王下七武海
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偉大なる航路のとある海の上。普段は海中に潜っていることが多いポーラータング号は、珍しく海の上に浮上していた。周りを見渡す限り一面の海。雲一つない快晴に大きく伸びをして、各々が久々の外を堪能する。ここぞとばかりに陽の光のもとで洗濯物を干す者、大の字になって寝転ぶ者、ただただ海を眺めている者。シノも優雅にコーヒーを片手に海を眺めていたが、スーッとこちらに向けて飛んできた鳥を見て手を振った。
「あ、新聞ちょうだい、ニュース・クー!!」
タイミングが良かった。偉大なる航路を旅している以上、情報収集は必須である。ある程度の情報操作は有るとはいえ、起きている出来事を知るために、新聞は出来るだけ読むようにしていた。チャリンとカバンにコインを入れてやり、新聞を受け取る。いつだってこの海ではいろんな事件が起きている。どこの海賊が捕まっただの、どっかの国で反乱が起きているだの。騒がしいのは何も海賊に限ったことではない。世界平和は程遠いのだろう。さて、本日の一面は。そう思い新聞をひっくり返す。
「ぶっ……」
「おい、シノ~、コーヒー苦いからって噴くなよ~」
近くで昼間から酒を飲んでいたシャチに茶化される。が、それどころではない。ぱちぱちと大きな目を瞬かせて、新聞をまじまじと見る。
「キャ、キャプテン……クロコダイルが、捕まったって!!!」
「クロコダイルが…!?」
「まじかよ~!?!?」
黒髪のオールバック、左腕の金色のフック、写真に写るそれだけで文字を読まなくてもクロコダイルが一面を飾っていることは一目瞭然である。アラバスタ王国を拠点に活動していた、世界政府公認の海賊、王下七武海の一人。そんな男が捕まったとなればかなりの大事件だ。
ローに手渡した新聞を覗く為に、近くにいたクルー達が全員集まってきた。ぎゅうぎゅうに密着して新聞を覗き込む。
「ちょっと、べポ狭い!もうちょっとそっち行ってー」
「大きなシロクマでごめん……」
「いちいち落ち込まないでよ!!!」
そんなやり取りをしつつぎゅうぎゅうと読んだ新聞によると、クロコダイルが"バロックワークス"という秘密会社を作り、アラバスタ王国の国王暗殺からの国家転覆・乗っ取りを狙っていたようだ。それを海軍大佐のスモーカーが正体を暴き捕まえたとある。スモーカーの経歴も軽く触れており、元々は東の海に駐在していたようだ。それが何故偉大なる航路にあるアラバスタにいたのかは不明であるが、活動拠点が違うため、ハートの海賊団としては、一切接点のない海軍だ。
「そんなに強いなら何で東の海にいたんだろうね。北の海に来てくれれば良かったのに」
そんな強い海軍がいてくれたら。北の海は海賊の活動も盛んで問題も絶えなかった。偉大なる航路に入る前に怪しい海賊団は叩き潰してのし上がった来たが、今も着々と新しい海賊たちが暴れていることだろう。
「……どうだかな。こいつの実力は知らないが、本当にクロコダイルをやったのか」
「キャプテン、何の話?」
「まぁそのうちわかるだろう」
一応ファイリングしておけと、新聞を返される。それに合わせて集まっていたクルー達もなんやかんやと元いた場所へ解散していく。
シャチ・ペンギン・シノの3人は、べポに寄りかかり昼寝をしようとするローの近くで座り込んだ。
「クロコダイルの代わりって誰がなるんだろう」
「最近よく聞く海賊の名前って誰だ?」
「つーか七武海なんて遠い存在すぎて想像もつかねーよ!」
「七武海と言ったら、やっぱり海賊女帝だよな~!!」
3人集まれば会話がぽんぽんと飛ぶ。連想ゲームのように今残っている七武海の話題で盛り上がり始めた。海賊女帝、ボア・ハンコック。雑誌の表紙等でも見たことがあるかなりの美女だ。
「女ヶ島行ってみてェ!!」
「私もあんな大人の女性になりたいなぁ」
「「いや、無理だろ」」
「なんでよ!?」
「いや、だってお前既に21歳だろ。大人じゃん」
グサッと刺さる。確かに既に成人してはいるが。確かボア・ハンコックは29歳だった。あと8年でああなれるかと言われると……そこまで考えて、考えるのをやめた。十分大人になったとは思うが、10歳の頃からの付き合いの彼らからしたら、シノは何も変わらないのだろう。ローから見てもそうなのだろうか。ちらりと彼を見るも、目を閉じてしまっている。まだ寝てはいないだろうが、会話に入る気はないだろう。
