海軍の包囲網
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『犯人は速やかにロズワード一家を解放しなさい!直に、大将が到着する。早々に降伏する事を進める!どうなっても知らんぞ、ルーキー共!!』
冥王レイリーまで現れた人間オークション会場。しばらく彼の覇気のせいでピリついていた空気もようやく落ち着いた頃、外から海軍による拡声器の声が会場内にも聞こえて来た。
ロズワード一家こと天竜人は完全に伸びきっており意識はない。解放するも何も、捕まえてすらいないのだが。
「俺たちは巻き込まれるどころか……完全に共犯者扱いだな」
「あの人たち突き出せば許してくれないかね?」
「無理だろ、どう考えても」
天竜人一家を指差すシノ。許すも何も、既に海軍大将はこちらへ向かっているだろう。一体、大将三人のうち誰が来るのか。
「じゃあ、レイリーさんに……」
「あー、私はさっきの様な力はもう使わんので君ら頼むぞ」
「……ですよね」
そもそもレイリーはたまたまこの島に住んでいた人間だ。今後もここで暮らしていくには目立つわけにはいかない。大っぴらに海軍とことを構えるわけにはいかないだろう。
「長引くだけ兵が増える。先に行かせてもらうぞ」
一番最初に動き出したのは、ユースタス・キッドだった。シノは椅子に座りながら後ろを向き、会場を出ていくキッドを含めた仲間達計5名を眺める。さすがにクルー全員はもっといるのだろうが、ハートの海賊団同様、目立たない様少数精鋭で来たのだと思われる。結局、彼らがどんな人物なのかわからなかった。悪い噂はよく聞いていたが、実際はどうなのだろうか。
「キャプテンは行かなくて良いの?」
「放っておけ、あいつがどう動こうと知ったこっちゃない」
確かに、先ほどから見ていると、ローはどちらかというと麦わらのルフィの方に関心があるように見える。同じくらいの懸賞金のキッドにはあまり興味がないのだろうか。出ていくキッドを見ようともしない。
「もののついでだ、お前ら助けてやるよ!表の掃除はしといてやるから、安心しな」
「……あァ!?」
「キャプテン!?今さっき放っておけって自分で言ったよね!?」
こちらを振り向きもせず手をひらひらとさせるキッドに対して、怒りを露わにして立ち上がるロー。物凄い速さの手のひら返しだ。すぐそばで、ルフィも同じようにカチンと来ている。止める暇もなく、張り合うように、ローとルフィはキッドを追いかけて行った。
「行っちゃった……」
「無駄だシノ。ああなった船長は止められん」
「あの人、負けん気強いからな~そこも良いところだけどな~」
「な~」
普段は大人っぽく頼りになる船長だが、たまに妙に子供っぽい時がある。麦わらの一味の船長はいつでも子供心に溢れていそうに見えたがどうなのか。
「ホンっとにもー単純なんだから!」
「続くぞ!一気に突破する」
「よし」
あちらもあちらでこういった状況に慣れているようだ。それぞれ動揺することもなく、行動を始めている。このままここにいてもしょうがない。船長達が道を切り開いてくれているはずなので、とにかく脱出しなければ。
「俺たちも行くかー」
「キャプテンキッドと麦わらのルフィも能力者だよね?」
「だろうなー」
「どんな能力だろうね」
シャチとべポの後ろについていきながら、ペンギンと一緒に二人の船長の能力を想像する。ローの"死の外科医"という異名は能力から来ているので頑張れば想像出来なくもないが、"麦わら"や"キャプテン"からは全く想像が出来ない。
「なんかこう……触れた人みんな麦わら素材になるとか?」
「怖っ!?どう考えてもその異名はあの帽子から取っただけだろ」
「じゃあ答え合わせといきますか」
麦わらの一味、キッド海賊団に続いていて外へ出たシノ達。たった3人の船長達によって前列の海軍達はほぼなぎ倒されている。まさに阿鼻叫喚の現場と化していた。
「おいおいイキナリこれかよ……!!」
「あの二人も当然の様に能力者か!!」
「あーあー暴れちゃって船長……」
「気の早いやつらだ……」
よくわからないが、ガラクタや武器が大量に落ちている。その中には、体がそのガラクタにくっついている海兵達もおり、それは間違いなくローの仕業だ。このガラクタはどちらかの能力に所以するものだろう。
