人間オークション、乱入
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シャボンディ諸島1番GR、人間オークション会場。そこへトビウオに乗ったまま突っ込んだシノと麦わらのルフィ、ゾロ、見知らぬ運転手。
ドカァンと大きな音を立てて屋根を貫通した。基本的にはトビウオが穴を開けてくれたおかげで、痛み等は無かった。
「何だお前!!もっと上手く着陸しろよ!!」
「出来るか!トビウオだぞ!!」
「い、生きてる………!!」
見知らぬトビウオ運転手とルフィが口喧嘩をしている。麦わらの一味ではないのだろう。そんなことはどうでも良い。多少のかすり傷はあれど、ほぼ無傷で済んだことにほっとしたが、正直、まだ心臓がドキドキしている。
「サニー号に戻るのに何を急いでんだよ……ここどこだ?」
「あの、ゾロくん……??」
「おい、ゾロてめェこの一大事になにレディといちゃついてんだ!?」
「あぁ!?」
「あの、いちゃついてません……」
まだ状況を理解できていないゾロに、誰かが絡んできた。麦わらの一味の黒足のサンジだ。何故こんなことになってしまったのか。とりあえず無事辿りついたのは良かった。
「「「シノ!?」」」
「今度はなんだ?」
「いや、だからあのゾロくん……おろしてください」
シノが怪我しないようずっと抱えてくれていたのだろうが、この状況で持たれたままなのは、とにかく恥ずかしい。特に、持たれ方が完全に荷物扱いなのがまた恥ずかしい。
「おう、悪ぃ、忘れてた」
「むしろありがとう、助かりました」
「仲間はいんのか?」
「うん、あそこに座ってる」
ようやく下ろしてもらい、大きく息をつき胸を撫で下ろした。ちゃんと仲間に会えるかまで心配してもらい、頭が上がらない。席に座っている仲間達を見つけ、指をさした。
「そりゃ良かったな。もう迷子になるんじゃねェぞ」
「迷子ではないよ!?でも本当ありがと、またね」
礼を言い、こちらを睨みつけているロー達のもとへ急ぎ向かう。ルフィはルフィで舞台上の人魚の元へ走っており、会場内はかなり騒々しい。それに紛れてシノも移動した。
「お前、なんつー登場の仕方してんだよ!!」
「天竜人とジュエリーボニーまでは聞いてたが、麦わらの一味と一緒にいるなんて聞いてねェぞ!?」
「あいつらと知り合いなのか!?」
シャチ、ペンギン、ベポが口々にいろいろときいてくる。どこから説明すれば良いのか。まさかこんなド派手な登場をすることになるとは思わなかった。
「あの……出来るだけ安全にここに来ようとして、ロロノアゾロに用心棒してもらってたんだけど、なんかよくわからないうちに気付いたらあのトビウオで突っ込むことに……」
嘘は言っていない。が、嘘みたいな話ではある。睨みつけていたローが大きくため息を漏らした。
「天竜人には関わってないんだな?」
「そこは本当に。居なくなるまでちゃんと隠れてたから」
「ならいい。あとであいつらの話は聞くが、とりあえず座っとけ」
あいつらとは麦わらのルフィとゾロのことだろう。ローの隣の席に座ろうとした時だった。背後から銃声が聞こえ、振り返る。
「ハチ!!!!」
階段の途中で血を流して倒れているタコの魚人。オレンジ髪の女性が叫んだのが、彼の名前だろう。よく見ると麦わらの一味の航海士ナミだ。彼は麦わらの一味の知り合いのようだ。
この島では魚人族と人魚族は差別を受けている。周りが騒がしかったのはそのせいか。撃ったのはどうやら天竜人のようだ。先ほど町中で見たのと同じやつだ。
「あいつ……!!!」
「おい、関わるな」
「でも、あの魚人族の人……」
グッとローに腕を掴まれ引っ張られた。そのままローの方に倒れ込みそうになるのをなんとか耐え、隣にすとんと座り込む。
「こっち見てろ。あいつら見てるだけで難癖つけられるかもしれねェからな」
「…………わかった」
