麦わら救出作戦
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
マリンフォード頂上戦争。後にそう呼ばれるようになった戦いが始まって2時間が経っていた。白ひげの登場から麦わらのルフィ率いるインペルダウンの脱走者一行が乱入し、戦いが混沌と化してきた頃、白ひげが刺された。その後、映像電伝虫の通信が途絶えたのか、世界に情報は入って来なくなった。現状を知っているのはあのマリンフォードにいる者たちのみ。
マリンフォードの沖に移動したハートの海賊団やその他ルーキー海賊たちは、何も見えないマリンフォードの外観と戦塵を見続けていた。誰も口を開かず、ただただ見ていた。
『!!!映像、復帰しました!!』
「……状況は?」
『まだよくわかりません、ただ処刑台が破壊されてます!!』
「!!エースは解放されたの!?」
確定ではないがその可能性は高い。全員で電伝虫を取り囲み、状況の報告を待ち続ける。これだけの騒ぎではほとんど音声は取れないだろう。映像だけで情報を伝えてくれているイッカク達に感謝しなければならない。そう思い、言葉を待っていた彼らの耳に入ってきた情報は、衝撃的なものだった。
『!!!……ひ、火拳のエースが、死んでます……!!』
あまりの急展開を示すその言葉に、息をのむ。一体何があったのか。
『麦わらのルフィの前で……赤犬に……』
処刑台が壊れていたのだ。一度は解放されたのだろう。だがその後、ルフィと共に逃げていたところで、赤犬にやられた。そう考えて間違いないだろう。
心のどこかで、無事逃げ切れるのではないかと思っていた。全く面識のないシノが悲しむのもおかしな話だが、ルフィの兄ということも知り、勝手に応援していたこともあり、勝手に胸が締め付けられる。また、それとは別に何となくもやもやとしたものが心をくすぶり始めた。
「うわっ!?」
「おいシノ!白ひげの能力だ、ぼーっとしてないでどっか掴まってろ!」
「あ、うん……!ありがとキャプテン……」
突然の船の揺れに転びそうになったのを、ローに支えられなんとか耐えた。掴まるところ……とキョロキョロし、ローに掴まろうとして、何となく少し躊躇し、近くにいたべポの手を握る。何故かどうしても手が震えてしまう。ローに掴まったらそれがバレてしまう。当然べポも気づいていただろうが、何も言わずに、シノの手を握り返した。
『キャ、キャプテン!!』
「今度は何だ!?」
『今度は、白ひげが……』
「『ひとつなぎの大秘宝は実在する!!!!』」
イッカクの声の代わりに、白ひげの声が、電伝虫を通じて聞こえてきた。マリンフォードからも響き聞こえた気がする。それほど大きな声ではっきりと、白ひげは世界に宣言した。それ以上言わずとも、――彼がこの世を去ったのがわかった。
数時間のうちにあまりに多くのことが起こった。ロジャーの息子の存在の露見、ルフィの素性、白ひげ海賊団とインペルダウン脱獄者たちによる救出作戦、エースの死、そして船長白ひげの死。それらは瞬く間に全世界へと広がった。歴史的な大事件を目の当たりにした人々は、ただ声を呑むしかなかった。
「……移動するぞ」
静まり返っていた空気の中、ローが口を開いた。ほぼ放心状態だった全員が、ようやく我に帰り、ローの次の言葉を待つ。
「麦わら屋を回収する」
「「「えええええ!?!?」」」
一瞬、静まり返り、驚きの声がハモった。ただでさえ脳内の整理が追いついていないのに、まだ事を起こそうとしているのか。
「俺らもあそこ行くの!?」
「上陸はしない。海に逃げて来たところを回収する」
「でも麦わらのやつ気絶してるらしいし、逃げてこれるか!?」
「無理ならそれで構わねェ……だが、逃げて来られたなら……それが奴の運命だ。今、奴を逃がせるとしたら俺らしか居ねェ」