「……いや、全然わかんないね」
「麦わらに至ってはなんかちっこくなってんぞ」
「とりあえず麦わら素材にする説はなさそー」
並ぶ三船長。ローもキッドも身長が高いため、縮んだルフィがより一層小さく見える。これではあの二人の能力はわからなさそうだ。もう少し早く出てくれば良かった。さすがに麦わらの一味に聞くわけにもいかない。
「准将殿!全員出てきた模様です!」
「逃げる気だ、舐められるな小僧共に!援軍もまだ来る!」
「まぁあの准将から見えれば私たちは小僧なんだろうね」
「俺、もう26だけどな」
海軍の言葉を気にせず、シノとペンギンはのんきに会話する。海軍達はいつの間にか裏口から侵入し、天竜人達を救出したらしい。そうなるとこの場は海軍からしたら敵しかいない。容赦なく攻撃してくることだろう。
「全兵、一斉攻撃を開始する!!海賊共を討ち取れ~っ!!」
「「「うおおおおおおお!!!」」」
人質を確保したことにより、海軍の士気が上がっている。あの三人にこれだけやられておいて、まだ士気を上げられるのだから凄い。恐らく、これから大将が来るという事実が、彼らを奮い立たせているのだろう。
「来たな、もう向こうは作戦なんかねェ。後は大乱闘だ」
キッドの言う通りここからは敵味方入り乱れる大乱闘だ。いっそその方が人ごみに紛れて逃げやすいかもしれない。彼らに会うことはもうないだろう。シノはローのもとへ向かう前に、入口に立っていた麦わらの一味のもとへ寄った。
「じゃあね、またどっかで会ったらよろしくねー」
「あぁ、会ったらな」
「何、あんた知り合いなの?」
一応そこにいた皆に言ったつもりだが、ちゃんと面識があるのはゾロのみのため、ゾロがナミに突っ込まれていた。彼らとまた会うことはあるのだろうか。挨拶を済ませ、ベポと共にローのいる方へ向かう。
「キャプテーン!!」
「トラファルガー・ローさっきはよくも同胞を!!」
先ほどローが蹴散らした海兵の知り合いなのか。ローに海兵が斬りかかろうとしている。しかし、ローはその海兵に背中を向けた。
「べポ」
「アイアイキャプテン!!」
呼ばれてすぐに飛んでいったべポが襲い掛かってきた海兵たちを蹴り倒していく。向こうは武器を持っているが、べポの方が圧倒的に速い。あっという間に片していく。
「あれ、キャプテン、戻るの?」
「野暮用だ」
「会場の中、もう海兵でいっぱいだよ?」
「戦力は多いに越した事ねーだろ?」
「……??」
スタスタとこちらへ歩いてきたローについていく。売られる予定だった人間たちはレイリーと共に現れた巨人族の男が誘導して全員解放されたはずだ。天竜人も海軍に保護されたようなので、中には何もないはずだが。気付けば麦わらの一味もキッド海賊団も逃げて行ってしまった。残っている海軍達の標的にされそうだ。
「よぉ、海賊キャプテンジャンバール」
「――そう呼ばれるのは久しぶりだ」
ローの目的は、会場内ではなく会場の前にいたこの大きな男だったようだ。服装と首についた錠を見る限り、天竜人の奴隷にされた人間だ。ローが名前を知っているということは、元々名の知れた海賊なのだろう。キャプテンとついているということは海賊団の船長を張っていたようだ。
「キャプテン、何かするなら早くー」
シノは寄ってくる海兵の足を的確に銃で撃ち抜き、近づいてこないようにしているが、如何せん人数が多い。予備は有るとはいえ、ここで銃弾を使い切るのは得策ではない。
「ROOM……シャンブルズ」
ローの能力が展開され、首についた錠がローの手元に現れる。ころんと石ころが転がる音がしたので、そこらへんに落ちていた石と交換したのだろう。つくづく便利な能力だ。よく考えると、先ほどの人魚もこうすれば一瞬で助けられたのではないだろうか。
「おれと来るか?」
「天竜人から解放されるなら喜んでお前の部下になろう!!」
錠から解放されたおかげで好き放題出来るようになったようだ。寄ってきた海兵を素手で軽々殴り倒した。
「おぉ……ジャンバールさん、つよ……」
「半分は麦わら屋に感謝しな……!」
ジャンバールが開いてくれた道を走っていく。ローはここに来た時点からジャンバールの素性に気づいていたのだろう。天竜人が倒される事態になったことで、戦力として迎え入れる事を考えていたのか。