こちらから手を出さずとも、見ているだけで不敬だと文句を言われる可能性もゼロではない。それがまかり通るのが、天竜人だ。ローの言葉は正しい。天竜人に歯向かう気はさらさらないが、せめてあのハチという魚人の応急処置をしてあげたかった。
背後で天竜人が上機嫌に歌っている声が聞こえる。
「安心しろ、シノがやらなくても、あいつがやる」
「え………??」
にやりと悪い顔をするローを見て、思わず振り返る。ハチに追い打ちをかけようとする天竜人から庇うようにしているルフィ。天竜人を睨みつけ、立ち上がるとスタスタと近づいていった。周りがざわつく中、 麦わらのルフィの拳は振り上げられ、――――天竜人を殴った。見事に宙を舞う天竜人は、ガシャアンとがれきの上に吹き飛んだ。
その場にいる客たちのほとんどが絶句している。貴族と言えど天竜人を恐れているので当然だ。ルフィがポキポキと手の骨を鳴らす音だけが響いていた。
「おいおい、やりやがったな麦わらのルフィ」
「キャプテン、大将来ちゃうよ!」
後ろの席に座っているシャチとベポがはしゃいでいる。焦っているようなセリフだが、表情は楽しんでいるように見える。この状況を一番楽しんでいるのは、ローだ。
「無茶苦茶だなぁ……」
「お前もこの展開を望んでたんだろ」
「確かにスカッとしたけど!でもこの後どうすんのさ」
シノは、先ほど知り合いになったボニーを思い出す。せっかく彼女が体を張って止めてくれたのに申し訳ない。無事逃げてくれれば良いのだが。
「おのれ~!!下々の身分でよくも息子に手をかけたな!!」
「他にも天竜人いたんだ」
ルフィに殴られた天竜人の父親と思しき天竜人がルフィに向かって発砲するが、一切当たっていない。逆に周りの他の一般客達に当たりそうになり、慌てて逃げ出す客達やどこからか出てきた大量の衛兵達で、会場内は混乱していく。
「全然状況が掴めないんだけど」
「多分だが、麦わらの一味の友達の人魚が売られてて、それを取り返そうとした結果がこれっぽい」
「あー、あの舞台上の子!」
つまり、ゾロは何も知らずに1番GRを目指しており、ルフィはあの人魚を救うためにここを目指していたという事だ。通りで2人の会話が噛み合わないと思った。ペンギンの解説のおかげでようやく状況が理解できた。この騒動はあの人魚を助けるまでは終わらない、ということだ。
「あ、今のうちにハチさんの手当てしてくる」
「危ねェぞー?」
もぞもぞと屈みながら階段のハチの元へ向かう。ローも何も言わないので動いても問題ないだろう。とりあえず止血だけでもしなければ。
「おめぇ誰だ…….?」
「通りかがりの看護師だよ」
「ここは危ねェ、早く逃げろ……」
「ちょっと痛いかもだけど我慢してね」
自分の方が危ない状態だというのに何を言っているのやら。シノはポシェットから滅菌ガーゼを取り出し、ハチの傷口を圧迫する。ハチは痛みに顔を歪ませたが、声は出さないよう耐えてくれた。
「お前も医者か!?」
「え、可愛い!?」
トテトテと駆け寄ってきた生き物を見てつい本音が漏れてしまった。喋るトナカイ、麦わらの一味のトニー・トニー・チョッパーだ。写真でもかなりの可愛さだったが、生の彼は想像以上にもふもふで可愛かった。
「あ、ごめん。医者じゃなくて通りすがりの看護師です。だから治療は出来ないけど、とりあえず止血だけでもと思って」
「なんだ、通りすがりの看護師かー」
ふぅと、安心して笑うチョッパー。いちいち行動が可愛い。彼は確か麦わらの一味の船医だ。彼がいるなら安心だろう。だからローも動かなかったのか。
「とりあえず血は止まったと思う。あとは任せていい?」
「おう、任せとけ、ありがとな!」
「どういたしまして」
「見ず知らずの俺に、本当にすまねェ……」
「私がしたかっただけだからお構いなく」
申し訳なさそうなハチに笑いかけ、またもぞもぞと屈んだまま仲間達の元へと戻る。どんどん麦わらの一味が集結し、戦いが激しくなっているが、巻き込まれるのはごめんだ。
ルフィの横を通り、すぐそこのローの隣に座り直す。
