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その毒牙にかかる
おなまえは?
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“アンタは、毒だ。”
そう言われたのは、もう何年前の話だろうか。
当時お気に入りだった人達の記憶を操作する直前に呟かれた一言。
あの時の彼らの顔を思い出して頬を緩めれば、腰に回っていた手が私の背中を撫でた。
「弔、いい加減離してくれない?」
「離すと思うか?」
「…思わない。」
いつもは隠されている顔が今日は顕になっている。
その頬に手を添えれば近づいてくる顔。
この男はいつの間にそんな事を覚えたのだろうか。
そんなことを考えながら、そのがさついた唇に自身の人差し指を押し当てた。
「…なに。」
「残念だけど、子供には興味無いの。」
「もう子供じゃねェし。」
「ふふっ、私にとって弔はいつまでも子供だよ。」
私の背中に回る彼の手からスルリと抜け出し、先程もらった紙を指先でつまむ。
“ 雄英高校事務員 募集 ”
随分と懐かしい学校名は、かつての私の母校。
「…こんなの、よく見つけましたね?」
「苦労したよ。…だからこそ、失敗は許されない。」
「失敗したら殺されちゃいますね、私。」
「君にとっては最高の仕事だ」
「…さすがは先生、私のことをよく分かっていらっしゃいますね。」
意思に反して口角が吊り上がる。
まさか私がまたあの学校の中に入る日が来るなんて思わなかった。
しかも講師陣の中には、かつて私のお気に入りだった彼らの名前。
先生のことだ。
これすらも計画範囲内、なのだろう。
「名前、弔のために…君が雄英高校に入って内側から壊してあげてほしい。」
「もちろん、大切な弔のためなら。」
「よく言うよな。俺の愛には答えないくせに。」
不貞腐れたように顔を背ける弔の顔を両手で優しく包み込む。
その鈍く光る赤い瞳は昔から変わらない。
この世界を憎む綺麗な顔は、私の好きな顔。
先生が拾って育てた弔は想像以上に綺麗に歪んだ。
私と違う、純粋な悪。
「可愛い弔に、手は出せないよ。」
「…俺が望んでるのに?」
「それは一時の気の迷い。貴方にはもっと素敵な人が現れるから。」
きっとその人は私よりも綺麗な悪を持って、貴方の事を優しく包み込んでくれる。
私は、その重荷は背負えない。
「その代わり、今回は私の力を貸してあげる。」
「…嬉しそうだな。」
「まぁ…楽しみではあるかな。」
“だってあの子達に会えるから。”
私がそう呟けば、弔は不服そうにその顔を歪めた。
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