「急げべポ!!」
海軍と戦っているべポを抜かしながら声をかけるロー。そのまま橋を走り抜け、ジャンバールが橋を壊した。これで少しは時間を稼げるだろう。とはいえ、渡った先にもまだまだ海軍は沸いてくるはずだ。シャチとペンギンも合流し、六人でひたすら走る。
「お前、新入りだから俺の下ね!」
「奴隷でなきゃ何でもいい……」
「べポ、一応うちのナンバー2でしょ…?」
突然張り合いだすベポ。強さではローに次いでハートの海賊団の二番手であるべポが何を言っているのか。一番年下なことを気にしているにしてもジャンバールと張り合うのは確実に間違っている気がするが、大人な対応をするジャンバールのおかげで、その話題は流れ去った。
「船長!!アレ……!」
先を走っていたシャチが前を指さす。砂ぼこりの中に、随分前に行ったはずのキッドたちの姿と、何か大きな影が見える。
「……ユースタス屋と……何で七武海がこんな所に……!!」
「七武海……!?」
熊のような耳、巨人族まではいかないが普通の人間よりは大きな体。新聞で何度も見たことがある。バーソロミュー・くまだ。キッド達が足止めを食らうのも頷ける。
「トラファルガー・ロー……!」
「――おれの名を知ってるのか……!」
「キャプテン!!」
ピュンとレーザーが飛んでくる。先ほどまでローが居た場所が一瞬で破壊された。ローは能力で移動したようで、キッドの横にいる。
「ここは海軍本部マリージョアのすぐそば、誰が現れてもおかしくはない……!!」
「でも大将以外に七武海まで来るなんて反則でしょ!!」
「後ろから海兵が来るぞ!!」
ただの海兵が何人来ようとこの戦力で負ける気はしないが、七武海は別だ。それに加えて大将まで来てしまったらもう手に負えない。何としてでも早急に切り抜けて船に戻らなければならない。
「手あたり次第か、コイツ……トラファルガー、てめぇ邪魔だぞ」
「消されたいのか、命令するなと言ったハズだ」
「キャプテン喧嘩してる場合じゃないよー?」
この二人は相性が悪いのか。この期に及んで軽口を叩くロー。余裕があるのは良い事だ。
「今日は思わぬ大物に出くわす日だ。さらに大将なんて遭いたくねェんで……そこ、通して貰うぞ、バーソロミュー・くま!!」
キッド海賊団もハートの海賊団も関係なく総力戦で挑み、切り抜ける。シノも刀を構え、斬りかかる。が、硬い。全く刃が通らなかった。肌が硬いというよりは鉄のような感覚だ。刺す場所を工夫すれば恐らく刺さるだろう。
バーソロミュー・くまは、海兵も海賊もお構いなしで無差別に攻撃して来る。距離を取ればビームが、近づけば大きな手で張り倒される。
「服の下に鉄の鎧とか着てんのかな、あの人」
「あれが、あの七武海の一人、バーソロミュー・くま……?」
少し離れた場所で冷静に観察するロー。シノもそれに気づき、彼の横に立った。
「どうしたの、キャプテン」
「正直、あれが七武海とは思えねぇ……」
「??まぁ確かに思ったよりはって感じだよね……でもビーム出せるんだよ?」
「むしろそれもおかしいだろ」
こちらの人数が多いとは言えど、相手が七武海の割にはこちら側の被害が少ない。強いし硬いが、比較的単調な戦い方に見える。シノでさえ動きをちゃんと理解すれば避け切れるし、戦えないこともない気がする。しかし、ビームを出せる人間なんて大将の黄猿くらいだと思っていた。
「さっき斬った時も凄い硬かったし……もしかして、バーソロミュー・くまってロボットだったんだ」
「んなわけねェだろ」
ローが考えて見守っているうちに、キッドが腕にまとわりついた金属の塊を吹き飛ばし、くまに命中させた。くまは地面にめり込むほど飛ばされる。
先ほどのオークション会場の外に溢れていたガラクタの山は、キッドの方の能力だったようだ。新しく生み出しているというよりは、回りから引き寄せているように見えるので、恐らく磁力関連の能力なのだろう。彼と戦う時は極力、金属は身に着けない方が良いかもしれない。
「おぉ~さすがキャプテンキッド」
「いや、まだだな……」
「え?まだなの?」
