ドフラミンゴ襲来
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「ゾロ~~!!キンえもーん!シノ~~!!」
「ルフィ、声がでけェよバカ!!」
「ルフィ君!会えて良かった~!!」
ドレスローザ、闘技場「コリーダコロシアム」前。
通りがかりのバルトロメオが、中でルフィを探して呼んできてくれた為、無事窓枠越しにルフィと再会を果たすことが出来た。当のバルトロメオも一緒に来るのかと思ったが、別行動のようだ。ルフィは映像で見ていた通り、変装の為ふざけた格好をしている。
「それで、用ってなんだ?」
「お前なぁこういう大会があるんなら何でおれを誘わねェんだよ!」
「違う、用件違う!!錦えもんさん、電伝虫お願い!」
「うむ、これでよいのか?」
元々の用件は海軍に取り囲まれていることを伝える事だったのだが、当初の作戦とはだいぶズレていることもあり、全員揃ったら一度通話を繋げようというのがサンジの提案だった。錦えもんが、サンジから預かった電伝虫を不慣れながらかける。サンジが無事にサニー号にたどり着いていれば、全員と通話ができるはずだ。電伝虫はすぐにサンジに繋がれた。
「サンジかーおれだぞ~!!ゾロと錦えもんとシノも一緒だ!」
『こちらウソーップ!』
『これでロー以外全員いるはずだな。各自状況を教えろ』
「え、ちょ、ちょっと待って。ローは?」
黙っていようと決めていたシノだったが、サンジの言葉に思わずすぐに間に入ってしまった。嫌な予感が脳裏をよぎる。ウソップとロビンまたはサニー号組どちらかと一緒にいるだろうと考えていたが、甘かったようだ。
『それが、トラ男はドフラミンゴ連れて囮になってくれて……』
ナミの申し訳なさそうな声に状況を把握する。号外で見た通りドフラミンゴの誤報の為にシーザーの取引が中止となり、シーザーを逃がす必要が出来たため、サニー号組に、先にゾウへ向かうよう指示をし、自分は囮となりドフラミンゴと戦っているらしい。作戦の本筋を守るためには妥当な判断ではあるが、シノは思わず頭を抱えた。ローが単独行動をとることは、ハートの海賊団の作戦でも多い。この状況は予測の範囲内だとはいえ、出来ればそうならない事を祈っていたのだが。
「わかった……状況知れただけでも助かる、ありがとう」
今は麦わらの一味の作戦会議の場。シノがあまり時間を使うわけにはいかない。シノは一歩下がって闘技場の壁に寄りかかり、聞くことに徹することとした。まずはフランキー・ロビン・ウソップチームの状況から話が始まった。
『俺たちは今、この国の反ドフラミンゴ体制リク王軍と一緒にいる。こいつらはまさに今日ドフラミンゴを倒そうってんだ』
リク王軍とは、ゾロと一緒にいる妖精ことトンタッタ族達とおもちゃの兵隊のことらしい。彼らが一年以上準備をしてきた戦いが、偶然にもこの日に決行される。否、恐らくそれは偶然等ではなく、ドフラミンゴの王位返上報道がきっかけだったのだろう。結果的には誤報だったわけだが、ちょうど麦わらの一味がこの島に来たこのタイミングで決行することになったのは戦力も大幅に増強され、彼らにとっても追い風となることだろう。
『トラ男の作戦は承知してるつもりだ。工場を壊し、ドフラミンゴはあえて生かして利用する。だが、今日ドフラミンゴを討とうとしてる奴らはどうなる。俺たちにとっちゃドフラミンゴ勝利の方が好都合か?』
「…………」
『……ルフィ、お前が何と言おうとおれはやるぞ!一見楽し気なこの国には深い深い闇があった!薄汚く巨大な敵に挑む、この勇敢なるちっぽけな軍隊をおれは見殺しにはできねェ!!』
ふと、つい先ほどこの国を歩いて探索していた時のことを思い出した。華やかで平和そのものに見えたこの国だが、ドフラミンゴが統治しているということは、陰で苦しめられている人々がいることも想像に難くない。この国やトンタッタ族の詳しい事情は知らないが、少なくともトンタッタ族達は苦しめられている側の人間なのだろう。そして、先ほど映像に映っていたレベッカもまたそのうちの一人だ。