「ルフィ、ケイミーは!?」
「あそこだ!首についた爆弾外したらすぐ逃げるぞ!軍艦と大将が来るんだ!」
鼻の長い男とルフィの会話が聞こえる。人魚のケイミーの首には確かに何かがついている。売り物が逃げないように爆弾を仕掛けていたようだ。どうやら無理やり取ろうとしたりこの場を離れると爆発するらしい。
「海軍ならもう来てるぞ、麦わら屋」
「なんだお前……なんだそのクマ」
「海軍ならオークションが始まる前からずっとこの会場を取り囲んでる」
「え!?そうなの!?」
シノも屋根から突撃して入ってしまったため、まさか海軍に囲まれていた等気が付かなかった。
ルフィはローと会話しつつも、視線はほぼべポを見ている。この様子では、ローを知らないようだ。ゾロもそうだったが、他の海賊の手配書等は見ないタイプなのだろう、見た目通りのタイプだ。
海軍本部の駐屯所があるので、何かあればすぐに集まってくるのはわかっていたが、ローの口ぶりから、この騒ぎ関係なく囲まれていたらしい。このオークション自体は政府公認のようなので、オークション自体を取り締まるつもりではないだろう。
「誰を捕まえたかったかは知らねェが、まさか天竜人がぶっ飛ばされる事態になるとは思わなかっただろうな」
「貴方、トラファルガー・ローね。ルフィ、海賊よ、彼」
「……ふふ、面白ェもん見せて貰ったよ麦わら屋一味」
近くを通りかかった女性、ニコ・ロビンはローの事を知っており、ルフィに説明した。しかしルフィの興味はやはりべポのようだ。シノも思わず、ふふと笑う。
「クマもか?」
「クマもだよ」
「クマもかー、いいなー。ってお前さっきゾロと一緒にいたやつ」
「シノだよ」
「そうだ、シノだ!」
あの一瞬ではさすがに名前は覚えていなかったようだ。ケイミーを助けるので頭がいっぱいだったのだろう。
「お前こいつらの仲間だったのか」
「そうそう。それでここまでゾロくんに送ってもらってたんだよ」
「なるほどなーゾロに送ってもらうなんて無茶なやつだなー」
「あ、道はこっちで案内したから。用心棒してもらっただけだから」
やはりゾロは仲間達公認の方向音痴のようだ。お互い役に立ちwin-winな状況だったようで良かった。
「うちのが世話になったな」
「ゾロは面倒見が良いからな」
ローの言葉に、しししと笑うルフィ。最初こそシノが無理やりついて行ったわけだが、最終的にここまでちゃんと連れてきてくれたのは確かに面倒見が良いと言っても良いかもしれない。
その時、突如舞台の方から殺気のような大きな気配を感じ、その場にいた全員が舞台を見た。
「!?」
舞台上で人魚を手にかけようとしていた女性の天竜人が突然気絶してパタリと倒れる。それと同時に舞台奥のカーテンがびりびりと破られた。
「ほら見ろ巨人君、会場はえらい騒ぎだ」
中から出てきたのは白髪の男性と、大きな男……巨人族だ。白髪の男はある程度年がいっているようにみえるが、桁違いに強い気配がする。
「あわよくば私を買った者からも金を奪うつもりだったがなァ……考えても見ろ、こんな年寄り私なら絶対奴隷になどいらん!!わははは!!!」
酒を片手に豪快に笑う白髪の男。捕まってオークションへ出されるところだったようだ。しかし、他の人間たちと違い、首輪はついていない。どう見ても只者ではないその男に、ローの視線はくぎ付けだった。
「……キャプテン、あの人のこと知ってるの?」
「知ってるも何も……お前らも知ってるはずだぞ」
そういう言い方をするということは相当有名な大物なのだろう。
「おぉ、ハチじゃないか!?久しぶりだな!!その傷はどうした!!……あー……いやいや言わんでいいぞ」
男は周りの状況を見て大体の状況を把握したようだ。ハチの知り合いなら少なくとも海軍側の人間ではない。警戒する理由はないかもしれない。
「つまり、ナルホド…まったくひどい目にあったなハチ……お前たちが助けてくれたのか」
「……おい、シノ。気抜くなよ」