思わずぱちぱちと拍手をするシノだったが、ローの言葉に首を傾げる。くまは完全に倒れたように見えるが。ローが能力を発動してくまの傍へと移動する。と同時にくまが起き上がった。すぐに起き上がったくまに鬼哭を突き刺し、とどめを刺すロー。
「おい!なんで手を出した!?」
「お前、こいつが本当に七武海だと思うか?」
「……どういうことだ」
恐らくキッドが強いからこその反応なのだろう。シノからすると、自分が七武海に敵うとは微塵も思っていないので、想像より強くないことが分かるが、傍から見て冷静に分析していたローは別として、キッドのように倒せる前提で自信満々に挑んでいると、気づきにくいのかもしれない。
「キャプテーン、お話し中悪いけど、海軍まだまだ来るよー!!」
キッドと話しているローへ手を振り呼ぶ。ここにいてはそれこそ本当に海軍大将が来てしまうかもしれない。
「よし行くぞ、早く走れ!!」
「アイアイ!!」
その後も追手はいたものの、大将に出会うこともなく無事船まで帰って来られた。あのルートにいなかったということは、ターゲットは麦わらの一味の方へ向いたのか。主犯はあちらなので、当然と言えば当然だ。彼らなら何とかしているとは思うが、少し心配だ。
「無事帰ってきてくれて良かったー!!」
「イッカクーただいまー!!」
シノは先に帰っていたイッカクに抱き着いた。今日一日でいろいろな事がありすぎて正直疲れてしまった。無事潜水もして安全も確保できるだろう。少し休みたい。
「結局大将には出くわさなかったなー」
「なんか黄猿が来てたっぽいぞ」
シノ達はそれどころではなかったが、他のクルー達はロー達が帰ってくるまで船のそばで情報収集をしていたようだ。大将黄猿の登場にくわえ、バーソロミュー・くまも何故かこの島に複数人現れていたらしい。とにもかくにも彼らと、あの島に集まっていたルーキーが大暴れし、シャボンディ諸島全域で大混乱が発生していたようだ。
「つまり、俺らが戦ったのはバーソロミュー・くま本体じゃねェだろうな」
「バーソロミュー・くまって機械だったのか」
「いや、本体は当たり前だが人間のはずだ。他はベガパンクあたりが作った何かじゃないかと思う」
「でた、べガパンク」
ローが言うには、王下七武海のバーソロミュー・くまをもとに世界政府がビームを使える偽くまを量産しているのではないかという話だった。推測でしかないが、筋は通っている。海軍としては、将来的にそういった兵器を量産して戦力にしていこうとしているのかもしれない。
「麦わらの一味、無事かなー?」
「俺らやキッド達が狙われなかったってことは、黄猿は確実に麦わらんところ行ったよな」
「捕まったならそのうち新聞に載るだろ」
また会う機会はあるだろうか。もし会えたら今日話せなかったクルー達とも会話してみたい。別の航路の冒険の話を聞いてみたい。あの少しの間ですっかりファンになってしまったようだ。
「新聞といえば、大ニュースが入ってきたぞ」
「号外?」
ハクガンが号外の新聞をローに手渡す。先に船に乗り込んでいたクルー達は皆、既に読んだらしい。シノ、ベポ、シャチ、ペンギン、ジャンバールはそれを覗き込んだ。
「こりゃ……戦争が起きるぞ……」
白ひげ海賊団、2番隊隊長、火拳のエースの公開処刑。一面どころか新聞全てがその話題だ。新聞で世界中に出すと言う事は確定情報だ。しかしそれは白ひげ海賊団との全面戦争を意味する。
「本気で白ひげに喧嘩売る気……??」
「ヤベェな、こりゃ……場所は…マリンフォードってことはここも近ェじゃん」
「キャプテン、急いで離れる!?」
恐らくこれから海軍の大物達や王下七武海等が続々と集まってくる。シャボンディ諸島も近場であることから、誰かしらに鉢合わせする可能性もなくはない。世界がエースの処刑に注目しているうちに、新世界に乗り込むという手もある。全てはローの選択次第だ。
「……面白ェ。見ない手はねェだろ」
「そういうと思った……」
「キャプテンならそうだよなぁ……」
当日は映像電伝虫で様子を実況中継するらしい。ローのいう“見る”というのが、映像を指すのか現地を指すのかはわからないが、当分はこのシャボンディ諸島周辺を拠点にすることになるだろう。大将達が撤退し、落ち着いてきたらまた島に上陸だ。
――処刑決行は一週間後。歴史に残る戦争が始まる。
Tobe continued...
