マリンフォード頂上戦争
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白ひげ海賊団、ポートガス・D・エースの公開処刑当日。世界中がその行方に注目していた。大きな戦争が起きる。それは多かれ少なかれ、世界中を恐怖に陥れた。
シャボンディ諸島ではその実況中継がされるということで、多くの人が集まっている。シャボンディ諸島に住んでいる者達、各新聞記者達、そして恐らくこの動向を気にしている海賊達もいるはずだ。
ハートの海賊団も、一度はシャボンディ諸島を抜けたが、この日に合わせて戻ってきた。全員で集まっていると目立つので、すぐに集まれる距離感で、何人かに分かれて、実況中継の画面が始まるのを待っていた。
「人多いなー」
「それほど注目されてるってことだよね」
あまりの人の多さについきょろきょろと周りを見回す。ローとシノとベポも一応軽く変装して、人ごみに紛れた。シノはいつもの白いしなぎをやめ、私服に着替えた。これでどこからどう見ても善良な一般市民だ。……シノ、一人であれば。
「……ところで、二人とも変装する気ある?」
「……?当たり前だろ」
「完璧だろー!」
サングラスをかけているだけの二人が何故自信満々なのかがわからない。ベポはもはやどうしようもないとして、ローは服にハートの海賊団のマークががっつり入っているが、本気で言ってるのだろうか。
「ついていく人、間違えたかな?」
「そんなことよりお前、こないだここでジュエリーボニーに会ったんだろ」
「そんなことなのかは置いといて、そういえば忘れてた」
あの後、エースや白ひげの話で持ちきりになってしまい、シャボンディ諸島での話をするのをすっかり忘れていた。まだ始まるまで時間はあるだろう。シノはガサゴソとポケットからメモを取り出す。
「これ、ボニーちゃんの知り合いのコーティング職人の店だって。これ見せればやってくれるらしいよ」
「シノ、いつの間にそんなの手に入れたんだ!?」
メモを覗き込み感心するベポ。ローは何とも複雑そうな表情を浮かべている。海賊のボニーの紹介というのがやはり信用できないのだろうか。
「ボニーちゃん、海賊だけど、多分信用して大丈夫だと思うよ」
「まぁそいつに会ってみればわかるだろうが……シノ、お前はすぐに人を信用しすぎだ、相手は海賊だぞ」
「でもいい子だったよ、ゾロくんのことかばってたし」
海軍大将を呼び寄せられ自分たちが苦労をしない為とは言え、天竜人の前に体を張って、初対面の海賊を助けるようなこと、なかなか出来るものではない。実際に会ってみればローもわかるだろうが、彼女もあの騒動でこの島から旅立ってしまっただろう。捕まったという話も聞いていないので、無事だとは思うが。
「どんなにいいやつに見えようと海賊は海賊だ」
「わかってるよー」
人をそう簡単に信用するなと、子供の頃から散々言われ続けてきた。それほど騙されやすそうに見えるのだろうか。仮に騙されてもロー達がいれば何とかなる、と考えているのは短絡的すぎるだろうか。
「で、なんで最終的に屋根から降って来たんだ?」
「あー……ゾロくんと向かってる時にルフィくんに会って、トビウオに乗れって言われて、乗ったら屋根に突っ込まれました」
「意味がわからねェ……」
「それは私が一番そう思ってるよ……」
あの時は心臓が止まるかと思った。結果的にはほぼ無傷だったわけだが。そこは彼らに感謝なのだが、そもそもあんな突入の仕方をしなければ、怪我をする可能性すら無かった。麦わらの一味は面白いが、遠巻きに見ているくらいがちょうど良いのかもしれない。
「まぁもう関わる事もないだろうねぇ」
「そうだと良いがな……」
そうこうしているうちに、予定時刻の3時間も前だというのに、画面にエースと海軍の錚々たるメンバーが映った。そして、元帥センゴクのスピーチが始まった。処刑の時間には相当早いが、公のイベントには、前段階の長い話がつきものだ。