「でもあの人ハチさんの知り合いっぽいけど」
「さっきの見てただろ」
さっきの、というと女性の天竜人が倒れたやつだろうか。確かにタイミング的に、あれはこの男の仕業の可能性が高い。あれは一体なんだったのか。
「――――さて、」
そう言って会場全体を笑顔で見据えた男。急に背筋がぞくりとし、シノはローの服にしがみついた。先ほどのやつだ。ローに事前に言われていなければ、会場にいた衛兵達と同じように意識を持っていかれていたかもしれない。
「…あ、危ねェ、一瞬意識が遠のいた…」
「何、今の………?」
「……覇気だ、あとで説明してやる」
シャチもくらっとしたらしい。覇気とはなんなのか、今は聞いている暇はなさそうだ。男が、麦わらの一味ではなくこちらを見ている。
「悪かったな君ら、見物の海賊だったか……今のを難なく持ち堪えるとは半端ものではなさそうだ」
君ら、という言葉に周りを見ると、ユースタス・キッドとその一味がいた。彼らとシノ達ハートの海賊団に対しての言葉のようだ。
思わずローにしがみついてしまったシノとしては、難なく持ち堪えたと言えるのか怪しいが、そこらの気絶した衛兵よりはマシだということにしておく。
「まさかこんな大物にここで出会うとは……」
「冥王シルバーズ・レイリー…!間違いねェ、何故こんな伝説の男が……」
「シルバーズ・レイリー……!?」
冥王シルバーズ・レイリー。
海賊王ゴールドロジャーと共に世界を旅した副船長の名だ。顔は知らなったが、海賊をやっていて名前を知らない人間はいないだろう。ようやく先ほどのローの言葉に合点がいった。伝説級の男の気迫なら、そこらの衛兵が倒れるのも無理はない。
「この島じゃコーティング屋のレイさんで通っている……下手にその名を呼んでくれるな。もはや老兵……平穏に暮らしたいのだよ」
そう言って笑う姿は、老兵とは思えない風格を感じさせた。この場にいる誰が、彼に勝てるというのか。つくづく敵ではなくて良かった。誰もがそう思い、息を呑んだ。
Tobe continued...
ドカァンと大きな音を立てて屋根を貫通した。基本的にはトビウオが穴を開けてくれたおかげで、痛み等は無かった。
「何だお前!!もっと上手く着陸しろよ!!」
「出来るか!トビウオだぞ!!」
「い、生きてる………!!」
見知らぬトビウオ運転手とルフィが口喧嘩をしている。麦わらの一味ではないのだろう。そんなことはどうでも良い。多少のかすり傷はあれど、ほぼ無傷で済んだことにほっとしたが、正直、まだ心臓がドキドキしている。
「サニー号に戻るのに何を急いでんだよ……ここどこだ?」
「あの、ゾロくん……??」
「おい、ゾロてめェこの一大事になにレディといちゃついてんだ!?」
「あぁ!?」
「あの、いちゃついてません……」
まだ状況を理解できていないゾロに、誰かが絡んできた。麦わらの一味の黒足のサンジだ。何故こんなことになってしまったのか。とりあえず無事辿りついたのは良かった。
「「「シノ!?」」」
「今度はなんだ?」
「いや、だからあのゾロくん……おろしてください」
シノが怪我しないようずっと抱えてくれていたのだろうが、この状況で持たれたままなのは、とにかく恥ずかしい。特に、持たれ方が完全に荷物扱いなのがまた恥ずかしい。
「おう、悪ぃ、忘れてた」
「むしろありがとう、助かりました」
「仲間はいんのか?」
「うん、あそこに座ってる」
ようやく下ろしてもらい、大きく息をつき胸を撫で下ろした。ちゃんと仲間に会えるかまで心配してもらい、頭が上がらない。席に座っている仲間達を見つけ、指をさした。
「そりゃ良かったな。もう迷子になるんじゃねェぞ」
「迷子ではないよ!?でも本当ありがと、またね」
礼を言い、こちらを睨みつけているロー達のもとへ急ぎ向かう。ルフィはルフィで舞台上の人魚の元へ走っており、会場内はかなり騒々しい。それに紛れてシノも移動した。
「お前、なんつー登場の仕方してんだよ!!」