冥王レイリーまで現れた人間オークション会場。しばらく彼の覇気のせいでピリついていた空気もようやく落ち着いた頃、外から海軍による拡声器の声が会場内にも聞こえて来た。
ロズワード一家こと天竜人は完全に伸びきっており意識はない。解放するも何も、捕まえてすらいないのだが。
「俺たちは巻き込まれるどころか……完全に共犯者扱いだな」
「あの人たち突き出せば許してくれないかね?」
「無理だろ、どう考えても」
天竜人一家を指差すシノ。許すも何も、既に海軍大将はこちらへ向かっているだろう。一体、大将三人のうち誰が来るのか。
「じゃあ、レイリーさんに……」
「あー、私はさっきの様な力はもう使わんので君ら頼むぞ」
「……ですよね」
そもそもレイリーはたまたまこの島に住んでいた人間だ。今後もここで暮らしていくには目立つわけにはいかない。大っぴらに海軍とことを構えるわけにはいかないだろう。
「長引くだけ兵が増える。先に行かせてもらうぞ」
一番最初に動き出したのは、ユースタス・キッドだった。シノは椅子に座りながら後ろを向き、会場を出ていくキッドを含めた仲間達計5名を眺める。さすがにクルー全員はもっといるのだろうが、ハートの海賊団同様、目立たない様少数精鋭で来たのだと思われる。結局、彼らがどんな人物なのかわからなかった。悪い噂はよく聞いていたが、実際はどうなのだろうか。
「キャプテンは行かなくて良いの?」
「放っておけ、あいつがどう動こうと知ったこっちゃない」
確かに、先ほどから見ていると、ローはどちらかというと麦わらのルフィの方に関心があるように見える。同じくらいの懸賞金のキッドにはあまり興味がないのだろうか。出ていくキッドを見ようともしない。
「もののついでだ、お前ら助けてやるよ!表の掃除はしといてやるから、安心しな」
「……あァ!?」
「キャプテン!?今さっき放っておけって自分で言ったよね!?」
こちらを振り向きもせず手をひらひらとさせるキッドに対して、怒りを露わにして立ち上がるロー。物凄い速さの手のひら返しだ。すぐそばで、ルフィも同じようにカチンと来ている。止める暇もなく、張り合うように、ローとルフィはキッドを追いかけて行った。
「行っちゃった……」
「無駄だシノ。ああなった船長は止められん」
「あの人、負けん気強いからな~そこも良いところだけどな~」
「な~」
普段は大人っぽく頼りになる船長だが、たまに妙に子供っぽい時がある。麦わらの一味の船長はいつでも子供心に溢れていそうに見えたがどうなのか。
「ホンっとにもー単純なんだから!」
「続くぞ!一気に突破する」
「よし」
あちらもあちらでこういった状況に慣れているようだ。それぞれ動揺することもなく、行動を始めている。このままここにいてもしょうがない。船長達が道を切り開いてくれているはずなので、とにかく脱出しなければ。
「俺たちも行くかー」
「キャプテンキッドと麦わらのルフィも能力者だよね?」
「だろうなー」
「どんな能力だろうね」
シャチとべポの後ろについていきながら、ペンギンと一緒に二人の船長の能力を想像する。ローの"死の外科医"という異名は能力から来ているので頑張れば想像出来なくもないが、"麦わら"や"キャプテン"からは全く想像が出来ない。
「なんかこう……触れた人みんな麦わら素材になるとか?」
「怖っ!?どう考えてもその異名はあの帽子から取っただけだろ」
「じゃあ答え合わせといきますか」
麦わらの一味、キッド海賊団に続いていて外へ出たシノ達。たった3人の船長達によって前列の海軍達はほぼなぎ倒されている。まさに阿鼻叫喚の現場と化していた。
「おいおいイキナリこれかよ……!!」
「あの二人も当然の様に能力者か!!」
「あーあー暴れちゃって船長……」
「気の早いやつらだ……」
よくわからないが、ガラクタや武器が大量に落ちている。その中には、体がそのガラクタにくっついている海兵達もおり、それは間違いなくローの仕業だ。このガラクタはどちらかの能力に所以するものだろう。
「……いや、全然わかんないね」
「麦わらに至ってはなんかちっこくなってんぞ」
「とりあえず麦わら素材にする説はなさそー」