『諸君らに話しておくことがある。ポートガス・D・エース…この男が今日ここで死ぬ事の大きな意味についてだ』
公開されているため全世界に届いてはいるが、恐らく海軍達に向けて話しているのだろう。エースの両親の話を語り始めるセンゴク。一体何の話をしているのか。シノにはさっぱりわからなかったが、ローの表情が少し強張っているのを見ると、心当たりがあるようだ。
「まさか……」
『お前の父親は、海賊王ゴールド・ロジャーだ!!』
「!?!?」
シャボンディ諸島中がざわついた。新聞記者達は急ぎ自社に連絡をとっている。すぐに号外を準備するようだ。始まってすぐこんな大ニュースが飛び込んでくるとは。
海軍が血眼になって探したゴールドロジャーの息子。結局見つからず、いないのではとなっていたが、実在しており、スペード海賊団として瞬く間にこの海を駆け上がっていった。その頃既に海に出ていたシノ達の耳にも、海を越えて名前は届いていた。
そしてその後、ゴールドロジャーのライバルだった白ひげがエースを守るために、白ひげ海賊団に入れた。実際のところは不明だが、センゴクの説明はざっとこんなものだ。
「だから白ひげと全面戦争になろうとエースの処刑を押し切ったってことか……」
「そりゃあ海軍も必死なわけだな」
「あ、見てキャプテン!正義の門が開いた!」
何があったのか、マリンフォードに続く正義の門が開いた。続々と入ってくる白ひげ傘下の海賊団の大艦隊。普段彼らは新世界にいるので会ったことはないが、名前や手配書は見たことがある。
そして、ついに白ひげ本人もご登場だ。コーティング船で海中から侵入していたらしく、海軍達のど真ん中に出てきたモビーディック号。そこには隊長達も勢揃いしている。
「うわー派手な登場だなー!!」
「これが四皇、白ひげかぁ……」
シャボンディ諸島のレイリーから始まり、最近は大物を目にする機会が増えた。新世界に近付いたからではなく、この大航海時代に、確実に何かが起き始めているように感じる。
マリンフォードの戦いの火蓋は切られた。白ひげの起こした津波が押し寄せ、それを青キジが凍らせる。そこからは一斉にお互いの兵達が入り乱れた戦いになっていく。
「なんかもう凄いことになってきたね。ちょこちょこ地震起きるし」
「白ひげの能力だ。しばらく続くぞ。ベポに捕まっとけ」
「「アイアイ、キャプテン!!」」
シャボンディ諸島とマリンフォードは近いせいで戦いの余波が届くようだ。シノはベポに捕まり、なぜかベポもシノに掴まる仲良し構図が出来上がった。
「なんか、降ってる?」
青キジが凍らせた波の先端が急に割れた。氷の塊と共に、一隻の船が降ってくる。ちょうど割れていた海に落ちたおかげで、そこに乗っていた人々も無事のようだ。船に並ぶ面々が画面に大きく映し出される。
「「む、麦わらのルフィ!?!?」」
「……何やってんだあいつ」
よくわからないが、笑顔で手を振っている様が映された麦わらのルフィ。パッと見ただけでわかるのは、麦わらのルフィ、七武海のジンベエ、元七武海のクロコダイル、あとは赤い鼻の男と、顔の大きな紫色の髪の派手な人物。少なくともクロコダイルはインペルダウンにいたはずなのだが。
「麦わらの一味全員行方不明じゃなかったのか!?」
「ルフィ君がなんでマリンフォードに!?」
あの後、新聞の続報を待てど暮らせど麦わらの一味の情報は出てこなかった。いろいろと情報収集をしたものの、目撃情報を一切なかった。しかし、黄猿が大量に捕まえたという海賊たちの中にも麦わらの一味はいなかったという。どこに行ったのかは不明だが、あの島から忽然と姿を消した。――はずだったのだが。その麦わらの一味の船長が、何故マリンフォードにいるのか。
「知り合いが白ひげ海賊団にいるのか?」
「もしくは一緒に降って来た人たちの知り合いがいて協力してるとか?」