逃がせる、というのは文字通りこの場から逃すことと同時に、彼を生かすための治療も含まれているのだろう。それは確かにローを置いて他にいない。
ローは、ルフィが生き残る方に賭けている、ということだ。そこまで言われて動かないクルー達ではない。その場にいる全員が急ぎ船内を走り回る。これから、今世界で一番危険な戦場に突っ込むことになるが、覚悟を決めなければ。
「出来るだけ近付いて周囲を確認、麦わら屋が見えたら浮上しろ!!」
「キャプテーン、海、凍ってる!!」
「凍ってない所を探せ!!手の空いてるやつは手術の準備だ!!」
潜水し全速力でマリンフォードへ近づいていく。青キジの能力で海が凍ってしまっており、あまり岸には近づけない。限られた浮上できるスペースを探すベポ率いる航海士、操舵チーム。
シノは手術準備の方の指揮を取る。ハートの海賊団のほとんどがローの影響で、ある程度の医療知識がある。手術の執刀自体はローにしか出来ないが、助手やオペ看の役割も対応可能、サポート体制は万全だ。
「キャプテン!今、ジンベエがルフィ君運んでこっち向かってるって!!でもジンベエも赤犬に大怪我させられてたみたいだから、正直、海までもつか……」
電伝虫からの実況内容を伝えるシノ。完全に意識を失っているルフィを、海賊たちが協力して逃がそうとしている。普通であれば考えられない状況だ。あの白ひげ海賊団が、ルフィを必死で逃がそうとしている。
「キャプテン?」
「…………」
「……ロー?大丈夫?」
「ん……あぁ。何でもない。ジンベエの分の手術台も用意しとけ」
「わかった……!!」
ローの指示に従い、大きめのサイズのベッドを準備しに走る。ジンベエもここまで来られるだろうか。まだ外も見えないので、ルフィもジンベエもどれだけの怪我を負っているのかわからない。
シノはベッドを廊下まで運び込み、外へつながるドアの前で待機するローを見る。先ほど、小さな声であったが、「D」とつぶやいていたように聞こえた。前後は聞こえなかったので何を指しているのかはわからない。
「キャプテン!氷のない所見つけたー!」
「道化のバギーがジンベエと麦わらのルフィを抱えて浮いてます!!」
「よし、浮上しろ!!」
海軍の軍艦と海賊船が入り乱れている海の合間に浮上するポーラータング号。突如現れた潜水艇に注目が集まっている。完全に浮上したことを確認し、外へ飛び出した。
「麦わら屋をこっちへ乗せろ!!!!」
「ム・ギ・ワ・ラ・ヤ〜〜!?てめぇ誰だ小僧!!!」
道化のバギー、先ほどイッカクの実況でも出てきていた。昔、海賊王の船に乗っていたことがあるらしい。二年前に捕まってインペルダウンに入っていたのを、今回の騒動で脱獄してきたようだ。彼もルフィに何かしらの恩があるのだろうか。
「……麦わら屋とはいずれは敵だが悪縁も縁……こんな所で死なれてもつまらねェ!!そいつをここから逃がす!!一旦俺に預けろ!!!俺は医者だ!!!」
シャボンディ諸島で一緒に戦った仲だ。知らぬ仲でもない。そして何よりこの状況で死にかけの麦わらのルフィを放っておけるローではない。しかしバギーからしたら、ローのこと等知らないだろう。特につい先ほどまでインペルダウンにいたのだ。元々活動していた拠点の海も違う。ローの噂も聞いたことはないはず。
「だからどこの馬の骨だってんだ」
「急げ!!二人ともだ!こっちへ乗せろ!!」
「ロー船長!!軍艦が沖から回り込んできた!!」
大砲がどんどん撃ち込まれる。撃ってる側の腕が悪いのか全く当たる気配はないが、海に落ちるたびに波が起きて船がかなり揺れる。……いや、これは大砲によるものではない。地震でも起きたかのような揺れと大波が起きており、慌ててドアにしがみついた。