『よし、引き返すか……』
「フランキー、好きに暴れろ!!俺たちもすぐ行く!!」
『アウっ!すまねェ!!』
麦わらの一味の意見は即一致したらしい。サンジ達も引き返し、トンタッタ達と一緒に全員でドフラミンゴを倒すつもりだ。今までも彼らはこうして結果的にいろいろな国を救ってきたのだろう。。
「シノ、お前はどうする」
「どうって言っても、もう決めたんでしょ」
ルフィが意見を求めてきた。一応シノはあくまで同盟相手であるという認識が彼の中にあったようだ。どう答えるべきかとシノは思案する。麦わらの一味の選択は、元の作戦とは完全に反れる。ここでドフラミンゴと直接やりあわない方が、麦わらの一味およびシノとローの生存率があがるのは確かだ。が、悩む必要性もない程に、天秤にかけるものがあまりにも重すぎる。シノは目を閉じて、ふぅと一息つく。
「今の話聞いて、ドフラミンゴを無視しろなんて言えないよ」
「あははは、そりゃそうだ!!」
自分たちが助かったとして、トンタッタ族やレベッカ達はどうなるのか。それ以外にも被害にあっている人間は見えていない範囲でも山ほどいる。そもそも、ローも本心ではドフラミンゴを倒したいと思っている。今も時間稼ぎと称してはいるが、命懸けで倒せるものならと思っているはずだ。それを麦わらの一味に手伝ってもらえるのであれば万々歳だ。元々作戦なんてあってないようなもの。目の前で苦しんでいる人がいることを知ってしまったからには、見て見ぬふりが出来るような人間ではない。ルフィとゾロはシノの答えに満足したのか、ニッと笑った。
「そうと決まればルフィさっさと出てこい」
「ルフィ君、早く出られそうな出口を探して……」
それは突然、ガシャンと大きな音がした。音に反応し、思わずそちらを見ると、少し先にある建物の上部が急に崩れた。平和な町であの崩壊はただ事ではない。シノ・ゾロ・錦えもんは警戒しそれぞれの刀に手をかける。すると直後、今度はシノ達の目の前に何かが降ってきた。ドカァンとまたしても大きな音を立てて何か落ちてきた。ど派手に地面が割れ、土煙が上がり、何が起きているのかすぐには分からなかった。
「何急に……、ロー?」
「トラ男!!ドフラミンゴ!!!!」
降ってきたのはドフラミンゴとローだった。つい先ほどまでグリーンビット付近で戦っていると聞いていたのだが、どれだけ激しい戦いをすればこんなところまで飛んでくることになるのか。ローは血だらけで地面に倒れこんでいるが、一方のドフラミンゴは平然としており、どちらが優勢かは火を見るよりも明らかだ。ドフラミンゴが倒れるローの前に仁王立ちをしていた。
「おい!!トラ男お前何でミンゴと……!!」
「ガキが……図に乗りすぎだ!!!」
闘技場内からのルフィの言葉は届かない。倒れてぴくりとも動かないローにドフラミンゴは弾丸を何発も撃ち込んだ。突然の展開に即座に動けなかったシノは、久々に全身の血の気が引くのを感じた。
「!!!!」
「トラ男!!!!!」
「ロー!!!!」
「おい、シノ!!!」
ゾロの制止する声を無視し、シノはローに駆け寄る。ドフラミンゴはシノをちらりと見やったが、何も言わずに周りにいた騒然としている国民達の方へ向き直った。今の銃弾のせいか、完全に意識を失ったようだ。震える手で彼を抱きかかえるシノ。作戦の為と言いながら、麦わらの一味を逃がす為にズタボロになりながらも一人戦っていたのだ。
「……頼れる仲間じゃなくてごめんね」
彼が仲間を大切に思っているからこそ連れてこなかった、一緒にドフラミンゴとの戦いに挑まなかったということは頭ではわかっている。仮にシノが麦わらの一味のように強かったとしても、彼はシノ達を置いていく選択をしただろう。そうだとしても、自分がもっと強ければと思わずにはいられなかった。
