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可愛くない
おなまえは?
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高校2年の終わり。
桜なんてまだ咲いていなくて、綺麗な青空と綺麗な新緑が私の視界に広がっていた。
「…今、なんて言いました?」
「だからぁ、卒業したら海外に行くんだ。」
「……卒業ーーー。」
「卒業旅行じゃないよ、あっちに住むの。」
“隠しててごめんね。” と笑うその人に何も言えなくなり開きかけた口を閉じる。
卒業したらと言っても、卒業式は明日だ。
「…他の皆さんは知ってるんですか?」
「うん、知ってるよ。」
「……知らなかったのは、私だけですか?」
「うん、そうだよ。」
出会った時から不思議な人だとは思っていたけど、今日ほどそれを実感した日はない。
私の記憶違いでなければ私とこの及川徹という男はいわゆる恋人同士というやつで、お互い特別な存在のはずなのに。
…私だけが、この人の進路を知らなかった。
「(どうりで進路の話をしない訳だ…。)」
周りにも口止めをしていたのだろう。
私も、深くは詮索しなかったし。
きっとそれすらもこの男は想定していた、なんて漫画みたいでカッコイイかもしれない。
「名前ちゃん。」
「帰ってくるまで待ちます、なんて可愛いことは言いませんよ。」
「!」
「私は私のやるべき事をやります。」
「…うん。」
「及川さんも同じです。」
「…うん。」
「…きっと、大丈夫です。貴方が及川 徹であり続ける限り、出来ないことは存在しません。」
「!…うん。」
“いってきます。”
いつもはギャンギャンとうるさいその人が静かな声でそう呟いて。
くるりと背中を向けたその後ろ姿に、私は大きく息を吸い込んだ。
「いってらっしゃいっ…!!」
少しだけ振り向いた彼の口角はいつもよりも遠慮がちに上がっていた。
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