「白ひげはもういないんじゃないの!?」
『黒ひげが白ひげのグラグラの実の能力を奪ったみたい!!』
「何それ、どういうこと!?」
確かに、白ひげの時の揺れとは違う。恐らく白ひげはセーブして能力を使っていたのだろう。地面も海も割れ、先ほどまでとは比ではない揺れ方をしている。まだ能力になれていない黒ひげが試しに暴れていると考えると納得だ。
早くルフィ達を回収しなければいけないというのに、バギーはまだローのことを疑っているようで、彼らを離してくれない。
「早くしろ!!」
「だから意味わかんねェ……ん???」
ぴゅん、と一筋の光がバギーを狙う。光はそのまま海にあたり爆発した。ギリギリのところで避けたようだ。
「置いてきなよぉ〜麦わらのルフィをさ〜〜」
「黄猿だ!!」
「せっかくシャボンディ諸島で会わずに済んだのに!!」
大将黄猿まで来てしまった。このあたりに三大将全員揃っているようだ。赤犬は白ひげ海賊団が止めてくれているが、こちらは完全にフリーだ。潜水艇としては一番厄介な青キジは、今どこにいるかわからない。だが近くにいるのは確かだ。
「よしっ、任せたぞ、馬の骨ども〜!!せいぜい頑張りやがれ!!」
ぽいと投げられるジンベエとルフィ。ルフィと自分の命を天秤にかけたようで、ようやく降ろしてくれた。ジャンバールが二人を無事キャッチし、ルフィをベポに手渡す。シノもルフィを覗き込んだが、近くで見ると瀕死なんてものではない。出血量も尋常じゃない。血液型は何型か。輸血の準備もしなければ。手術台に乗せたらすぐに血液検査をする必要がある。
「海へ潜るぞ!!」
「うわぁ酷い傷だよ生きてるかな……!?」
「キャプテン早く!!」
急いで船内へ向かうが、黄猿が構えている。シャボンディ諸島で逃した恨みもこもっているようだ。黄猿の攻撃より早く逃げられるわけがない。今ここでローが攻撃を撃たれたら終わりだ。誰も治療が出来なくなってしまう。
「麦わらのルフィ〜、死の外科医トラファルガーロ〜…!!」
「くそ………」
「そこまでだァァ〜!!!!!!!」
突然、大きな声が戦場に響き渡った。騒がしい戦場でここまで響く声を出せるとは。声の主は海兵のようだ。味方であるはずの赤犬の前に立ちはだかっている。誰もが振り返り、声の主を見た。おかげで、黄猿の攻撃も止まった。
「もう、やめましょうよ!!!
もうこれ以上戦うのやめましょうよ!!
命がも゛ったいない!!!!」
泣きながら叫ぶ海兵。
「目的はもう果たしているのに、戦意のない海賊を追いかけ……やめられる戦いに欲をかいて………!!!今から倒れていく兵士はまるで……バカみたいじゃないですか!?!?」
結果的に海軍の目的は達成し、逃げる麦わらのルフィを追いかけるという、海軍優勢な構図に見えるが、当然今回の戦い、海軍側の被害も膨大だ。あの海兵はその倒れていくたくさんの海兵を見てきたのだろう。正義の名の下に戦い、傷付き、亡くなるかもしれない。海軍に入った時からもちろん覚悟はしていただろうが、だからといって進んで死にたいわけではない。あの海兵の言うことは至極真っ当だ。しかし、この状況下に置いて真っ当な考えを持てる人間がこの場にどれだけいるか。
「数秒無駄にした……正しくも無い兵は海軍にゃいらん……!!」
彼の言葉も、赤犬には響かなかった。大将である彼にとっては、危険分子である海賊たち、特に麦わらのルフィをこの場で排除することこそが優先されるべき正義なのだ。
仲間であるはずの海兵にも容赦なくマグマの拳を向ける。が、その攻撃は一人の男によって止められた。
「……よくやった、若い海兵。お前が命を懸けて生み出した勇気ある数秒は……良くか悪くか、たった今、世界の運命を大きく変えた!!」