「騒がしくしてすまなかったな!七武海海賊トラファルガー・ロー、こいつが今朝の王位放棄誤報事件の犯人だ。俺を引きずり降ろそうとしていたが、安心しろ!今退治した!!」
国民たちへ演説を始めるドフラミンゴの声に、耳だけ傾けた。人が一人殺されかけている状況だというのに歓声をあげる国民たち。表面上、平和を築きこの国を守ってきた国王ドフラミンゴの言葉を信じるのは当然だろう。所詮、国民達からしてみれば、ロー等見知らぬ海賊だ。闘技場でレベッカが罵倒されることよりもよっぽど当たり前の流れだ。シノは死にかけのローを抱きしめながら、震える手で銃を構えた。
「おいおいガキが何してる。ローは元々俺の部下、ケジメは俺がつける!!」
「ローは私たちのキャプテンだから、今はあんたとは微塵も関係ない」
「あぁ、お前ハートの海賊団とかいうやつらか。勝手にハートなんてつけやがって。まったく、ひでェ反抗期だ」
フッフッフと楽しそうに笑うドフラミンゴ。その様子に、頭に血がのぼりそうになるのを、何とか落ち着かせる。ドフラミンゴの言葉に乗せられず、今自分に出来ることを考える。それがハートの海賊団の、ローの教えだ。
「俺はローと話したい事があるんだ、どいてくれやしねェか」
「生憎、渡す筋合いはないんで」
とりあえず試しに銃を撃ちこんでみるも手ごたえがない。当たってはいるはずだが、すぐに修復されてしまう。ローでさえ傷一つ付けられていない時点でシノの攻撃が通るとは思っていない。シノの抵抗等無意味と思っているのか、向こうからは一切攻撃してくる素振りすら無い。
ドフラミンゴは周りをチラリと見て、シノとローのそばでしゃがみこんだ。国民達にはあまり都合の悪い話を聞かれたくないのだろう。ドフラミンゴは、銃を持っていたシノの腕を強く掴んだ。シノの腕の骨が軋む音がした。
「俺はなにもローを殺したいわけじゃねェ。そうだな……お前も一緒にうちのファミリーに入るか?」
「……今まさに殺そうとしてたくせに?馬鹿じゃないの」
本気でローにファミリーに帰ってきて欲しいと思っているとは到底思えない。既にパンクハザードで散々なことをやらかしてきている。どれだけ昔可愛がっていたとしても所詮は海賊という組織だ。恨みこそあれど、裏切り者を仲間にするわけがない。であれば他の目的があるのだろう。シノの中に一つ、心当たりがあった。
「そうか。よし、じゃあ俺の女になるか?」
「おん……はぁああ!?!?何の話!?」
「フッフッフ、正直だな。お前を人質に取られればあいつも戻ってくるかもしれねェし、少なくともあいつへ最大限の屈辱は与えられるだろ」
当然、一ミリたりともシノに興味はないのに、ローを苦しめる為だけに、よくそんな発想が出来るものだ。シノが手籠めにされたと分かれば、ローは確実に責任を感じる。シノは人質としては十分すぎる。そうなるくらいなら、最悪この場で自分を撃つ選択をする。それでも彼が苦しむ事には変わりないが、少なくともドフラミンゴの目的と思われる"ローの能力"を利用することは達成されないだろう。
「まぁ安心しろ。俺にだって好みはある。ローとは趣味が合わなくて残念だがな」
「別にローの女でもないけど」
急に失礼なことを言われた気もするが、最悪の事態が避けられるのであればそれで良い。それでも、人にここまで嫌悪感を感じたのは初めてだ。あれだけどうでもいいと思っていたはずだったのに。
「じゃあ死んでもらうしかねェな」
「いっ……!!?」
脇腹を撃たれた。は声を上げそうになるのを歯を食いしばり耐える。そのまますぐに蹴り飛ばされ、シノはローから離された。
すかさず横からゾロがドフラミンゴを攻撃しようとするが、いつから居たのか、突然現れた海兵によって妨げられた。賭場にいた盲目の剣士だ。
「ご無事か、シノ殿、ロー殿!!」