「天竜人とジュエリーボニーまでは聞いてたが、麦わらの一味と一緒にいるなんて聞いてねェぞ!?」
「あいつらと知り合いなのか!?」
シャチ、ペンギン、ベポが口々にいろいろときいてくる。どこから説明すれば良いのか。まさかこんなド派手な登場をすることになるとは思わなかった。
「あの……出来るだけ安全にここに来ようとして、ロロノアゾロに用心棒してもらってたんだけど、なんかよくわからないうちに気付いたらあのトビウオで突っ込むことに……」
嘘は言っていない。が、嘘みたいな話ではある。睨みつけていたローが大きくため息を漏らした。
「天竜人には関わってないんだな?」
「そこは本当に。居なくなるまでちゃんと隠れてたから」
「ならいい。あとであいつらの話は聞くが、とりあえず座っとけ」
あいつらとは麦わらのルフィとゾロのことだろう。ローの隣の席に座ろうとした時だった。背後から銃声が聞こえ、振り返る。
「ハチ!!!!」
階段の途中で血を流して倒れているタコの魚人。オレンジ髪の女性が叫んだのが、彼の名前だろう。よく見ると麦わらの一味の航海士ナミだ。彼は麦わらの一味の知り合いのようだ。
この島では魚人族と人魚族は差別を受けている。周りが騒がしかったのはそのせいか。撃ったのはどうやら天竜人のようだ。先ほど町中で見たのと同じやつだ。
「あいつ……!!!」
「おい、関わるな」
「でも、あの魚人族の人……」
グッとローに腕を掴まれ引っ張られた。そのままローの方に倒れ込みそうになるのをなんとか耐え、隣にすとんと座り込む。
「こっち見てろ。あいつら見てるだけで難癖つけられるかもしれねェからな」
「…………わかった」
こちらから手を出さずとも、見ているだけで不敬だと文句を言われる可能性もゼロではない。それがまかり通るのが、天竜人だ。ローの言葉は正しい。天竜人に歯向かう気はさらさらないが、せめてあのハチという魚人の応急処置をしてあげたかった。
背後で天竜人が上機嫌に歌っている声が聞こえる。
「安心しろ、シノがやらなくても、あいつがやる」
「え………??」
にやりと悪い顔をするローを見て、思わず振り返る。ハチに追い打ちをかけようとする天竜人から庇うようにしているルフィ。天竜人を睨みつけ、立ち上がるとスタスタと近づいていった。周りがざわつく中、 麦わらのルフィの拳は振り上げられ、――――天竜人を殴った。見事に宙を舞う天竜人は、ガシャアンとがれきの上に吹き飛んだ。
その場にいる客たちのほとんどが絶句している。貴族と言えど天竜人を恐れているので当然だ。ルフィがポキポキと手の骨を鳴らす音だけが響いていた。
「おいおい、やりやがったな麦わらのルフィ」
「キャプテン、大将来ちゃうよ!」
後ろの席に座っているシャチとベポがはしゃいでいる。焦っているようなセリフだが、表情は楽しんでいるように見える。この状況を一番楽しんでいるのは、ローだ。
「無茶苦茶だなぁ……」
「お前もこの展開を望んでたんだろ」
「確かにスカッとしたけど!でもこの後どうすんのさ」
シノは、先ほど知り合いになったボニーを思い出す。せっかく彼女が体を張って止めてくれたのに申し訳ない。無事逃げてくれれば良いのだが。
「おのれ~!!下々の身分でよくも息子に手をかけたな!!」
「他にも天竜人いたんだ」
ルフィに殴られた天竜人の父親と思しき天竜人がルフィに向かって発砲するが、一切当たっていない。逆に周りの他の一般客達に当たりそうになり、慌てて逃げ出す客達やどこからか出てきた大量の衛兵達で、会場内は混乱していく。
「全然状況が掴めないんだけど」
「多分だが、麦わらの一味の友達の人魚が売られてて、それを取り返そうとした結果がこれっぽい」
「あー、あの舞台上の子!」
つまり、ゾロは何も知らずに1番GRを目指しており、ルフィはあの人魚を救うためにここを目指していたという事だ。通りで2人の会話が噛み合わないと思った。ペンギンの解説のおかげでようやく状況が理解できた。この騒動はあの人魚を助けるまでは終わらない、ということだ。