「強くてかっこよくてきれいな女性良いなぁ……」
「引きずりすぎだろ」
「シノはシノで良いんだよ。じゃなかったら今頃うちにいなかったかもしれねェし」
「ペンギン~~!!!」
わぁ~とわざとらしくウソ泣きをして抱き着く。もはやここまでが定番の茶番である。
「でもやっぱり剣士としては、鷹の目のミホークもかっこいいよね」
「お前は"自称"剣士な」
「さっきの感動返してよ!?」
「うちのキャプテンとどっちが強いかなぁ」
シャチの言葉に、三人の視線がローへ向く。さすがに視線に気づいたのか、目は開けないものの眉をひそめて反応した。
「まぁさすがに鷹の目か」
「あの人、悪魔の実食べてないよね?」
「しかも、海賊って言っても一人だよな?」
それならもしかしたら……とはならないのが王下七武海。むしろ、悪魔の実も食べず、仲間もいないにもかかわらず、七武海に選ばれているということは、尋常じゃなく強いのだろう。ある程度名を挙げて、少しずつ懸賞金を挙げているとは言えど、まだまだ偉大なる航路に入ったばかりの自分達では到底かなわないだろう。もちろん無謀な挑戦などする気もないが。あっはっはとひとしきり笑い、ふぅと一息をつく。
「あとは懸賞金が一番高いのだとドンキホーテ・ドフラミンゴ?」
「あいつ昔、北の海拠点にしてたよな」
「俺らが船出した頃にはもういなくて良かったよな~」
「あのもふもふのコート、欲しいなぁ」
「……お前趣味悪いな」
ドンキホーテ・ドフラミンゴ。確かどこかの国の国王兼海賊という変な経歴だった。不思議な形のサングラスに、ピンク色の羽がふさふさしたもふもふコートが特徴的な男。見た目はともかく、あのコート自体は気持ちよさそうで少し触ってみたい。
シャチとペンギンが次の七武海の話題で盛り上がり始めた時、シノはふとあることを思いつき口を閉じた。――経歴がどう考えても変ではないか。元々国王だったが海賊になった、ならまぁ何となくわかる。わからないが、そんなこともあるとは思う。実際にそんな海賊もいるらしい。しかし、海賊が国王になるパターンなんて、それはもう乗っ取りだろう。それこそ、ちょうどクロコダイルの記事を見たからこそ沸いた疑問だ。
「あれ、シノどこ行くんだ?」
「あー……うん、新聞しまってくる」
「おう、頼んだ」
シノはふらりと立ち上がり、ジンベエの話で盛り上がる二人を置いて、資料室へ向かった。
大量の資料の割には比較的整頓されている資料室を見渡す。軽く新聞を読みはするが、元々本や活字を読むのは得意な方ではないので、あまりここに来ることはない。掃除当番以来の訪問だが、整頓されているおかげで何とか資料は探せそうだ。
彼の統治する国がドレスローザ王国、ということはすぐにわかった。愛と情熱とおもちゃの国。近隣諸国では戦争が絶えないようだが、ドレスローザ自体はドフラミンゴに守られているようで、ところどころで出てくる記事を見る限り、悪い状況ではないようだ。むしろ国民からも慕われているような記載も見て取れた。そもそもドフラミンゴが国王の座についたのはいつなのだろう。そんな昔の情報がこの船にあるとは思えないが、とりあえずファイルをあさってみる。
「探し物はこれか」
「キャプテン!?なんで……」
いつの間に来たのか。昼寝をしていたはずのローがドアに寄りかかっていた。手には大分古びた新聞がある。
「普段資料室に近づかないくせにわざわざ行くって言うからには、何か気になったんだろ」
「わー、さすがキャプテン……」
遠回しにファイルの整頓が苦手で逃げていたのがバレていて咎められている気分になった。確かにいつもだったら新聞を誰かに預けて代わってもらっていただろう。掃除も適当にやっていたことがバレているかもしれない。
「なんか今まで別に気にしたこともなかったけど、クロコダイルの事件見たら、七武海も海賊なんだなって思って、そうしたらなんか……」
「ドンキホーテ・ドフラミンゴか」
ちょいちょいと手招きをされて近寄る。ローは古びた新聞をシノが覗き込みやすいようにその場に座ってくれたので、シノも隣に座り込む。
"ドレスローザに新たなる王が誕生!その名はドフラミンゴ!!"