「私は良いから早くローを!!」
錦えもんがシノに駆け寄ってきたのを、ローを指さし救出を依頼する。ゾロが海兵と戦っている為、ドフラミンゴがフリーの状態だ。錦えもんはこくりと頷き、ローの元へ駆けて行く。その間にシノはゾロと海兵をちらりと見る。盲目の剣士をよく見てようやく気付いた。あれはただの海兵ではない、海軍大将・藤虎だ。このタイミングで大将藤虎がいるのは、恐らくローがスモーカーへ情報リークした為だ。ローとしては王下七武海を辞めたドフラミンゴを追い詰める為の策として考えていたのだろうが、結果、ドフラミンゴと藤虎の共同戦線という思いつく中で最悪の方向に作用してしまった。
「は!?ゾロ殿!?」
「錦さん、危ない!!!」
ローまでたどり着いた錦えもんも、ゾロの方を見て油断している間にドフラミンゴに蹴り飛ばされてしまった。
「盲目の賭博親父が、まさかの海軍大将かよ……」
「最前はどうも御一行さんに新設にして頂いたってぇのに、恩を仇で返すようで…何とも因果な渡世にござんす……」
大将藤虎。青雉、赤犬が抜けた穴を埋めるために入った三大将のうちの一人だ。新聞で散々見ていたはずなのだが、賭場で見かけた時は少し遠目だったので気付けなかった。
「……大将藤虎……貴方にとっての正義は何ですか」
「おやお嬢さん、面白い事を言いやすね」
海軍がドフラミンゴが裏でやっていることを全く知らないとは思えない。組織としては、王下七武海であるドフラミンゴは原則不可侵、麦わらの一味と同盟を組んだローは悪。ドフラミンゴの悪の明確な証拠がない限りはどうしようもないのは理解している。だが、どうしようもないのか、どうもするつもりもないのかでは雲泥の差がある。藤虎自身は果たしてどちらなのか。
「あっしら海軍は市民達を守るのが仕事でごぜぇやす」
「……なるほど。それじゃあ、現状は私たちが敵ですね」
お互いの言葉に笑みを浮かべる。それぞれに譲れないものがあるのだからやむを得ない。藤虎からシノは見えないが、彼にもシノの笑みは伝わっただろう。ゾロを相手取りながらこれだけ会話をする余裕があるのはさすがと言わざるを得ない。ゾロの相手をしていたからか、あえて見逃してくれたのかは分からないが、藤虎には邪魔されず、シノはローの元まで這ったままたどり着き、手首を握る。が、ドフラミンゴは見逃してくれるはずもなく、握った手を踏みつけられた。手の骨が折れそうだが、離すわけにはいかない。
「諦めの悪いガキだなァ」
「…………」
「……おい、お前、何の能力者だ」
「え……?」
銃弾を受けた脇腹をピンポイントに蹴られた。全身に激痛が走り、思わずローの手首にシノの爪が食い込むくらい握りしめてしまった。蹴っても離れないと分かったのか、ローの手を掴んでいた腕を掴まれ、剥がされる。乱暴に持ち上げられ放り投げられたシノを藤虎から距離を取ったゾロがちょうどキャッチした。
「ナ、ナイスキャッチ……」
「言ってる場合か!!!」
血が垂れている脇腹を服越しに手で押さえ圧迫しながら苦笑する。壁等の障害物に当たっていたら出血量が増えたかもしれない。
「ロー殿!!」
「何で二人とも飛んでんだァ!?」
宙に浮かぶドフラミンゴと藤虎。そして、ドフラミンゴに腕を掴まれるロー。意識がないため、抵抗することもなく掴まれている。宙に浮かぶ彼らを捕まえる手段はない。二人はローを連れて、王宮の方へと飛んでいった。この場で殺さなかったということは、何らかローに用があるのは本当なのだろう。向かった場所と、すぐに殺されることがないということが分かっているだけでも大分マシだ。やるべきことは明確だ。シノは今すぐにでも追いかけたい気持ちを抑え、彼らが消えていった王宮の方を見つめた。
Tobe continued...
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