「あ、今のうちにハチさんの手当てしてくる」
「危ねェぞー?」
もぞもぞと屈みながら階段のハチの元へ向かう。ローも何も言わないので動いても問題ないだろう。とりあえず止血だけでもしなければ。
「おめぇ誰だ…….?」
「通りかがりの看護師だよ」
「ここは危ねェ、早く逃げろ……」
「ちょっと痛いかもだけど我慢してね」
自分の方が危ない状態だというのに何を言っているのやら。シノはポシェットから滅菌ガーゼを取り出し、ハチの傷口を圧迫する。ハチは痛みに顔を歪ませたが、声は出さないよう耐えてくれた。
「お前も医者か!?」
「え、可愛い!?」
トテトテと駆け寄ってきた生き物を見てつい本音が漏れてしまった。喋るトナカイ、麦わらの一味のトニー・トニー・チョッパーだ。写真でもかなりの可愛さだったが、生の彼は想像以上にもふもふで可愛かった。
「あ、ごめん。医者じゃなくて通りすがりの看護師です。だから治療は出来ないけど、とりあえず止血だけでもと思って」
「なんだ、通りすがりの看護師かー」
ふぅと、安心して笑うチョッパー。いちいち行動が可愛い。彼は確か麦わらの一味の船医だ。彼がいるなら安心だろう。だからローも動かなかったのか。
「とりあえず血は止まったと思う。あとは任せていい?」
「おう、任せとけ、ありがとな!」
「どういたしまして」
「見ず知らずの俺に、本当にすまねェ……」
「私がしたかっただけだからお構いなく」
申し訳なさそうなハチに笑いかけ、またもぞもぞと屈んだまま仲間達の元へと戻る。どんどん麦わらの一味が集結し、戦いが激しくなっているが、巻き込まれるのはごめんだ。
ルフィの横を通り、すぐそこのローの隣に座り直す。
「ルフィ、ケイミーは!?」
「あそこだ!首についた爆弾外したらすぐ逃げるぞ!軍艦と大将が来るんだ!」
鼻の長い男とルフィの会話が聞こえる。人魚のケイミーの首には確かに何かがついている。売り物が逃げないように爆弾を仕掛けていたようだ。どうやら無理やり取ろうとしたりこの場を離れると爆発するらしい。
「海軍ならもう来てるぞ、麦わら屋」
「なんだお前……なんだそのクマ」
「海軍ならオークションが始まる前からずっとこの会場を取り囲んでる」
「え!?そうなの!?」
シノも屋根から突撃して入ってしまったため、まさか海軍に囲まれていた等気が付かなかった。
ルフィはローと会話しつつも、視線はほぼべポを見ている。この様子では、ローを知らないようだ。ゾロもそうだったが、他の海賊の手配書等は見ないタイプなのだろう、見た目通りのタイプだ。
海軍本部の駐屯所があるので、何かあればすぐに集まってくるのはわかっていたが、ローの口ぶりから、この騒ぎ関係なく囲まれていたらしい。このオークション自体は政府公認のようなので、オークション自体を取り締まるつもりではないだろう。
「誰を捕まえたかったかは知らねェが、まさか天竜人がぶっ飛ばされる事態になるとは思わなかっただろうな」
「貴方、トラファルガー・ローね。ルフィ、海賊よ、彼」
「……ふふ、面白ェもん見せて貰ったよ麦わら屋一味」
近くを通りかかった女性、ニコ・ロビンはローの事を知っており、ルフィに説明した。しかしルフィの興味はやはりべポのようだ。シノも思わず、ふふと笑う。
「クマもか?」
「クマもだよ」
「クマもかー、いいなー。ってお前さっきゾロと一緒にいたやつ」
「シノだよ」
「そうだ、シノだ!」
あの一瞬ではさすがに名前は覚えていなかったようだ。ケイミーを助けるので頭がいっぱいだったのだろう。
「お前こいつらの仲間だったのか」
「そうそう。それでここまでゾロくんに送ってもらってたんだよ」
「なるほどなーゾロに送ってもらうなんて無茶なやつだなー」
「あ、道はこっちで案内したから。用心棒してもらっただけだから」
やはりゾロは仲間達公認の方向音痴のようだ。お互い役に立ちwin-winな状況だったようで良かった。
