるなんて、肝が据わった女性だ。世の中にはどれだけ強くてカッコいい女性がいるのか。シノもいつかこんな女性になってみたいものだ。
「あったわ!!」
「本当!?」
ついにヴィオラが鍵を見つけ出した。この高台に一緒に落ちてきてくれていたことに感謝するしかない。リク王のもとへ戻ると、そこにはロビンたちもたどり着いていた。ウィッカのような小人たちも大勢いる。闘技場で戦っていたレベッカもそこにはいた。事前にヴィオラから聞いていた話の通りであれば、彼女はヴィオラの姪らしい。レベッカはヴィオラを見つけてすぐに抱き着きに来た。
「問題はこの鍵をどうやって届けるかだな……」
「ねェ、その鍵、私もルーシーに届けに行くよ」
「よーし、そうすべ!ルフィ先輩んとこさ行くなら俺も付き合うべ!任せとけ!」
「あ、バルトロメオ」
闘技場で見かけたルフィを呼んできてくれたバルトロメオ。闘技場の決勝戦に出ていたので、レベッカと一緒にここまで来たのだろう。ルフィやローの元へ向かうとなるとどのルートだとしても敵と遭遇することは避けられない。戦力が増えるのはありがたいことだ。一応王族であるレベッカを連れていっていいものかはわからないが、あの闘技場の決勝戦に勝ち進むような女性なので、恐らく強いのだろう。
「そういう事なら屋根の上をいきましょう!ヴィオラ様、ぼくとカブさんがお供するれすご安心を!」
トンタッタ族の2人がヴィオラとレベッカに提案をした。ウィッカ以外は初対面だが、本当に皆手のひらサイズだった。そんな彼らには何か策があるらしい。敵を極力避けて向かう術があるのであれば、シノとしてもそれに乗っかりたい。
「ロビンさん、ローの電伝虫にかけられる?」
「えェ、任せて」
すぐに電伝虫を繋げるロビン。ワンコールで取られた。
『もしもし、おれはルフィ。海賊王になる男だ!!!』
「ルフィね、わたしよ。今どこにいるのかしら」
『ロビン!!今……1段目の山だけど、ひまわり畑って所に向かってる』
ヴィオラによると、ひまわり畑は4段目にあるらしい。そこは今の所、戦場にはなっていないらしく、そこで上手く合流出来れば、ローに鍵を渡すことが出来そうだ。
「ヴィオラがトラ男君の錠の鍵を見つけたの」
『ニコ屋!すぐによこせ!どうしたらいい……!?』
「こんにちは、トンタッタ族のレオれす!今から鍵とレベッカ様達をそちらに特急でお連れするれす」
「4段目のひまわり畑に鍵持っていくから!また後でね!!」
どうやって向かうのか等、向こう側も疑問に思っていたようだが、とにかくお互い時間がない。戦場にいる彼らと長電話をしていては邪魔になるうえ、こちらも急いで向かわないと間に合わない。
「それで、レオくん達、どうやって向かうの?」
「このイエローカブ達と飛んでいくんれす!!」
「嘘でしょ!?」
いつの間に現れたのか、そこには大量の黄色いカブトムシ達がいた。それぞれに紐がつながれており、レベッカ、ロビン、バルトロメオとシノの4人に紐が手渡された。トンタッタ族なら飛べるだろう。しかし、どんなにたくさんカブトムシが集まったところで、普通の人間が飛べるはずがない。
「カブトムシで人が飛べるわけなよ!!」
「町を走っていきましょう!!」
「んだんだ、賛成だべ!!」
「じゃあ説明するれすよ!!」
「聞いてる!?」
何事も無かったかのように説明に入るレオ。カブトムシ達は当然の様に大人しく並んでいる。トンタッタ族と同じくらいか、気持ちカブトムシの方が小さいか。いずれにせよ、何度見たところで飛べるとは思えない。
「これはTALジャンピングサービス、大人間は重いので飛ぶ事はできません!」
「ほれみろ!!!!」
「時間もない事ですし、とりあえず飛んでくださーい!!」
「はぁ!?」
「キャー!!」
そういえばゾロがトンタッタ族は馬鹿力だと言っていた。自分達よりも大きい4人のことを軽く押して、大地の外へ放り出した。説明する、とは何だったのか。飛べないということだけ説明されて飛び降りる事になるとは。最近なにかとよく経験している自由落下の重力を覚悟した時だった。
「と、飛んでる……!?」
「飛べませんが、落下を減速し、うまく屋根に乗ってください!!」
所謂パラシュートの原理ということだろうか。カブトムシの浮力が落下速度を軽減してくれているのか、ふわりと先に進みながら降りていく。レオに言われるがままに屋根に乗るタイミングで屋根を蹴ると、そのまま再びふわりと上昇した。
「何これ、気持ちいい~!!」
「気分は風船だべコレ~!!」
興奮するシノとバルトロメオ。風船やパラシュートでは再び上昇することは出来ない。これはイエローカブというカブトムシのおかげだ。癖になりそうな空を飛ぶ感覚にわくわくが止まらない。
「下からの攻撃にも注意して、各自4段目のひまわり畑を目指すのれす!!」
「 「 「了解!!!」 」 」
