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可愛くない
おなまえは?
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カーテンから差し込む光に目を開けて、懐かしい夢を見たなと身体を起き上がらせる。
高校生の時の、甘酸っぱい思い出。
「…昨日のテレビのせいだな。」
昨日の夜、たまたまつけたテレビで久しぶりに彼の名前を見た。
海外で活躍する日本人、なんてありきたりな宣伝文句と共に映し出されたその姿は相も変わらず綺麗なトスを放っていた。
「あ、食パン切らしてたんだっけ…。」
卒業式を終えた男は、そのまま外国へと旅立った。
私たちの仲を知っていた後輩に一緒に空港で見送ろうと誘われたけど丁寧に断って、それから彼とは連絡も取っていない。
私達の関係は、あの日に終わったのだ。
「おいおい、朝っぱらから辛気臭い顔してんなァ。」
「…おはようございます、黒尾さん。」
「嫌な夢を見た、とかァ?」
高校を卒業してからふらふらと色々なことに手を出した結果、私は日本バレーボール協会に勤めることになった。
本当はバレーボールから離れようと思っていたのだが、流れに身を任したのが問題だったらしい。
おかげで及川徹という男の存在を忘れたくても忘れられないし、及川徹並みに性格が歪んでいる先輩が出来てしまった。
「苗字、昨日のテレビ観た?」
「…観てません。」
「及川クン出てたね?」
「観てません。」
「元恋人が世界で活躍なんてスゴイねェ?」
「喧嘩売ってるなら買いますけど?」
ニヤニヤしながらそんな会話を続ける黒尾さんをギロリと睨む。
するとそんな私すらも面白いらしいその人は自身の口角を更に上へと吊り上げた。
「怒った?」
「怒ってないように見えますか?」
「ごめんねナマエチャン、お詫びに良いこと教えてあげるから許してくれる?」
「!…嫌な予感しかしないので結構です。」
それだけ呟いて逃げるように背中を向けた私の襟元をその長い手を使ってガシリと掴むムカつく先輩。
なんなんだ、と睨みつけても緩まないその手に舌打ちをこぼせば相手はケラケラと楽しそうに笑った。
「苗字は本当に正直者だね。」
「お褒めいただき光栄です。」
「うんうん、そんな正直者にはこれをやろう。」
そう言って差し出された長方形の紙には、夢の中で笑っていたその男の名前が書かれていた。