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赤い瞳と目が合った
おなまえは?
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完全にボロ負けだった。
個性の相性的にもあまり良くない相手だったのに、アイツは飲み込みかけている金髪少年の個性まで使って攻撃をしてきた。
おかげで擦り傷と火傷で身体はボロボロ。
プロヒーロー達がかけつけた時には、その爆炎で喉の粘膜までやられて声が出にくくなってしまっていた。
「(なさけない…。)」
これでヒーロー志望なんて、聞いて呆れる。
そう思いながらゲボッ…と咳をこぼせば、口の中に嫌な鉄の味がじんわりと広がった。
「あと少ししたら救急車が来るから、このままもう少し待っていてね。」
「あ、はい。」
「…女の子なんだから、あまり身体に傷を作るのは良くないよ。今度からはプロヒーローが来るまで安全な場所で待っていてね。」
「!…すみません。」
ぺこりと頭を下げれば満足気に頷いて私から離れていくプロヒーロー。
少し向こうでは金髪少年と同じ学ランを着た男の子が同じようにプロヒーローから注意を受けている。
現着したものの打つ手を見い出せなかったプロヒーローの間をすり抜けてヴィランに荷物を投げつけた彼は客観的に見れば単なる考えナシに見えるだろう。
「(けど、行動は至極冷静だった…。)」
「……おい。」
「(もちろん無謀な突進だった事には変わらないけど、あの咄嗟の判断力は現場のプロヒーロー達にも引けを取らないんじゃないかな…。)」
「……おい。」
「(けど、ぶつけた後…あの後はどうするつもりだったんだろう?)」
「おいっつってんだろうがクソモブがッ…!!」
「は、はいッ…!!」
頭の中でグルグルと考え込んでいれば突然耳に入ってきた機嫌の悪そうな怒鳴り声。
それに驚いてガバッと顔をあげれば、そんな私を見下ろす不機嫌そうな赤い瞳と目が合った。
あぁ、なんだかデジャブみたいだな。
見上げたままそんな事を考える私に、その彼は不機嫌そうな顔のままボロボロになった私のスマホを差し出してきた。
「あれ、いつの間に落としてたんだろ…。」
「……いらねェんか。」
「あ、いる!あ…えと、ありがとう。」
「……。」
受け取ったスマホをダメもとでいじってみるが案の定ウンともスンとも言わない。
まぁ、元々充電切れてたしな。
そう思って息を吐けば、目の前にいた金髪少年から不機嫌そうな舌打ちが零れた。
「…弁償、する。」
「え…?」
「ッ…だからッ…弁償するっつってんだろ!さっきから耳聞こえてねェんかクソモブ女ッ…!」
「き、聞こえてます聞こえてます!あ、あと弁償しなくていいです!」
「あ゙ぁ!?」
「ほ、保険入ってるから!無料で新しいの貰えるから大丈夫です!!」
“ていうかガラ悪過ぎだろこの子ッ…!” と心の中で呟きつつ一応もう一度お礼を言う。
いや、顔怖いし怒鳴り声の迫力すごいけどわざわざ落ちていたスマホを拾って弁償するとまで言ってくれているのだ。
きっと根は良い奴に違いない。
「…あの、その…良い個性、だね…?」
「!……ンなことテメェに言われなくても分かっとるわクソが。」
「あ、デスヨネ…。」
とりあえず、と振ってみた世間話は心のATフィールドによって見事に跳ね返される。
うん、これは今まで接したことないタイプだ。
そのまま私に背中を向けてスタスタと離れていくその子に難しい子もいたものだな、と思わず息を吐いた。
「ていうかオールマイトさんどこいったの…。」
先程まで煙を出しながらHAHAHA…と取材を受けていた親代わりの姿を視線で探しながらそんなことを呟いて、ボロボロのスマホを見る。
…うん、明日にでも新しいの貰いに行こう。
スマホないと不便だし。
遠くから聞こえてきた救急車のサイレン音を聞きながら、そんなことを決意した春の日だった。