何はともあれ、理由もなく、現在世界で一番危ない場所に突っ込むわけがない。画面の中で、ルフィが早速海兵相手に暴れ回っている。訳もわからずルフィに振り回される海兵達を奮い立たせるためか、またしてもセンゴクの口が開かれた。
『その男もまた未来の有害因子!幼い頃、エースと共に育った義兄弟でありその血筋は、革命家ドラゴンの実の息子だ!!!』
「「ええええええ!?!?」」
べポとシノの声が重なった。先ほどから衝撃の事実が止まらない。とりあえずこれでルフィがあそこにいる理由が判明した。義兄弟のエースを助けるためだ。シャボンディ諸島から消えたのも、あの号外を見て急ぎインペルダウンにでも向かったからだろうか。しかしそうだとしたら、他の一味が一緒にいないことの説明がつかない。
「麦わらのルフィすげェ……!!」
「ポートガス・D・エースと義兄弟……じゃあエースがロジャーの子供って話も知ってたのかね」
「どうだかな」
「そういえば思ったんだけど、海軍のガープ中将ってさ、もしかしてルフィ君のおじいちゃんかな?」
「まぁそうだろうな」
モンキー・D・ガープ中将。フルネームを考えればすぐにわかることだった。海軍の祖父、革命軍の父、そして白ひげ海賊団の義兄。どれだけ要素を詰め込めば気が済むのか。本当に不思議な男だ。
「なんか凄い話ばっかりでお腹いっぱいだよ……」
「……ベポ、シノ、全員と連絡取れ」
「え?どしたのキャプテン」
ベポが首を傾げながら、ポケットの電伝虫を取り出す。
「マリンフォードに行くぞ」
「えええ、今からー!?」
「でも、映像見れなくなっちゃうよ?」
「構わねェ。できるだけ近くまで行く」
スタスタと歩き出すローを追いかけながら、急ぎ全員と連絡を取り、ポーラータング号へ向かう。全く状況がわからなくなるのも困るので、数人はシャボンディ諸島に残り、電伝虫越しに実況をすることになった。現地で状況が把握できればいいが、堂々と参戦する訳にもいかないのでやむを得ない。
急がなければ、ここからどう状況が変わるかもわからない。すぐさま乗り込み、マリンフォードへと向かう。
その間も戦いは続いている。白ひげ海賊団は何やら軍艦の破壊を進めており、麦わらのルフィは七武海達と戦いながら進んでいるようだ。その戦いの様子はこの世とは思えぬ光景だ。尤も、映像は見えないので電伝虫越しで聞いて想像しているだけなのだが。
「どらちが勝っても、歴史に残る戦いになるだろうな」
「海賊側としては、白ひげに勝って欲しいなぁ」
「四皇が一人減ると思えば、海軍が勝つのも有りだな」
にやりと悪い顔をするロー。やはりこの状況を楽しんでいるようだ。シノはどちらかというとあまり楽しめる気持ではなかった。どうにも胸騒ぎがして仕方がない。世界が大きく変わるかもしれないと思うと正直怖い。
『バーソロミュー・くまが大量に、20人は映ってます!!』
「こないだのやつか!?」
「あんなのが大量に並んでるとかやべぇな!」
「最早どっちが悪人なのかわかんないよね」
映像は見えないが、あのサイズのバーソロミュー・くまが並んでいる様を想像すると恐ろしい。それだけ海軍の本気がうかがえる。
『あ……!!映像が……消えました!!』
「!?」
3つ並んでいた画面のうち、真ん中の一つを除いた2つの画面が消えたらしい。海軍にとって不都合な映像は一般人には見せないようにという配慮だろうか。この戦いが終わっても世界が終わるわけではない。海軍が今後も正義の象徴として機能するためには、不信感が残っては困る。海賊のシノが言うのもなんだが、世の中の治安安定の為にもそこは正しい判断だと思う。しかし、何故一つだけ残っているのか。
『あ……』
「どうしたの!?」
『なんか……道化のバギーが……ひたすら映ってる……』
「「「なんでだよ!?!?」」」
突っ込みつつも状況が分かった。恐らく映像電伝虫が盗まれたのだろう。それで一つだけ画面を消すことも出来ずに海賊道化のバギーが映り続けているようだ。推測だが、先ほど麦わらのルフィと一緒に現れた赤鼻が道化のバギーだろう。ピエロっぽかったので。
