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可愛くない後輩の話
おなまえは?
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個性を使った状態での作業はなかなかしんどい。
そんな事を思いながら必死に手を動かす私の横で、爆豪くんはジーッと私の顔を見ている。
・・・これも、いつもの事だ。
「そういえば・・・仮免取れたって本当?さっき、相澤先生が言ってた。」
「あ?・・・まァな。」
「おめでとう。」
「・・・あァ。」
「最初はビックリしたよ、爆豪くんと轟くんだけが落ちちゃったって聞いて。」
彼からの視線を気にしないように口を動かしていれば隣から聞こえる舌打ち。
無駄口叩く前に仕事しろってことだろうか。
分かってるよ!
分かってるけどこれが最速だよ!
そう思って眉を下げれば、今度は爆豪くんが私を見たまま口を開いた。
「そういうテメェはどうなんだよ。」
「え・・・?」
「・・・説明会、行ってきたっつってたろ。」
「あぁ・・・うん、楽しかったよ?自分の実力不足はガッツリ感じたけどね。」
そう言ってケラケラ笑えば、相手はムスッと不機嫌そうに眉を寄せる。
のに、いつもみたいに怒鳴ってこない。
・・・どこか、元気がないのだろうか。
「・・・爆豪くん、少し休憩してもいい?」
「あ゙?」
「お、お菓子貰ったの。いつも頑張ってるからってパワーローダー先生に。他の生徒には内緒でね?」
「・・・ガキか。」
「いっ、いいの!発明家っていうのは子どもみたいな豊かな感性が必要なんだから!」
手袋を外して個性も解く。
それから近くの棚をゴソゴソしていれば、後ろから見慣れた手が私の腰にギュッと巻きついた。
「・・・・・・へっ・・・?」
「黙れ。」
「ま、まだ何も言ってないのにっ・・・。」
口ではそんな事を言いながらも私の顔は今までにないくらいの熱を持ち始める。
爆豪くんが、いきなりハグっ・・・。
これは爆豪くんファンにバレたら私殺されるっ・・・。
「(ていうか・・・本当にどうしたんだろうっ・・・。)」
「・・・・・・。」
「ば、爆豪くんっ・・・?何かあったっ・・・?」
「・・・なんもねェ。」
「えええ・・・。」
何も無い、というのに腰に巻きついている手はさらに力を強める。
これはもしや新手の嫌がらせなのか。
そんな事を思いながら彼の手をポンポンと軽く叩けば、後ろの爆豪くんが私の肩口に顔を埋めた。
「ちょっ・・・////!?」
「テメェは・・・もう卒業すんのか。」
「えっ・・・?あ、うん・・・そう、だね?あと半年くらい、かなぁ?」
「・・・・・・俺は、あと2年ある。」
「う、うん・・・そう、だね?」
どうしよう爆豪くんの言いたいことが分からない。
なんだよ、いきなり。
卒業くらいするさ。
こちとら一応サポート科の首席だぞ。
あれか、自分より私が先に卒業することがムカつくとか言い出すのか君は。
さすがにそれは自分でもどうしようもないぞ。
そう伝えようとして身体を無理矢理に反転させれば、爆豪くんが驚いたような顔をして私を見ていた。
「し、新鮮だね・・・その顔・・・。」
「・・・テメェにはムードっつうもんねェンか。」
「へ・・・?」
「チッ・・・。」
ムード、とは?と首を傾げれば聞こえたいつもの舌打ち。
そして次の瞬間には、私の目の前で爆豪くんの赤い瞳がキラリと光っていた。
「んぅっ・・・!?」
「・・・3年だ。」
「さ・・・はっ・・・////?」
「3年で追いつく。それまで首洗って待っとけや。」
もう一度チュッ・・・とくっついた私と爆豪くんの唇。
満足そうにニヤリと笑った彼の綺麗な顔を、何が起きたのかも分からずただ見つめることしか出来なかった私。
あれから半年は怒涛のように過ぎて・・・雄英高校を卒業する時に、あれが私のファーストキスだったなとようやく実感した。