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秋雨前線
おなまえは?
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暖かい風呂場から出れば脱いだはずの服が全部消えていて、代わりに真新しい下着とグレーのスウェットが置いてあった。
まさか俺が風呂に入っている間に買いに行ったのだろうか?
そんなことを考えながら服を着て、スウェットが微妙に小さいことに思わず頬を緩めた。
「なァ、これ小さくねェ?」
「私が着たら結構ブカブカだから大丈夫かなと思ったけどダメでしたね。」
「まぁ濡れてるのよりマシだから、いい。」
「あはは、ありがとうございます。」
ちょいちょいと呼ばれそちらに歩いていけば、目の前に置かれる赤いマグカップ。
そこから甘い匂いがフワリと香り、自然と伸びた手でそれを持ち上げればとても温かかった。
「チョコレートで作ったココアです。」
「ここあ…?」
「甘くて美味しいですよ。」
さりげなく促され、絨毯の上に座りソレを飲む。
確かに甘くて美味い。
そう思いながらココアを飲んでいれば後ろから手が伸びできて、俺の濡れた髪をタオルでわしゃわしゃと包み込んだ。
「髪の毛、くせっ毛なんですね。」
「あァ…変?」
「いえ、可愛いと思いますよ。」
「かわ…?」
「はい。フワフワで可愛いです。」
この俺に可愛いなんて言うのはお前くらいだ。
そう言いたいのに、髪を拭いていくその手が変に心地よくて次第に瞼が重くなっていく。
なんだか、ひどく懐かしい感覚がする。
「ご飯、適当に作りますけど食べますか?」
「ん…。」
「嫌いなものとかありますか?」
「ん…。」
「あれ、聞いてますか?」
「聞いてる…。」
真上から降ってくる言葉にコクリと頷きながら手の中にあるココアを飲みほす。
早く帰らねェとまた黒霧がうるせぇだろうな。
そう思うのに足は根を張ったかのようにぴくりとも動かなかった。
「あの…?」
「…眠ィ。」
「え…あ、お布団使いますか?」
「……お前さ、危機感とかねェの?」
「え?」
普通は名前も知らない男に自分のベッド使わせないだろと呆れつつ、指さされたベッドへと潜り込む。
よく考えればコイツは出会った時からそうだった。
危機感なんてもの皆無で、ニコニコと笑って俺の事を受け入れる。
それが心地よくて、むず痒くて、もう会わないと決めても次の日にはあの公園に向かっていた。
「…おやすみなさい。」
「ん…。」
最初から危機感なんてものがあったら俺となんか話もしないだろう。
そんなことを考えながら、俺の意識はゆっくりと落ちていった。