「船長!!マリンフォードに着いたよ!」
「あれは……ユースタス屋の船……」
マリンフォードから少し離れたところに、7隻の船が浮かんでいた。あの戦いに参戦するわけではなく、だがしかし画面上ではなく肌身でこの戦争を見守るためにやって来たのだろう。あの日、シャボンディ諸島に集結していた億超のルーキー達。カポネ・ベッジ、ジュエリー・ボニー、バジル・ホーキンス、ユースタス・キッド、スクラッチメン・アプー、X・ドレーク、ウルージ。彼ら7名の船とそのクルー達が、遠巻きに見学している。
「皆考えることは同じって事だな」
「あ、ボニーちゃんだ!!」
見知った顔に声を掛けようとしたが、思い詰めた表情でマリンフォードを眺める姿が見え、やめておいた。白ひげやエースと知り合いだったのだろうか。それともシノと同じように何かしらの不安を感じているのか。
『キャ、キャプテン!!!!!』
「?……なんだ?」
『白ひげが……刺されました!!!!!!』
「「「「……!?!?」」」」
あの白ひげが刺された。電伝虫越しに、シャボンディ諸島で見守っている人々が騒いでいるのが聞こえてくる。しかもよりにもよって、海軍ではなく、仲間に刺された。その直後、ぷつりと映像も消えたらしく、続報は無くなった。
「なんでそんな……」
「海軍の策にハマったやつがいるんだろう。映像の方は電伝虫の故障か、海軍が取り返したか……いずれにしろ当分映らねェだろうな」
せっかくここまで来たというのに、状況が見えないのが歯痒い。ただ沖にまで聞こえてくる程のたくさんの声や音、戦塵を眺めるばかりだ。
「……白ひげ、死ぬと思う?」
「……もしそうなったら時代が動くな」
白ひげが生き残れば今までの時代が続き、海軍は戦力を再度整え直す。白ひげが死ねば、新たな時代がやってくる。どうなるのかは、まだ誰にもわからない。あの場にいる者でさえ、わからないだろう。
今見えているあのマリンフォードでは何が起こっているのか。世界中の誰もがただひたすらに、次の情報を待ち続けた。
Tobe continued...
シャボンディ諸島ではその実況中継がされるということで、多くの人が集まっている。シャボンディ諸島に住んでいる者達、各新聞記者達、そして恐らくこの動向を気にしている海賊達もいるはずだ。
ハートの海賊団も、一度はシャボンディ諸島を抜けたが、この日に合わせて戻ってきた。全員で集まっていると目立つので、すぐに集まれる距離感で、何人かに分かれて、実況中継の画面が始まるのを待っていた。
「人多いなー」
「それほど注目されてるってことだよね」
あまりの人の多さについきょろきょろと周りを見回す。ローとシノとベポも一応軽く変装して、人ごみに紛れた。シノはいつもの白いしなぎをやめ、私服に着替えた。これでどこからどう見ても善良な一般市民だ。……シノ、一人であれば。
「……ところで、二人とも変装する気ある?」
「……?当たり前だろ」
「完璧だろー!」
サングラスをかけているだけの二人が何故自信満々なのかがわからない。ベポはもはやどうしようもないとして、ローは服にハートの海賊団のマークががっつり入っているが、本気で言ってるのだろうか。
「ついていく人、間違えたかな?」
「そんなことよりお前、こないだここでジュエリーボニーに会ったんだろ」
「そんなことなのかは置いといて、そういえば忘れてた」
あの後、エースや白ひげの話で持ちきりになってしまい、シャボンディ諸島での話をするのをすっかり忘れていた。まだ始まるまで時間はあるだろう。シノはガサゴソとポケットからメモを取り出す。
「これ、ボニーちゃんの知り合いのコーティング職人の店だって。これ見せればやってくれるらしいよ」
「シノ、いつの間にそんなの手に入れたんだ!?」
メモを覗き込み感心するベポ。ローは何とも複雑そうな表情を浮かべている。海賊のボニーの紹介というのがやはり信用できないのだろうか。
「ボニーちゃん、海賊だけど、多分信用して大丈夫だと思うよ」