並ぶ三船長。ローもキッドも身長が高いため、縮んだルフィがより一層小さく見える。これではあの二人の能力はわからなさそうだ。もう少し早く出てくれば良かった。さすがに麦わらの一味に聞くわけにもいかない。
「准将殿!全員出てきた模様です!」
「逃げる気だ、舐められるな小僧共に!援軍もまだ来る!」
「まぁあの准将から見えれば私たちは小僧なんだろうね」
「俺、もう26だけどな」
海軍の言葉を気にせず、シノとペンギンはのんきに会話する。海軍達はいつの間にか裏口から侵入し、天竜人達を救出したらしい。そうなるとこの場は海軍からしたら敵しかいない。容赦なく攻撃してくることだろう。
「全兵、一斉攻撃を開始する!!海賊共を討ち取れ~っ!!」
「「「うおおおおおおお!!!」」」
人質を確保したことにより、海軍の士気が上がっている。あの三人にこれだけやられておいて、まだ士気を上げられるのだから凄い。恐らく、これから大将が来るという事実が、彼らを奮い立たせているのだろう。
「来たな、もう向こうは作戦なんかねェ。後は大乱闘だ」
キッドの言う通りここからは敵味方入り乱れる大乱闘だ。いっそその方が人ごみに紛れて逃げやすいかもしれない。彼らに会うことはもうないだろう。シノはローのもとへ向かう前に、入口に立っていた麦わらの一味のもとへ寄った。
「じゃあね、またどっかで会ったらよろしくねー」
「あぁ、会ったらな」
「何、あんた知り合いなの?」
一応そこにいた皆に言ったつもりだが、ちゃんと面識があるのはゾロのみのため、ゾロがナミに突っ込まれていた。彼らとまた会うことはあるのだろうか。挨拶を済ませ、ベポと共にローのいる方へ向かう。
「キャプテーン!!」
「トラファルガー・ローさっきはよくも同胞を!!」
先ほどローが蹴散らした海兵の知り合いなのか。ローに海兵が斬りかかろうとしている。しかし、ローはその海兵に背中を向けた。
「べポ」
「アイアイキャプテン!!」
呼ばれてすぐに飛んでいったべポが襲い掛かってきた海兵たちを蹴り倒していく。向こうは武器を持っているが、べポの方が圧倒的に速い。あっという間に片していく。
「あれ、キャプテン、戻るの?」
「野暮用だ」
「会場の中、もう海兵でいっぱいだよ?」
「戦力は多いに越した事ねーだろ?」
「……??」
スタスタとこちらへ歩いてきたローについていく。売られる予定だった人間たちはレイリーと共に現れた巨人族の男が誘導して全員解放されたはずだ。天竜人も海軍に保護されたようなので、中には何もないはずだが。気付けば麦わらの一味もキッド海賊団も逃げて行ってしまった。残っている海軍達の標的にされそうだ。
「よぉ、海賊キャプテンジャンバール」
「――そう呼ばれるのは久しぶりだ」
ローの目的は、会場内ではなく会場の前にいたこの大きな男だったようだ。服装と首についた錠を見る限り、天竜人の奴隷にされた人間だ。ローが名前を知っているということは、元々名の知れた海賊なのだろう。キャプテンとついているということは海賊団の船長を張っていたようだ。
「キャプテン、何かするなら早くー」
シノは寄ってくる海兵の足を的確に銃で撃ち抜き、近づいてこないようにしているが、如何せん人数が多い。予備は有るとはいえ、ここで銃弾を使い切るのは得策ではない。
「ROOM……シャンブルズ」
ローの能力が展開され、首についた錠がローの手元に現れる。ころんと石ころが転がる音がしたので、そこらへんに落ちていた石と交換したのだろう。つくづく便利な能力だ。よく考えると、先ほどの人魚もこうすれば一瞬で助けられたのではないだろうか。
「おれと来るか?」
「天竜人から解放されるなら喜んでお前の部下になろう!!」
錠から解放されたおかげで好き放題出来るようになったようだ。寄ってきた海兵を素手で軽々殴り倒した。
「おぉ……ジャンバールさん、つよ……」
「半分は麦わら屋に感謝しな……!」
ジャンバールが開いてくれた道を走っていく。ローはここに来た時点からジャンバールの素性に気づいていたのだろう。天竜人が倒される事態になったことで、戦力として迎え入れる事を考えていたのか。
「急げべポ!!」