大々的に打たれた見出しと今より少し若いドフラミンゴの写真。国王が乱心し国民を傷つけ、それを止めたドフラミンゴが新たな王として君臨したと書かれている。
当時この新聞を見たとしても、恐らく何とも思わなかっただろう。遠い見知らぬ国で暴動が起きて、それを止めた海賊が国王になった。むしろ、昨日この記事を読んだとしても何とも思わなかったかもしれない。
「こんなの……クロコダイルがやろうとしてたのと一緒じゃない?」
「そうだろうな」
行き場のない怒りなのか、水面下で起こっていた衝撃的な事実への恐怖なのか、急にぞっとして体が震える。本当に正義感が強く、乱心した国王の代わりに国を救ったという可能性もゼロではないが、ドフラミンゴが海賊という時点でほぼほぼゼロに近いだろう。そんな人間が懸賞金3億超えのはずがない。
「なんか七武海は政府の味方で、平和の為に動いてくれるのかもって勝手に思ってたけど、当たり前だけどそんなことないんだよね」
自分たちには関係ない遠い存在が故、勝手にそんな風に思っていたところがあった。あくまで海賊は海賊なのだろう。
「そもそも政府や海軍も信じちゃいねェからな、俺は」
「正義なんて見方次第だもんね……」
実際に目で見て関わってみないと何もわからない。海賊になって旅に出て、ようやくわかったことだ。ほぼほぼ怪しいとは思っても、本当はどうなのかはわからない。良い統治をしているかもしれないし、もしそうじゃなかったとしても、今自分たちに出来ることは何もない。
「ドレスローザは、新世界にある島だ。危ないとわかってて行く理由もねェ。俺達が行くことはほぼ無いだろうし、ドフラミンゴになんて関わろうと思うな」
「出来るなら極力七武海には会いたく無いなぁ」
何よりも仲間達の安全を優先したい。少し憧れはあったが、アイドルは遠巻きに見てプライベートは見ないのが一番、ということだろう。
「でも、クロコダイルとかドフラミンゴとか、大きくて強くてちょっとカッコいいし一目見てみたかったなぁ」
「……お前趣味悪いな、やめとけ」
「もちろんキャプテンの方が好きだよ!?」
好みと言われたら当然ローが一番なのだが、カッコいい大人の男性に憧れるのも乙女心なのだが、ローにはわからないだろう。アイドル的な視点で憧れるだけなのだが。
「キャプテンだってハンコックみたいな女性が好みなんじゃ無いの?」
「まぁ男は大体ああいうのが好きだな」
「嘘!?」
「冗談だ」
今日一で心臓が止まるかと思った。あれが好みだと言われたらもう人生やり直すしか無いレベルだ。ほっと胸を撫で下ろした。
「せっかく海上なんだ、外戻るぞ」
「あ、うん」
昼寝のし直しだ、と立ち上がるローについて行く。いつの間に能力を使ったのか、もうその手には新聞はなかった。
そういえば一口しか飲んでいないコーヒーを甲板に置いてきてしまった。雰囲気だけ楽しみたかったがために淹れた飲めもしないブラックコーヒーをどうしたものか。冷め切っているであろうそれを、シャチとペンギンどちらに飲ませたものか。
「あ、キャプテン、コーヒー飲みます?」
「いらねーよ!!」
すぐにあの冷めたコーヒーのことだとバレて断られる。ですよね、と笑いながら二人並んで、みんなのいる外へ向かった。
end.