「まぁそいつに会ってみればわかるだろうが……シノ、お前はすぐに人を信用しすぎだ、相手は海賊だぞ」
「でもいい子だったよ、ゾロくんのことかばってたし」
海軍大将を呼び寄せられ自分たちが苦労をしない為とは言え、天竜人の前に体を張って、初対面の海賊を助けるようなこと、なかなか出来るものではない。実際に会ってみればローもわかるだろうが、彼女もあの騒動でこの島から旅立ってしまっただろう。捕まったという話も聞いていないので、無事だとは思うが。
「どんなにいいやつに見えようと海賊は海賊だ」
「わかってるよー」
人をそう簡単に信用するなと、子供の頃から散々言われ続けてきた。それほど騙されやすそうに見えるのだろうか。仮に騙されてもロー達がいれば何とかなる、と考えているのは短絡的すぎるだろうか。
「で、なんで最終的に屋根から降って来たんだ?」
「あー……ゾロくんと向かってる時にルフィくんに会って、トビウオに乗れって言われて、乗ったら屋根に突っ込まれました」
「意味がわからねェ……」
「それは私が一番そう思ってるよ……」
あの時は心臓が止まるかと思った。結果的にはほぼ無傷だったわけだが。そこは彼らに感謝なのだが、そもそもあんな突入の仕方をしなければ、怪我をする可能性すら無かった。麦わらの一味は面白いが、遠巻きに見ているくらいがちょうど良いのかもしれない。
「まぁもう関わる事もないだろうねぇ」
「そうだと良いがな……」
そうこうしているうちに、予定時刻の3時間も前だというのに、画面にエースと海軍の錚々たるメンバーが映った。そして、元帥センゴクのスピーチが始まった。処刑の時間には相当早いが、公のイベントには、前段階の長い話がつきものだ。
『諸君らに話しておくことがある。ポートガス・D・エース…この男が今日ここで死ぬ事の大きな意味についてだ』
公開されているため全世界に届いてはいるが、恐らく海軍達に向けて話しているのだろう。エースの両親の話を語り始めるセンゴク。一体何の話をしているのか。シノにはさっぱりわからなかったが、ローの表情が少し強張っているのを見ると、心当たりがあるようだ。
「まさか……」
『お前の父親は、海賊王ゴールド・ロジャーだ!!』
「!?!?」
シャボンディ諸島中がざわついた。新聞記者達は急ぎ自社に連絡をとっている。すぐに号外を準備するようだ。始まってすぐこんな大ニュースが飛び込んでくるとは。
海軍が血眼になって探したゴールドロジャーの息子。結局見つからず、いないのではとなっていたが、実在しており、スペード海賊団として瞬く間にこの海を駆け上がっていった。その頃既に海に出ていたシノ達の耳にも、海を越えて名前は届いていた。
そしてその後、ゴールドロジャーのライバルだった白ひげがエースを守るために、白ひげ海賊団に入れた。実際のところは不明だが、センゴクの説明はざっとこんなものだ。
「だから白ひげと全面戦争になろうとエースの処刑を押し切ったってことか……」
「そりゃあ海軍も必死なわけだな」
「あ、見てキャプテン!正義の門が開いた!」
何があったのか、マリンフォードに続く正義の門が開いた。続々と入ってくる白ひげ傘下の海賊団の大艦隊。普段彼らは新世界にいるので会ったことはないが、名前や手配書は見たことがある。
そして、ついに白ひげ本人もご登場だ。コーティング船で海中から侵入していたらしく、海軍達のど真ん中に出てきたモビーディック号。そこには隊長達も勢揃いしている。
「うわー派手な登場だなー!!」
「これが四皇、白ひげかぁ……」
シャボンディ諸島のレイリーから始まり、最近は大物を目にする機会が増えた。新世界に近付いたからではなく、この大航海時代に、確実に何かが起き始めているように感じる。
マリンフォードの戦いの火蓋は切られた。白ひげの起こした津波が押し寄せ、それを青キジが凍らせる。そこからは一斉にお互いの兵達が入り乱れた戦いになっていく。
