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秋雨前線
おなまえは?
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仕事の帰り道。
駅から歩いて10分くらいの所にある公園。
そこにある公園に、その人はいつもいる。
「こんばんは。」
「…暇人だな、毎日。」
「あはは、私もそう思います。」
すぐそこにベンチがあるにもかかわらず、何故か花壇を囲うレンガに座り込んでいるその人の少し離れた場所に腰を下ろす。
フードを深く被り、何をする訳でもなくただソコにいるだけの不思議な人。
そんな傍から見たら怪しい人の隣に座って星が光る空を見上げる。
それが、ここ1.2週間で出来た私の習慣だった。
「あ、今日はチョコレートを買ってきました。新作のカフェモカ味ですって。」
「かふぇもか…?」
「甘いコーヒーみたいなものです。」
「なんでチョコなのにコーヒーの味にすんだよ。」
「えぇ…それは私じゃなくてお菓子メーカーさんに聞いて下さい。」
そう言いながらお菓子の箱を差し出せば、いつもポケットに突っ込まれている手がその箱を掴む。
それからボリボリとチョコレートを噛む音が辺りに響いて、なんだか心地が良かった。
「…チョコレートの味の方が美味い。」
「あはは、じゃあ明日は普通のチョコレートを買ってきますね。」
「…明日は来ない。」
「でも一応、持ってきます。」
何がキッカケだったのか覚えていない。
たまたま仕事の帰り道に寄ったこの公園でこの人と出会い、こうして話すようになった。
お菓子を渡すと文句を言いながら食べて、少し話したら唐突に立ち上がって去っていく。
“もう来ない。”
毎日そう言って居なくなるのに、次の日ここへ来てみればいつもと同じようにここに居る。
「(なんだか不思議な人だ…。)」
今日の分のお菓子を食べ終えて立ち上がるその人の背中を見ながら心の中で呟く。
決してフードを外さず、自分についての話は絶対にしてくれない。
きっと一般の人ではない。
それだけは何となく理解出来ていた。
「帰る。」
「あ、はい。お気をつけて。」
「もう来ないから、お前も来んな。」
「分かりました。」
コクリと頷けばさっさと歩いていってしまう彼を見送ってから立ち上がる。
今日はいつもよりも星が少ない。
携帯で明日の天気を調べれば終日雨のマークが付いていて、そういえば雨なんて久しぶりだなと息を吐いた。
「明日は本当に来ないかもな…。」
よく分からないモヤモヤが私の中に広がった。
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