「うちのが世話になったな」
「ゾロは面倒見が良いからな」
ローの言葉に、しししと笑うルフィ。最初こそシノが無理やりついて行ったわけだが、最終的にここまでちゃんと連れてきてくれたのは確かに面倒見が良いと言っても良いかもしれない。
その時、突如舞台の方から殺気のような大きな気配を感じ、その場にいた全員が舞台を見た。
「!?」
舞台上で人魚を手にかけようとしていた女性の天竜人が突然気絶してパタリと倒れる。それと同時に舞台奥のカーテンがびりびりと破られた。
「ほら見ろ巨人君、会場はえらい騒ぎだ」
中から出てきたのは白髪の男性と、大きな男……巨人族だ。白髪の男はある程度年がいっているようにみえるが、桁違いに強い気配がする。
「あわよくば私を買った者からも金を奪うつもりだったがなァ……考えても見ろ、こんな年寄り私なら絶対奴隷になどいらん!!わははは!!!」
酒を片手に豪快に笑う白髪の男。捕まってオークションへ出されるところだったようだ。しかし、他の人間たちと違い、首輪はついていない。どう見ても只者ではないその男に、ローの視線はくぎ付けだった。
「……キャプテン、あの人のこと知ってるの?」
「知ってるも何も……お前らも知ってるはずだぞ」
そういう言い方をするということは相当有名な大物なのだろう。
「おぉ、ハチじゃないか!?久しぶりだな!!その傷はどうした!!……あー……いやいや言わんでいいぞ」
男は周りの状況を見て大体の状況を把握したようだ。ハチの知り合いなら少なくとも海軍側の人間ではない。警戒する理由はないかもしれない。
「つまり、ナルホド…まったくひどい目にあったなハチ……お前たちが助けてくれたのか」
「……おい、シノ。気抜くなよ」
「でもあの人ハチさんの知り合いっぽいけど」
「さっきの見てただろ」
さっきの、というと女性の天竜人が倒れたやつだろうか。確かにタイミング的に、あれはこの男の仕業の可能性が高い。あれは一体なんだったのか。
「――――さて、」
そう言って会場全体を笑顔で見据えた男。急に背筋がぞくりとし、シノはローの服にしがみついた。先ほどのやつだ。ローに事前に言われていなければ、会場にいた衛兵達と同じように意識を持っていかれていたかもしれない。
「…あ、危ねェ、一瞬意識が遠のいた…」
「何、今の………?」
「……覇気だ、あとで説明してやる」
シャチもくらっとしたらしい。覇気とはなんなのか、今は聞いている暇はなさそうだ。男が、麦わらの一味ではなくこちらを見ている。
「悪かったな君ら、見物の海賊だったか……今のを難なく持ち堪えるとは半端ものではなさそうだ」
君ら、という言葉に周りを見ると、ユースタス・キッドとその一味がいた。彼らとシノ達ハートの海賊団に対しての言葉のようだ。
思わずローにしがみついてしまったシノとしては、難なく持ち堪えたと言えるのか怪しいが、そこらの気絶した衛兵よりはマシだということにしておく。
「まさかこんな大物にここで出会うとは……」
「冥王シルバーズ・レイリー…!間違いねェ、何故こんな伝説の男が……」
「シルバーズ・レイリー……!?」
冥王シルバーズ・レイリー。
海賊王ゴールドロジャーと共に世界を旅した副船長の名だ。顔は知らなったが、海賊をやっていて名前を知らない人間はいないだろう。ようやく先ほどのローの言葉に合点がいった。伝説級の男の気迫なら、そこらの衛兵が倒れるのも無理はない。
「この島じゃコーティング屋のレイさんで通っている……下手にその名を呼んでくれるな。もはや老兵……平穏に暮らしたいのだよ」
そう言って笑う姿は、老兵とは思えない風格を感じさせた。この場にいる誰が、彼に勝てるというのか。つくづく敵ではなくて良かった。誰もがそう思い、息を呑んだ。
Tobe continued...
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