「なんかもう凄いことになってきたね。ちょこちょこ地震起きるし」
「白ひげの能力だ。しばらく続くぞ。ベポに捕まっとけ」
「「アイアイ、キャプテン!!」」
シャボンディ諸島とマリンフォードは近いせいで戦いの余波が届くようだ。シノはベポに捕まり、なぜかベポもシノに掴まる仲良し構図が出来上がった。
「なんか、降ってる?」
青キジが凍らせた波の先端が急に割れた。氷の塊と共に、一隻の船が降ってくる。ちょうど割れていた海に落ちたおかげで、そこに乗っていた人々も無事のようだ。船に並ぶ面々が画面に大きく映し出される。
「「む、麦わらのルフィ!?!?」」
「……何やってんだあいつ」
よくわからないが、笑顔で手を振っている様が映された麦わらのルフィ。パッと見ただけでわかるのは、麦わらのルフィ、七武海のジンベエ、元七武海のクロコダイル、あとは赤い鼻の男と、顔の大きな紫色の髪の派手な人物。少なくともクロコダイルはインペルダウンにいたはずなのだが。
「麦わらの一味全員行方不明じゃなかったのか!?」
「ルフィ君がなんでマリンフォードに!?」
あの後、新聞の続報を待てど暮らせど麦わらの一味の情報は出てこなかった。いろいろと情報収集をしたものの、目撃情報を一切なかった。しかし、黄猿が大量に捕まえたという海賊たちの中にも麦わらの一味はいなかったという。どこに行ったのかは不明だが、あの島から忽然と姿を消した。――はずだったのだが。その麦わらの一味の船長が、何故マリンフォードにいるのか。
「知り合いが白ひげ海賊団にいるのか?」
「もしくは一緒に降って来た人たちの知り合いがいて協力してるとか?」
何はともあれ、理由もなく、現在世界で一番危ない場所に突っ込むわけがない。画面の中で、ルフィが早速海兵相手に暴れ回っている。訳もわからずルフィに振り回される海兵達を奮い立たせるためか、またしてもセンゴクの口が開かれた。
『その男もまた未来の有害因子!幼い頃、エースと共に育った義兄弟でありその血筋は、革命家ドラゴンの実の息子だ!!!』
「「ええええええ!?!?」」
べポとシノの声が重なった。先ほどから衝撃の事実が止まらない。とりあえずこれでルフィがあそこにいる理由が判明した。義兄弟のエースを助けるためだ。シャボンディ諸島から消えたのも、あの号外を見て急ぎインペルダウンにでも向かったからだろうか。しかしそうだとしたら、他の一味が一緒にいないことの説明がつかない。
「麦わらのルフィすげェ……!!」
「ポートガス・D・エースと義兄弟……じゃあエースがロジャーの子供って話も知ってたのかね」
「どうだかな」
「そういえば思ったんだけど、海軍のガープ中将ってさ、もしかしてルフィ君のおじいちゃんかな?」
「まぁそうだろうな」
モンキー・D・ガープ中将。フルネームを考えればすぐにわかることだった。海軍の祖父、革命軍の父、そして白ひげ海賊団の義兄。どれだけ要素を詰め込めば気が済むのか。本当に不思議な男だ。
「なんか凄い話ばっかりでお腹いっぱいだよ……」
「……ベポ、シノ、全員と連絡取れ」
「え?どしたのキャプテン」
ベポが首を傾げながら、ポケットの電伝虫を取り出す。
「マリンフォードに行くぞ」
「えええ、今からー!?」
「でも、映像見れなくなっちゃうよ?」
「構わねェ。できるだけ近くまで行く」
スタスタと歩き出すローを追いかけながら、急ぎ全員と連絡を取り、ポーラータング号へ向かう。全く状況がわからなくなるのも困るので、数人はシャボンディ諸島に残り、電伝虫越しに実況をすることになった。現地で状況が把握できればいいが、堂々と参戦する訳にもいかないのでやむを得ない。
急がなければ、ここからどう状況が変わるかもわからない。すぐさま乗り込み、マリンフォードへと向かう。
その間も戦いは続いている。白ひげ海賊団は何やら軍艦の破壊を進めており、麦わらのルフィは七武海達と戦いながら進んでいるようだ。その戦いの様子はこの世とは思えぬ光景だ。尤も、映像は見えないので電伝虫越しで聞いて想像しているだけなのだが。