黒いマントを羽織った赤髪の男が、赤犬の拳を剣一本で止めた。
「四皇、赤髪のシャンクスだ……」
「中に急げ、出航だ!!」
他の海賊たちとは圧が違う。白ひげも直接見ることはなかったが、こんな威圧感だったのだろうか。思わず見入って立ち尽くしそうになっていたのを、ローに引っ張られ船の中に退避する。普段は新世界にいるはずの四皇がここまで出てきたのは、やはり白ひげと海軍という大きなぶつかり合いを見にきていたのか。それとも別の理由なのか。
「キャプテン!シノ!四皇珍しいけど早く扉閉めて!」
「ああ………待て、何か飛んでくる!」
「麦わら帽子……」
麦わらのルフィのトレードマーク。落ちていたのを届けてくれたようだ。正式にルフィを任されたと取って良いだろう。
「よし、手術だ。忙しくなるぞ」
「「アイアイ、キャプテン!!」」
手術室へ急ぐローについていくベポとシノ。二人とも一刻を争う状況だ。ただでさえ死んでもおかしくない状態の二人をこの荒れた海の中でどこまで処置できるのか。ローの腕が試される。船は出来るだけ深く潜ろうとしているようだ。追手が来ているのだろうか。そちらはジャンバール達に任せ、シノは手術のサポートに集中する。
「ジンベエの方は腹が貫通してるな……麦わら屋の方は外傷も酷ェが、それだけじゃなさそうだ……」
「キャプテン、ジンベエの輸血さきにやっとくよ!」
「あぁ、麦わら屋の方確認したら、先にジンベエの手術をするぞ」
ルフィの方が状態が悪いのだろう。ジンベエも相当だが、処置する箇所自体はわかりやすい。先に終わらせてルフィの手術に集中する必要がある。あちらの輸血はローに任せ、シノはジンベエの輸血準備を進めた。調べた結果、二人ともF型だった。幸か不幸か、シノがよく怪我をするおかげで、F型の血は充実している。とにかくこの二人を助けるためにできることを進めるしかない。ハートの海賊団の長い長い夜が始まった。
Tobecontinued...
マリンフォードの沖に移動したハートの海賊団やその他ルーキー海賊たちは、何も見えないマリンフォードの外観と戦塵を見続けていた。誰も口を開かず、ただただ見ていた。
『!!!映像、復帰しました!!』
「……状況は?」
『まだよくわかりません、ただ処刑台が破壊されてます!!』
「!!エースは解放されたの!?」
確定ではないがその可能性は高い。全員で電伝虫を取り囲み、状況の報告を待ち続ける。これだけの騒ぎではほとんど音声は取れないだろう。映像だけで情報を伝えてくれているイッカク達に感謝しなければならない。そう思い、言葉を待っていた彼らの耳に入ってきた情報は、衝撃的なものだった。
『!!!……ひ、火拳のエースが、死んでます……!!』
あまりの急展開を示すその言葉に、息をのむ。一体何があったのか。
『麦わらのルフィの前で……赤犬に……』
処刑台が壊れていたのだ。一度は解放されたのだろう。だがその後、ルフィと共に逃げていたところで、赤犬にやられた。そう考えて間違いないだろう。
心のどこかで、無事逃げ切れるのではないかと思っていた。全く面識のないシノが悲しむのもおかしな話だが、ルフィの兄ということも知り、勝手に応援していたこともあり、勝手に胸が締め付けられる。また、それとは別に何となくもやもやとしたものが心をくすぶり始めた。
「うわっ!?」
「おいシノ!白ひげの能力だ、ぼーっとしてないでどっか掴まってろ!」
「あ、うん……!ありがとキャプテン……」
突然の船の揺れに転びそうになったのを、ローに支えられなんとか耐えた。掴まるところ……とキョロキョロし、ローに掴まろうとして、何となく少し躊躇し、近くにいたべポの手を握る。何故かどうしても手が震えてしまう。ローに掴まったらそれがバレてしまう。当然べポも気づいていただろうが、何も言わずに、シノの手を握り返した。