海軍と戦っているべポを抜かしながら声をかけるロー。そのまま橋を走り抜け、ジャンバールが橋を壊した。これで少しは時間を稼げるだろう。とはいえ、渡った先にもまだまだ海軍は沸いてくるはずだ。シャチとペンギンも合流し、六人でひたすら走る。
「お前、新入りだから俺の下ね!」
「奴隷でなきゃ何でもいい……」
「べポ、一応うちのナンバー2でしょ…?」
突然張り合いだすベポ。強さではローに次いでハートの海賊団の二番手であるべポが何を言っているのか。一番年下なことを気にしているにしてもジャンバールと張り合うのは確実に間違っている気がするが、大人な対応をするジャンバールのおかげで、その話題は流れ去った。
「船長!!アレ……!」
先を走っていたシャチが前を指さす。砂ぼこりの中に、随分前に行ったはずのキッドたちの姿と、何か大きな影が見える。
「……ユースタス屋と……何で七武海がこんな所に……!!」
「七武海……!?」
熊のような耳、巨人族まではいかないが普通の人間よりは大きな体。新聞で何度も見たことがある。バーソロミュー・くまだ。キッド達が足止めを食らうのも頷ける。
「トラファルガー・ロー……!」
「――おれの名を知ってるのか……!」
「キャプテン!!」
ピュンとレーザーが飛んでくる。先ほどまでローが居た場所が一瞬で破壊された。ローは能力で移動したようで、キッドの横にいる。
「ここは海軍本部マリージョアのすぐそば、誰が現れてもおかしくはない……!!」
「でも大将以外に七武海まで来るなんて反則でしょ!!」
「後ろから海兵が来るぞ!!」
ただの海兵が何人来ようとこの戦力で負ける気はしないが、七武海は別だ。それに加えて大将まで来てしまったらもう手に負えない。何としてでも早急に切り抜けて船に戻らなければならない。
「手あたり次第か、コイツ……トラファルガー、てめぇ邪魔だぞ」
「消されたいのか、命令するなと言ったハズだ」
「キャプテン喧嘩してる場合じゃないよー?」
この二人は相性が悪いのか。この期に及んで軽口を叩くロー。余裕があるのは良い事だ。
「今日は思わぬ大物に出くわす日だ。さらに大将なんて遭いたくねェんで……そこ、通して貰うぞ、バーソロミュー・くま!!」
キッド海賊団もハートの海賊団も関係なく総力戦で挑み、切り抜ける。シノも刀を構え、斬りかかる。が、硬い。全く刃が通らなかった。肌が硬いというよりは鉄のような感覚だ。刺す場所を工夫すれば恐らく刺さるだろう。
バーソロミュー・くまは、海兵も海賊もお構いなしで無差別に攻撃して来る。距離を取ればビームが、近づけば大きな手で張り倒される。
「服の下に鉄の鎧とか着てんのかな、あの人」
「あれが、あの七武海の一人、バーソロミュー・くま……?」
少し離れた場所で冷静に観察するロー。シノもそれに気づき、彼の横に立った。
「どうしたの、キャプテン」
「正直、あれが七武海とは思えねぇ……」
「??まぁ確かに思ったよりはって感じだよね……でもビーム出せるんだよ?」
「むしろそれもおかしいだろ」
こちらの人数が多いとは言えど、相手が七武海の割にはこちら側の被害が少ない。強いし硬いが、比較的単調な戦い方に見える。シノでさえ動きをちゃんと理解すれば避け切れるし、戦えないこともない気がする。しかし、ビームを出せる人間なんて大将の黄猿くらいだと思っていた。
「さっき斬った時も凄い硬かったし……もしかして、バーソロミュー・くまってロボットだったんだ」
「んなわけねェだろ」
ローが考えて見守っているうちに、キッドが腕にまとわりついた金属の塊を吹き飛ばし、くまに命中させた。くまは地面にめり込むほど飛ばされる。
先ほどのオークション会場の外に溢れていたガラクタの山は、キッドの方の能力だったようだ。新しく生み出しているというよりは、回りから引き寄せているように見えるので、恐らく磁力関連の能力なのだろう。彼と戦う時は極力、金属は身に着けない方が良いかもしれない。
「おぉ~さすがキャプテンキッド」
「いや、まだだな……」
「え?まだなの?」
思わずぱちぱちと拍手をするシノだったが、ローの言葉に首を傾げる。くまは完全に倒れたように見えるが。ローが能力を発動してくまの傍へと移動する。と同時にくまが起き上がった。すぐに起き上がったくまに鬼哭を突き刺し、とどめを刺すロー。
