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君に別れの口付けを。
おなまえは?
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数年後…
壁も床も白い、小さな部屋。
机と椅子、そして眠るためのベッドがあるこの部屋は私にとって居心地の良いものになっていた。
ヴィラン連合がヒーロー達によって破られたのはつい先日…。
新聞には大きく “平和の象徴復活” の文字が出ていたと、看守が教えてくれた。
「246番、面会だ。」
「…そう、ですか。」
「お前が会いたがっていた人だぞ。」
看守にそう言われて、もう1ヶ月経ったのかと私はつい感慨深くなってしまった。
月に一度だけ面会に来てくれる彼は、私が人生で唯一愛した人。
「名前さん。」
「…いずく。」
オールマイトを継ぎ、新しい平和の象徴として世間に認知された彼。
出会った時は無個性で普通の男の子だったのに…今では人気者ヒーローだ。
「今日は天気がいいから中庭に行こう。」
「…そうだね。」
ヴィラン連合として戦い、死柄木達に裏切られ私は警察に捕まった。
その時の戦いであまり活動出来なくなった私は今では車椅子での生活。
だけどそのおかげなのか、いずくがNo.1ヒーローになったからなのか…。
私はいずくとの面会の時だけは建物の中を好きに動くことを許されていた。
「最近体調は?」
「うん、平気。」
「ご飯は?」
「ちゃんと食べてる。」
「…そっか。」
少しだけ安心したように微笑む、いずく。
出会った時から変わらない、優しい笑顔。
「…新聞見たよ。ヴィラン連合がとうとう捕まったって。…お疲れ様。」
「!… 名前さんにそう言われるのは、少し複雑だね。」
「そう?…最近は毎日新聞に載ってるから、看守さんが毎日見せてくれるの。」
「な、なんか恥ずかしいなぁっ…。」
少しだけ頬を赤く染めて、恥ずかしそうに眉を寄せるいずくに思わずクスクスと笑ってしまった。
なんだか、今日は気分が良い。
天気だからなのだろうか、
それともいずくが来てくれたからだろうか、
それとも…私の死期が近いからだろうか。
「名前さん…?」
「…ねぇ、いずく。」
「!うん、なに?」
「大好きよ、ずっと。」
「…うん、僕もだよ。」
「なら、幸せになるんだよ。」
「…もちろん、一緒に幸せになろう。」
「そうじゃなくて、私がいなくなったとしても気にしないで。…幸せになって。」
「!っ…うんっ…、君の望みなら…。」
振り向かなくても分かる。
きっと、いずくは泣いている。
だけどね、大丈夫。
だって、貴方が幸せになれるように私が神様にお願いするから。
あなたよりも先に向こうに行って、神様にお願いしてあげるから。
「(私の全てをあげるから、この人だけはずっとずっと幸せに過ごせますように…。)」
だから私の心臓が止まったその時には、今度は貴方が別れの口付けを。
END
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