『キャ、キャプテン!!』
「今度は何だ!?」
『今度は、白ひげが……』
「『ひとつなぎの大秘宝は実在する!!!!』」
イッカクの声の代わりに、白ひげの声が、電伝虫を通じて聞こえてきた。マリンフォードからも響き聞こえた気がする。それほど大きな声ではっきりと、白ひげは世界に宣言した。それ以上言わずとも、――彼がこの世を去ったのがわかった。
数時間のうちにあまりに多くのことが起こった。ロジャーの息子の存在の露見、ルフィの素性、白ひげ海賊団とインペルダウン脱獄者たちによる救出作戦、エースの死、そして船長白ひげの死。それらは瞬く間に全世界へと広がった。歴史的な大事件を目の当たりにした人々は、ただ声を呑むしかなかった。
「……移動するぞ」
静まり返っていた空気の中、ローが口を開いた。ほぼ放心状態だった全員が、ようやく我に帰り、ローの次の言葉を待つ。
「麦わら屋を回収する」
「「「えええええ!?!?」」」
一瞬、静まり返り、驚きの声がハモった。ただでさえ脳内の整理が追いついていないのに、まだ事を起こそうとしているのか。
「俺らもあそこ行くの!?」
「上陸はしない。海に逃げて来たところを回収する」
「でも麦わらのやつ気絶してるらしいし、逃げてこれるか!?」
「無理ならそれで構わねェ……だが、逃げて来られたなら……それが奴の運命だ。今、奴を逃がせるとしたら俺らしか居ねェ」
逃がせる、というのは文字通りこの場から逃すことと同時に、彼を生かすための治療も含まれているのだろう。それは確かにローを置いて他にいない。
ローは、ルフィが生き残る方に賭けている、ということだ。そこまで言われて動かないクルー達ではない。その場にいる全員が急ぎ船内を走り回る。これから、今世界で一番危険な戦場に突っ込むことになるが、覚悟を決めなければ。
「出来るだけ近付いて周囲を確認、麦わら屋が見えたら浮上しろ!!」
「キャプテーン、海、凍ってる!!」
「凍ってない所を探せ!!手の空いてるやつは手術の準備だ!!」
潜水し全速力でマリンフォードへ近づいていく。青キジの能力で海が凍ってしまっており、あまり岸には近づけない。限られた浮上できるスペースを探すベポ率いる航海士、操舵チーム。
シノは手術準備の方の指揮を取る。ハートの海賊団のほとんどがローの影響で、ある程度の医療知識がある。手術の執刀自体はローにしか出来ないが、助手やオペ看の役割も対応可能、サポート体制は万全だ。
「キャプテン!今、ジンベエがルフィ君運んでこっち向かってるって!!でもジンベエも赤犬に大怪我させられてたみたいだから、正直、海までもつか……」
電伝虫からの実況内容を伝えるシノ。完全に意識を失っているルフィを、海賊たちが協力して逃がそうとしている。普通であれば考えられない状況だ。あの白ひげ海賊団が、ルフィを必死で逃がそうとしている。
「キャプテン?」
「…………」
「……ロー?大丈夫?」
「ん……あぁ。何でもない。ジンベエの分の手術台も用意しとけ」
「わかった……!!」
ローの指示に従い、大きめのサイズのベッドを準備しに走る。ジンベエもここまで来られるだろうか。まだ外も見えないので、ルフィもジンベエもどれだけの怪我を負っているのかわからない。
シノはベッドを廊下まで運び込み、外へつながるドアの前で待機するローを見る。先ほど、小さな声であったが、「D」とつぶやいていたように聞こえた。前後は聞こえなかったので何を指しているのかはわからない。
「キャプテン!氷のない所見つけたー!」
「道化のバギーがジンベエと麦わらのルフィを抱えて浮いてます!!」
「よし、浮上しろ!!」
海軍の軍艦と海賊船が入り乱れている海の合間に浮上するポーラータング号。突如現れた潜水艇に注目が集まっている。完全に浮上したことを確認し、外へ飛び出した。