「おい!なんで手を出した!?」
「お前、こいつが本当に七武海だと思うか?」
「……どういうことだ」
恐らくキッドが強いからこその反応なのだろう。シノからすると、自分が七武海に敵うとは微塵も思っていないので、想像より強くないことが分かるが、傍から見て冷静に分析していたローは別として、キッドのように倒せる前提で自信満々に挑んでいると、気づきにくいのかもしれない。
「キャプテーン、お話し中悪いけど、海軍まだまだ来るよー!!」
キッドと話しているローへ手を振り呼ぶ。ここにいてはそれこそ本当に海軍大将が来てしまうかもしれない。
「よし行くぞ、早く走れ!!」
「アイアイ!!」
その後も追手はいたものの、大将に出会うこともなく無事船まで帰って来られた。あのルートにいなかったということは、ターゲットは麦わらの一味の方へ向いたのか。主犯はあちらなので、当然と言えば当然だ。彼らなら何とかしているとは思うが、少し心配だ。
「無事帰ってきてくれて良かったー!!」
「イッカクーただいまー!!」
シノは先に帰っていたイッカクに抱き着いた。今日一日でいろいろな事がありすぎて正直疲れてしまった。無事潜水もして安全も確保できるだろう。少し休みたい。
「結局大将には出くわさなかったなー」
「なんか黄猿が来てたっぽいぞ」
シノ達はそれどころではなかったが、他のクルー達はロー達が帰ってくるまで船のそばで情報収集をしていたようだ。大将黄猿の登場にくわえ、バーソロミュー・くまも何故かこの島に複数人現れていたらしい。とにもかくにも彼らと、あの島に集まっていたルーキーが大暴れし、シャボンディ諸島全域で大混乱が発生していたようだ。
「つまり、俺らが戦ったのはバーソロミュー・くま本体じゃねェだろうな」
「バーソロミュー・くまって機械だったのか」
「いや、本体は当たり前だが人間のはずだ。他はベガパンクあたりが作った何かじゃないかと思う」
「でた、べガパンク」
ローが言うには、王下七武海のバーソロミュー・くまをもとに世界政府がビームを使える偽くまを量産しているのではないかという話だった。推測でしかないが、筋は通っている。海軍としては、将来的にそういった兵器を量産して戦力にしていこうとしているのかもしれない。
「麦わらの一味、無事かなー?」
「俺らやキッド達が狙われなかったってことは、黄猿は確実に麦わらんところ行ったよな」
「捕まったならそのうち新聞に載るだろ」
また会う機会はあるだろうか。もし会えたら今日話せなかったクルー達とも会話してみたい。別の航路の冒険の話を聞いてみたい。あの少しの間ですっかりファンになってしまったようだ。
「新聞といえば、大ニュースが入ってきたぞ」
「号外?」
ハクガンが号外の新聞をローに手渡す。先に船に乗り込んでいたクルー達は皆、既に読んだらしい。シノ、ベポ、シャチ、ペンギン、ジャンバールはそれを覗き込んだ。
「こりゃ……戦争が起きるぞ……」
白ひげ海賊団、2番隊隊長、火拳のエースの公開処刑。一面どころか新聞全てがその話題だ。新聞で世界中に出すと言う事は確定情報だ。しかしそれは白ひげ海賊団との全面戦争を意味する。
「本気で白ひげに喧嘩売る気……??」
「ヤベェな、こりゃ……場所は…マリンフォードってことはここも近ェじゃん」
「キャプテン、急いで離れる!?」
恐らくこれから海軍の大物達や王下七武海等が続々と集まってくる。シャボンディ諸島も近場であることから、誰かしらに鉢合わせする可能性もなくはない。世界がエースの処刑に注目しているうちに、新世界に乗り込むという手もある。全てはローの選択次第だ。
「……面白ェ。見ない手はねェだろ」
「そういうと思った……」
「キャプテンならそうだよなぁ……」
当日は映像電伝虫で様子を実況中継するらしい。ローのいう“見る”というのが、映像を指すのか現地を指すのかはわからないが、当分はこのシャボンディ諸島周辺を拠点にすることになるだろう。大将達が撤退し、落ち着いてきたらまた島に上陸だ。
――処刑決行は一週間後。歴史に残る戦争が始まる。
Tobe continued...
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