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可愛くない
おなまえは?
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ザワザワとざわつく人混みの中を黒尾さんに貰ったソレを握りしめながら歩く。
アルゼンチンのリーグチームと日本のリーグチームとの交流戦。
そのチケットの中に及川徹の名前を見つけて、わざわざ有給を使ってしまった私は単純としか言いようがないだろう。
「チケットお持ちですか?」
「あ、はい。」
入り口でチケットを出し、半券をポケットにしまいつつ体育館の中へと進む。
おそらくバレーボール協会だというコネを使って手に入れたであろうチケットはネット横の最前列。
出来ることなら後ろの席にしてくれよ、なんて思ったけど後の祭りだ。
「(それに…私だって気付く筈もない。)」
席について、観戦用の眼鏡をつける。
仕事を始めて一気に落ちた視力のせいで、今はこれがないと少し遠くのものもよく見えない。
それからウォーミングアップをする選手達を見回して、想像していた姿がない事に息を吐いた。
「まだ来てないのか…。」
「誰が?」
「誰って、及川と…おる……!?」
「久しぶり、名前ちゃん。」
隣から聞こえた声に反応して視線をズラせば、記憶の中より少しだけ大人びたその人が私の隣でニッコリと笑っていた。
ざわつく周りの観客なんて知らんぷりで。
私だけを見つめて笑うその男に、私は今回もしてやられたのかと私の脳は瞬時に理解した。
「…また、私だけ知らなかったパターンですか。」
「烏野高校のチビちゃん覚えてる?あの子が日本のバレーボール協会に知り合いがいるっていうからお願いしたんだ。」
「…何がしたいんですか。」
「んー…それはご飯でも食べながら話そうよ。まずは俺の試合、観てて。」
それだけ伝えると周りの人達に手を振りながら去っていく及川さんに相変わらずだと呆れる。
根回しした、どころではない。
私が日本バレーボール協会に勤めている事を知り、そこへの伝手を探し、わざわざチケットまで用意した。
相変わらず、策士という言葉がよく似合う男だ。
「…ていうか試合前に何してんだか。」
ついポロリと出た本音に頬を緩める。
久しぶりの日本だろうし、美味しい天ぷら屋さんにでも連れて行ってあげようか。
そんな事を思いながらコート上に姿を現したその男の背中の数字を見つめた。