「麦わら屋をこっちへ乗せろ!!!!」
「ム・ギ・ワ・ラ・ヤ〜〜!?てめぇ誰だ小僧!!!」
道化のバギー、先ほどイッカクの実況でも出てきていた。昔、海賊王の船に乗っていたことがあるらしい。二年前に捕まってインペルダウンに入っていたのを、今回の騒動で脱獄してきたようだ。彼もルフィに何かしらの恩があるのだろうか。
「……麦わら屋とはいずれは敵だが悪縁も縁……こんな所で死なれてもつまらねェ!!そいつをここから逃がす!!一旦俺に預けろ!!!俺は医者だ!!!」
シャボンディ諸島で一緒に戦った仲だ。知らぬ仲でもない。そして何よりこの状況で死にかけの麦わらのルフィを放っておけるローではない。しかしバギーからしたら、ローのこと等知らないだろう。特につい先ほどまでインペルダウンにいたのだ。元々活動していた拠点の海も違う。ローの噂も聞いたことはないはず。
「だからどこの馬の骨だってんだ」
「急げ!!二人ともだ!こっちへ乗せろ!!」
「ロー船長!!軍艦が沖から回り込んできた!!」
大砲がどんどん撃ち込まれる。撃ってる側の腕が悪いのか全く当たる気配はないが、海に落ちるたびに波が起きて船がかなり揺れる。……いや、これは大砲によるものではない。地震でも起きたかのような揺れと大波が起きており、慌ててドアにしがみついた。
「白ひげはもういないんじゃないの!?」
『黒ひげが白ひげのグラグラの実の能力を奪ったみたい!!』
「何それ、どういうこと!?」
確かに、白ひげの時の揺れとは違う。恐らく白ひげはセーブして能力を使っていたのだろう。地面も海も割れ、先ほどまでとは比ではない揺れ方をしている。まだ能力になれていない黒ひげが試しに暴れていると考えると納得だ。
早くルフィ達を回収しなければいけないというのに、バギーはまだローのことを疑っているようで、彼らを離してくれない。
「早くしろ!!」
「だから意味わかんねェ……ん???」
ぴゅん、と一筋の光がバギーを狙う。光はそのまま海にあたり爆発した。ギリギリのところで避けたようだ。
「置いてきなよぉ〜麦わらのルフィをさ〜〜」
「黄猿だ!!」
「せっかくシャボンディ諸島で会わずに済んだのに!!」
大将黄猿まで来てしまった。このあたりに三大将全員揃っているようだ。赤犬は白ひげ海賊団が止めてくれているが、こちらは完全にフリーだ。潜水艇としては一番厄介な青キジは、今どこにいるかわからない。だが近くにいるのは確かだ。
「よしっ、任せたぞ、馬の骨ども〜!!せいぜい頑張りやがれ!!」
ぽいと投げられるジンベエとルフィ。ルフィと自分の命を天秤にかけたようで、ようやく降ろしてくれた。ジャンバールが二人を無事キャッチし、ルフィをベポに手渡す。シノもルフィを覗き込んだが、近くで見ると瀕死なんてものではない。出血量も尋常じゃない。血液型は何型か。輸血の準備もしなければ。手術台に乗せたらすぐに血液検査をする必要がある。
「海へ潜るぞ!!」
「うわぁ酷い傷だよ生きてるかな……!?」
「キャプテン早く!!」
急いで船内へ向かうが、黄猿が構えている。シャボンディ諸島で逃した恨みもこもっているようだ。黄猿の攻撃より早く逃げられるわけがない。今ここでローが攻撃を撃たれたら終わりだ。誰も治療が出来なくなってしまう。
「麦わらのルフィ〜、死の外科医トラファルガーロ〜…!!」
「くそ………」
「そこまでだァァ〜!!!!!!!」
突然、大きな声が戦場に響き渡った。騒がしい戦場でここまで響く声を出せるとは。声の主は海兵のようだ。味方であるはずの赤犬の前に立ちはだかっている。誰もが振り返り、声の主を見た。おかげで、黄猿の攻撃も止まった。
「もう、やめましょうよ!!!