「あ、新聞ちょうだい、ニュース・クー!!」
タイミングが良かった。偉大なる航路を旅している以上、情報収集は必須である。ある程度の情報操作は有るとはいえ、起きている出来事を知るために、新聞は出来るだけ読むようにしていた。チャリンとカバンにコインを入れてやり、新聞を受け取る。いつだってこの海ではいろんな事件が起きている。どこの海賊が捕まっただの、どっかの国で反乱が起きているだの。騒がしいのは何も海賊に限ったことではない。世界平和は程遠いのだろう。さて、本日の一面は。そう思い新聞をひっくり返す。
「ぶっ……」
「おい、シノ~、コーヒー苦いからって噴くなよ~」
近くで昼間から酒を飲んでいたシャチに茶化される。が、それどころではない。ぱちぱちと大きな目を瞬かせて、新聞をまじまじと見る。
「キャ、キャプテン……クロコダイルが、捕まったって!!!」
「クロコダイルが…!?」
「まじかよ~!?!?」
黒髪のオールバック、左腕の金色のフック、写真に写るそれだけで文字を読まなくてもクロコダイルが一面を飾っていることは一目瞭然である。アラバスタ王国を拠点に活動していた、世界政府公認の海賊、王下七武海の一人。そんな男が捕まったとなればかなりの大事件だ。
ローに手渡した新聞を覗く為に、近くにいたクルー達が全員集まってきた。ぎゅうぎゅうに密着して新聞を覗き込む。
「ちょっと、べポ狭い!もうちょっとそっち行ってー」
「大きなシロクマでごめん……」
「いちいち落ち込まないでよ!!!」
そんなやり取りをしつつぎゅうぎゅうと読んだ新聞によると、クロコダイルが"バロックワークス"という秘密会社を作り、アラバスタ王国の国王暗殺からの国家転覆・乗っ取りを狙っていたようだ。それを海軍大佐のスモーカーが正体を暴き捕まえたとある。スモーカーの経歴も軽く触れており、元々は東の海に駐在していたようだ。それが何故偉大なる航路にあるアラバスタにいたのかは不明であるが、活動拠点が違うため、ハートの海賊団としては、一切接点のない海軍だ。
「そんなに強いなら何で東の海にいたんだろうね。北の海に来てくれれば良かったのに」
そんな強い海軍がいてくれたら。北の海は海賊の活動も盛んで問題も絶えなかった。偉大なる航路に入る前に怪しい海賊団は叩き潰してのし上がった来たが、今も着々と新しい海賊たちが暴れていることだろう。
「……どうだかな。こいつの実力は知らないが、本当にクロコダイルをやったのか」
「キャプテン、何の話?」
「まぁそのうちわかるだろう」
一応ファイリングしておけと、新聞を返される。それに合わせて集まっていたクルー達もなんやかんやと元いた場所へ解散していく。
シャチ・ペンギン・シノの3人は、べポに寄りかかり昼寝をしようとするローの近くで座り込んだ。
「クロコダイルの代わりって誰がなるんだろう」
「最近よく聞く海賊の名前って誰だ?」
「つーか七武海なんて遠い存在すぎて想像もつかねーよ!」
「七武海と言ったら、やっぱり海賊女帝だよな~!!」
3人集まれば会話がぽんぽんと飛ぶ。連想ゲームのように今残っている七武海の話題で盛り上がり始めた。海賊女帝、ボア・ハンコック。雑誌の表紙等でも見たことがあるかなりの美女だ。
「女ヶ島行ってみてェ!!」
「私もあんな大人の女性になりたいなぁ」
「「いや、無理だろ」」
「なんでよ!?」
「いや、だってお前既に21歳だろ。大人じゃん」
グサッと刺さる。確かに既に成人してはいるが。確かボア・ハンコックは29歳だった。あと8年でああなれるかと言われると……そこまで考えて、考えるのをやめた。十分大人になったとは思うが、10歳の頃からの付き合いの彼らからしたら、シノは何も変わらないのだろう。ローから見てもそうなのだろうか。ちらりと彼を見るも、目を閉じてしまっている。まだ寝てはいないだろうが、会話に入る気はないだろう。
「強くてかっこよくてきれいな女性良いなぁ……」
「引きずりすぎだろ」
「シノはシノで良いんだよ。じゃなかったら今頃うちにいなかったかもしれねェし」
