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可愛くない
おなまえは?
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“E7で待ってて。”
メッセージ画面に映し出されたソレを見て、少し迷いつつも指示通りの場所に向かう。
本来ならとっくに締め出されている筈の私がこうして体育館の中に残れているのは首にかけた関係者用のタグのおかげだろう。
「(こういう細かいところまで考えられてるあたりも変わらないな…。)」
及川さんがいなくなった座席に置いていかれていたタグを指先でいじる。
試合が終わってから30分以上は経っているし、そろそろ来るだろう。
そう思って顔を上げれば、関係者入り口から満面の笑みを溢す及川さんが現れた。
「お待たせ、名前ちゃん。」
「…おめでとうございます、試合。」
「あははっ、ありがとー。」
交流戦の勝利を祝う言葉を伝えれば相手は慣れたようにお礼を口にする。
高校時代にもよく見たその表情にムカついてそれじゃあ、と帰ろうとすれば相手は驚いたように私の腕を掴んだ。
「いやいやいやッ、ご飯行こうよ!」
「お忙しいと思うので。」
「今日はもう平気だからッ!むしろこのまま帰ったら俺チームメイト達に馬鹿にされるからッ!!」
「!…良いチーム、でしたね。バランスも良くて。」
「あ、でしょー!俺もそう思う!!」
“さすが俺!!” と何故かドヤ顔をするその人に思わず吹き出す。
この人は、何年経っても本当に変わらない。
策士で、バレー馬鹿で、子供みたいな人。
そんな及川徹という男だからこそ、私は今も心を奪われたままなのだろう。
「ご飯、行こう。」
「…はい。」
「それからお洒落なバーにも行こう。」
「はい。」
「美味しいご飯とお酒の後は、久しぶりに2人で一緒に寝よう。」
「!」
「ダメ?」
私が頷く、と分かっているかのように私の頬を撫でる及川さんから視線をそらす。
このままこの男に流されるのもどうなのだろうか。
そんな事を思いながら一歩だけ後ろに下がれば、相手の自信満々の瞳がゆらりと揺れた。
「も、もしかして恋人がいるっ…とか…?」
「え、あ、いえ…。」
「良かったァッ…!振られるかと思った!!」
「あ、でも旦那ならいます。」
「はっ!?!?」
「嘘です。」
「なんで今嘘ついたのッ!?」
“相変わらず可愛くないッ!!” なんて叫びながら私を抱きしめる及川さんにクスクスと笑う。
相変わらず可愛くない、なんて言いながら及川さんの顔は嬉しそうに緩んでいる。
好きな人が変わらない、という事実に喜んでしまうのは私でもこの人でも変わらないらしい。
「及川さん、美味しい天ぷら屋さんの予約をしておきました。」
「天ぷら!!」
「お洒落なバーは、まぁ探してみましょう。」
「名前ちゃんセレクトのお店ならどんな所でも俺は文句ないよ!」
「あと一緒に寝るのは嫌です。」
「えッ!?そこ一番大事じゃない!?」
「しっかり休むのもプロの務めですから。」
「うん、相変わらずいやっていうほど冷静だよね名前ちゃんって!!」
「…おかえりなさい、及川さん。」
「!…本当に、可愛くない恋人だよ。」
“ただいま、名前ちゃん。”
私の耳元で囁かれた言葉に私は柄にもなく泣きそうになって、その大きな背中に腕を回した。
END.
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