もうこれ以上戦うのやめましょうよ!!
命がも゛ったいない!!!!」
泣きながら叫ぶ海兵。
「目的はもう果たしているのに、戦意のない海賊を追いかけ……やめられる戦いに欲をかいて………!!!今から倒れていく兵士はまるで……バカみたいじゃないですか!?!?」
結果的に海軍の目的は達成し、逃げる麦わらのルフィを追いかけるという、海軍優勢な構図に見えるが、当然今回の戦い、海軍側の被害も膨大だ。あの海兵はその倒れていくたくさんの海兵を見てきたのだろう。正義の名の下に戦い、傷付き、亡くなるかもしれない。海軍に入った時からもちろん覚悟はしていただろうが、だからといって進んで死にたいわけではない。あの海兵の言うことは至極真っ当だ。しかし、この状況下に置いて真っ当な考えを持てる人間がこの場にどれだけいるか。
「数秒無駄にした……正しくも無い兵は海軍にゃいらん……!!」
彼の言葉も、赤犬には響かなかった。大将である彼にとっては、危険分子である海賊たち、特に麦わらのルフィをこの場で排除することこそが優先されるべき正義なのだ。
仲間であるはずの海兵にも容赦なくマグマの拳を向ける。が、その攻撃は一人の男によって止められた。
「……よくやった、若い海兵。お前が命を懸けて生み出した勇気ある数秒は……良くか悪くか、たった今、世界の運命を大きく変えた!!」
黒いマントを羽織った赤髪の男が、赤犬の拳を剣一本で止めた。
「四皇、赤髪のシャンクスだ……」
「中に急げ、出航だ!!」
他の海賊たちとは圧が違う。白ひげも直接見ることはなかったが、こんな威圧感だったのだろうか。思わず見入って立ち尽くしそうになっていたのを、ローに引っ張られ船の中に退避する。普段は新世界にいるはずの四皇がここまで出てきたのは、やはり白ひげと海軍という大きなぶつかり合いを見にきていたのか。それとも別の理由なのか。
「キャプテン!シノ!四皇珍しいけど早く扉閉めて!」
「ああ………待て、何か飛んでくる!」
「麦わら帽子……」
麦わらのルフィのトレードマーク。落ちていたのを届けてくれたようだ。正式にルフィを任されたと取って良いだろう。
「よし、手術だ。忙しくなるぞ」
「「アイアイ、キャプテン!!」」
手術室へ急ぐローについていくベポとシノ。二人とも一刻を争う状況だ。ただでさえ死んでもおかしくない状態の二人をこの荒れた海の中でどこまで処置できるのか。ローの腕が試される。船は出来るだけ深く潜ろうとしているようだ。追手が来ているのだろうか。そちらはジャンバール達に任せ、シノは手術のサポートに集中する。
「ジンベエの方は腹が貫通してるな……麦わら屋の方は外傷も酷ェが、それだけじゃなさそうだ……」
「キャプテン、ジンベエの輸血さきにやっとくよ!」
「あぁ、麦わら屋の方確認したら、先にジンベエの手術をするぞ」
ルフィの方が状態が悪いのだろう。ジンベエも相当だが、処置する箇所自体はわかりやすい。先に終わらせてルフィの手術に集中する必要がある。あちらの輸血はローに任せ、シノはジンベエの輸血準備を進めた。調べた結果、二人ともF型だった。幸か不幸か、シノがよく怪我をするおかげで、F型の血は充実している。とにかくこの二人を助けるためにできることを進めるしかない。ハートの海賊団の長い長い夜が始まった。
Tobecontinued...
1/1ページ