一時はどうなることかと思ったが、トンタッタ族のおかげで、まだ油断はできないが、鍵を届けに行くことは出来そうだ。ルフィとローは戦場を駆け抜けている分、向こうの方がもしかしたら時間がかかるかもしれない。
いくつかの屋根を渡り、ようやく手前の石像のあたりまでたどり着くと、ルフィ達と出ていったはずのゾロが一人で何者かと戦っていた。電話越しに声が聞こえなかったのは既に別行動をしていたからのようだ。
「ゾロくん、はぐれたのかな?」
「違う!あそこにいるのはピーカ、最高幹部よ!!」
この石像が先ほどローを助けに行く時に遭遇したピーカだったようだ。またしてもゾロが相手をしていたらしい。怪我をしている様子はないので負けることは無いだろうが、相手は石像だ。どう倒せば良いのか苦戦しているようだ。
シノたちはピーカの石の腕へ一瞬着地し、再び浮上する。
「ゾロ!敵を止めておいて!私達この石像の向こう側に用があるの!!」
「そりゃいいがお前ら何で空を……」
説明している暇はない。石像の拳がこちらへ向かってくる。飛んでいる最中は方向を変えるようなことは出来ない。無論、手を離せないので攻撃も出来ない。
「キャー!!!!」
「ゾロくんヘルプー!!!」
「……三刀流、千八十煩悩鳳!!!」
目の前にいた山のように大きい石像が斬られた。ゾロがただの戦闘員レベルのやつら以外とまともに戦っている姿を見たのは初めてだったが、シノも一応刀を扱う人間であるからこそ分かる。そこらの剣士達とは格が違う。これが敵だったらと思うとぞっとするレベルだ。
「ルフィくんも凄かったけど、ゾロくんも化け物級だね……」
「自慢の仲間たちよ」
そう言って笑うロビンもきっとシノなんかよりずっと強い。これなら本当にドフラミンゴを倒すことも出来るかもしれない。
無事ゾロのおかげでピーカを乗り越えたシノ達は、ようやく山へと到着した。そこは完全に戦場と化していて騒がしい。普通にここを抜けようと思ったら相当時間がかかったことだろう。
「この先激しい戦場よ、ジャンプの着地点に気を付けて!」
「了解!!」
「おお……まだ感動が冷めやらねェべよォ……ゾロ先輩かっこえぐて……」
「ニワトリ君、しっかりしなさい!!」
バルトロメオはというと、先ほどのゾロの強さに感動して涙を流していた。ルフィファンだと思っていたが、どういう経緯か、麦わらの一味箱推しなのかもしれない。それにしても異常なレベルだが。
戦場の合間をくぐり一気に山を登っていく。どこも激化しているおかげか、誰もシノ達には目もくれず、思いのほか順調に登ることが出来た。広い戦場なので見逃している可能性もあるが、今の所ルフィやローの姿は無かった。
「今3段目の上空よ、レベッカ!」
「はい、次もうお花畑ね!!」
「待って、下見て!!」
ひゅんひゅんと黒い球がこちらめがけて大量に飛んでくる。これは王宮でヴィオラが怪我をした黒メットの攻撃だ。ということは当たれば爆発する。
「ニワトリ君!!危ない!!」
「当たったら爆発するよ!!!」
「ん?」
まだゾロの戦闘の余韻に浸っているのか上の空だったバルトロメオに弾丸が直撃した。
「おわあ~~!!!」
「きゃあ!!!」
「ロビンさん!バルトロメオ!!」
直撃したバルトロメオはともかく、爆風にロビンのイエローカブ達が巻き込まれてしまった。落下していく二人。二人も心配だが、レベッカとシノ目掛けて新たな弾丸も飛んできている。
「グラディウスだ!!」
「……レベッカちゃん、最悪、鍵は頼んだよ!!」
「え、シノさん!?」
このまま誰もひまわり畑にたどり着けない事態は避けなければならない。特にレベッカは海賊ではなく一般人なうえ、ローの鍵を持っている。絶対に守らなければ。シノは右手のイエローカブを離し、銃を出すとすぐさまグラディウスの弾丸を撃った。シノ達に直撃することなく爆発するグラディウスの弾丸。グラディウス自体はロビンが抑えてくれたおかげで追加で球が飛んでくることはない。
「シノさん!!」
「うわっ!?」
直撃は避けられたが、爆風に吹き飛ばされ、レベッカから離れていく。イエローカブを片方離してしまったため、バランスが取れず、もうこの爆風に流されるしかない。4段目の高さは超えているので、後からでも何とか合流は出来るだろう。
「レベッカちゃん!!鍵、頼んだよ!!!あとで向かうから!!」
「わかりました!!!!」
しっかりと頷くレベッカを見送りながら吹き飛ばされていく。どうやら王宮の方へまで飛んで行ってしまいそうだ。爆風で見づらいが、一面のひまわり畑にはまだロー達の姿は見えない。ということはまだ3段目にいる可能性がある。無事彼らは昇って来られるだろうか。そんなことを考えながら、シノは再び戻ってきてしまった王宮を眺めた。
Tobe continued...
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