「ペンギン~~!!!」
わぁ~とわざとらしくウソ泣きをして抱き着く。もはやここまでが定番の茶番である。
「でもやっぱり剣士としては、鷹の目のミホークもかっこいいよね」
「お前は"自称"剣士な」
「さっきの感動返してよ!?」
「うちのキャプテンとどっちが強いかなぁ」
シャチの言葉に、三人の視線がローへ向く。さすがに視線に気づいたのか、目は開けないものの眉をひそめて反応した。
「まぁさすがに鷹の目か」
「あの人、悪魔の実食べてないよね?」
「しかも、海賊って言っても一人だよな?」
それならもしかしたら……とはならないのが王下七武海。むしろ、悪魔の実も食べず、仲間もいないにもかかわらず、七武海に選ばれているということは、尋常じゃなく強いのだろう。ある程度名を挙げて、少しずつ懸賞金を挙げているとは言えど、まだまだ偉大なる航路に入ったばかりの自分達では到底かなわないだろう。もちろん無謀な挑戦などする気もないが。あっはっはとひとしきり笑い、ふぅと一息をつく。
「あとは懸賞金が一番高いのだとドンキホーテ・ドフラミンゴ?」
「あいつ昔、北の海拠点にしてたよな」
「俺らが船出した頃にはもういなくて良かったよな~」
「あのもふもふのコート、欲しいなぁ」
「……お前趣味悪いな」
ドンキホーテ・ドフラミンゴ。確かどこかの国の国王兼海賊という変な経歴だった。不思議な形のサングラスに、ピンク色の羽がふさふさしたもふもふコートが特徴的な男。見た目はともかく、あのコート自体は気持ちよさそうで少し触ってみたい。
シャチとペンギンが次の七武海の話題で盛り上がり始めた時、シノはふとあることを思いつき口を閉じた。――経歴がどう考えても変ではないか。元々国王だったが海賊になった、ならまぁ何となくわかる。わからないが、そんなこともあるとは思う。実際にそんな海賊もいるらしい。しかし、海賊が国王になるパターンなんて、それはもう乗っ取りだろう。それこそ、ちょうどクロコダイルの記事を見たからこそ沸いた疑問だ。
「あれ、シノどこ行くんだ?」
「あー……うん、新聞しまってくる」
「おう、頼んだ」
シノはふらりと立ち上がり、ジンベエの話で盛り上がる二人を置いて、資料室へ向かった。
大量の資料の割には比較的整頓されている資料室を見渡す。軽く新聞を読みはするが、元々本や活字を読むのは得意な方ではないので、あまりここに来ることはない。掃除当番以来の訪問だが、整頓されているおかげで何とか資料は探せそうだ。
彼の統治する国がドレスローザ王国、ということはすぐにわかった。愛と情熱とおもちゃの国。近隣諸国では戦争が絶えないようだが、ドレスローザ自体はドフラミンゴに守られているようで、ところどころで出てくる記事を見る限り、悪い状況ではないようだ。むしろ国民からも慕われているような記載も見て取れた。そもそもドフラミンゴが国王の座についたのはいつなのだろう。そんな昔の情報がこの船にあるとは思えないが、とりあえずファイルをあさってみる。
「探し物はこれか」
「キャプテン!?なんで……」
いつの間に来たのか。昼寝をしていたはずのローがドアに寄りかかっていた。手には大分古びた新聞がある。
「普段資料室に近づかないくせにわざわざ行くって言うからには、何か気になったんだろ」
「わー、さすがキャプテン……」
遠回しにファイルの整頓が苦手で逃げていたのがバレていて咎められている気分になった。確かにいつもだったら新聞を誰かに預けて代わってもらっていただろう。掃除も適当にやっていたことがバレているかもしれない。
「なんか今まで別に気にしたこともなかったけど、クロコダイルの事件見たら、七武海も海賊なんだなって思って、そうしたらなんか……」
「ドンキホーテ・ドフラミンゴか」
ちょいちょいと手招きをされて近寄る。ローは古びた新聞をシノが覗き込みやすいようにその場に座ってくれたので、シノも隣に座り込む。
"ドレスローザに新たなる王が誕生!その名はドフラミンゴ!!"