「どらちが勝っても、歴史に残る戦いになるだろうな」
「海賊側としては、白ひげに勝って欲しいなぁ」
「四皇が一人減ると思えば、海軍が勝つのも有りだな」
にやりと悪い顔をするロー。やはりこの状況を楽しんでいるようだ。シノはどちらかというとあまり楽しめる気持ではなかった。どうにも胸騒ぎがして仕方がない。世界が大きく変わるかもしれないと思うと正直怖い。
『バーソロミュー・くまが大量に、20人は映ってます!!』
「こないだのやつか!?」
「あんなのが大量に並んでるとかやべぇな!」
「最早どっちが悪人なのかわかんないよね」
映像は見えないが、あのサイズのバーソロミュー・くまが並んでいる様を想像すると恐ろしい。それだけ海軍の本気がうかがえる。
『あ……!!映像が……消えました!!』
「!?」
3つ並んでいた画面のうち、真ん中の一つを除いた2つの画面が消えたらしい。海軍にとって不都合な映像は一般人には見せないようにという配慮だろうか。この戦いが終わっても世界が終わるわけではない。海軍が今後も正義の象徴として機能するためには、不信感が残っては困る。海賊のシノが言うのもなんだが、世の中の治安安定の為にもそこは正しい判断だと思う。しかし、何故一つだけ残っているのか。
『あ……』
「どうしたの!?」
『なんか……道化のバギーが……ひたすら映ってる……』
「「「なんでだよ!?!?」」」
突っ込みつつも状況が分かった。恐らく映像電伝虫が盗まれたのだろう。それで一つだけ画面を消すことも出来ずに海賊道化のバギーが映り続けているようだ。推測だが、先ほど麦わらのルフィと一緒に現れた赤鼻が道化のバギーだろう。ピエロっぽかったので。
「船長!!マリンフォードに着いたよ!」
「あれは……ユースタス屋の船……」
マリンフォードから少し離れたところに、7隻の船が浮かんでいた。あの戦いに参戦するわけではなく、だがしかし画面上ではなく肌身でこの戦争を見守るためにやって来たのだろう。あの日、シャボンディ諸島に集結していた億超のルーキー達。カポネ・ベッジ、ジュエリー・ボニー、バジル・ホーキンス、ユースタス・キッド、スクラッチメン・アプー、X・ドレーク、ウルージ。彼ら7名の船とそのクルー達が、遠巻きに見学している。
「皆考えることは同じって事だな」
「あ、ボニーちゃんだ!!」
見知った顔に声を掛けようとしたが、思い詰めた表情でマリンフォードを眺める姿が見え、やめておいた。白ひげやエースと知り合いだったのだろうか。それともシノと同じように何かしらの不安を感じているのか。
『キャ、キャプテン!!!!!』
「?……なんだ?」
『白ひげが……刺されました!!!!!!』
「「「「……!?!?」」」」
あの白ひげが刺された。電伝虫越しに、シャボンディ諸島で見守っている人々が騒いでいるのが聞こえてくる。しかもよりにもよって、海軍ではなく、仲間に刺された。その直後、ぷつりと映像も消えたらしく、続報は無くなった。
「なんでそんな……」
「海軍の策にハマったやつがいるんだろう。映像の方は電伝虫の故障か、海軍が取り返したか……いずれにしろ当分映らねェだろうな」
せっかくここまで来たというのに、状況が見えないのが歯痒い。ただ沖にまで聞こえてくる程のたくさんの声や音、戦塵を眺めるばかりだ。
「……白ひげ、死ぬと思う?」
「……もしそうなったら時代が動くな」
白ひげが生き残れば今までの時代が続き、海軍は戦力を再度整え直す。白ひげが死ねば、新たな時代がやってくる。どうなるのかは、まだ誰にもわからない。あの場にいる者でさえ、わからないだろう。
今見えているあのマリンフォードでは何が起こっているのか。世界中の誰もがただひたすらに、次の情報を待ち続けた。
Tobe continued...
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