大々的に打たれた見出しと今より少し若いドフラミンゴの写真。国王が乱心し国民を傷つけ、それを止めたドフラミンゴが新たな王として君臨したと書かれている。
当時この新聞を見たとしても、恐らく何とも思わなかっただろう。遠い見知らぬ国で暴動が起きて、それを止めた海賊が国王になった。むしろ、昨日この記事を読んだとしても何とも思わなかったかもしれない。
「こんなの……クロコダイルがやろうとしてたのと一緒じゃない?」
「そうだろうな」
行き場のない怒りなのか、水面下で起こっていた衝撃的な事実への恐怖なのか、急にぞっとして体が震える。本当に正義感が強く、乱心した国王の代わりに国を救ったという可能性もゼロではないが、ドフラミンゴが海賊という時点でほぼほぼゼロに近いだろう。そんな人間が懸賞金3億超えのはずがない。
「なんか七武海は政府の味方で、平和の為に動いてくれるのかもって勝手に思ってたけど、当たり前だけどそんなことないんだよね」
自分たちには関係ない遠い存在が故、勝手にそんな風に思っていたところがあった。あくまで海賊は海賊なのだろう。
「そもそも政府や海軍も信じちゃいねェからな、俺は」
「正義なんて見方次第だもんね……」
実際に目で見て関わってみないと何もわからない。海賊になって旅に出て、ようやくわかったことだ。ほぼほぼ怪しいとは思っても、本当はどうなのかはわからない。良い統治をしているかもしれないし、もしそうじゃなかったとしても、今自分たちに出来ることは何もない。
「ドレスローザは、新世界にある島だ。危ないとわかってて行く理由もねェ。俺達が行くことはほぼ無いだろうし、ドフラミンゴになんて関わろうと思うな」
「出来るなら極力七武海には会いたく無いなぁ」
何よりも仲間達の安全を優先したい。少し憧れはあったが、アイドルは遠巻きに見てプライベートは見ないのが一番、ということだろう。
「でも、クロコダイルとかドフラミンゴとか、大きくて強くてちょっとカッコいいし一目見てみたかったなぁ」
「……お前趣味悪いな、やめとけ」
「もちろんキャプテンの方が好きだよ!?」
好みと言われたら当然ローが一番なのだが、カッコいい大人の男性に憧れるのも乙女心なのだが、ローにはわからないだろう。アイドル的な視点で憧れるだけなのだが。
「キャプテンだってハンコックみたいな女性が好みなんじゃ無いの?」
「まぁ男は大体ああいうのが好きだな」
「嘘!?」
「冗談だ」
今日一で心臓が止まるかと思った。あれが好みだと言われたらもう人生やり直すしか無いレベルだ。ほっと胸を撫で下ろした。
「せっかく海上なんだ、外戻るぞ」
「あ、うん」
昼寝のし直しだ、と立ち上がるローについて行く。いつの間に能力を使ったのか、もうその手には新聞はなかった。
そういえば一口しか飲んでいないコーヒーを甲板に置いてきてしまった。雰囲気だけ楽しみたかったがために淹れた飲めもしないブラックコーヒーをどうしたものか。冷め切っているであろうそれを、シャチとペンギンどちらに飲ませたものか。
「あ、キャプテン、コーヒー飲みます?」
「いらねーよ!!」
すぐにあの冷めたコーヒーのことだとバレて断られる。ですよね、と笑いながら二人並んで、みんなのいる外へ向かった。
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