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HAPPY HALLOWEEN
おなまえは?
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(田中龍之介 × 同級生)
私のクラスには凄い人がいる。
何が凄いのかって言われると困るけど、とにかく、なんか凄い。
「こら田中ァ!!」
「やべぇ見つかったッ…!」
「また馬鹿やってんなァ、田中のやつ。」
「本当、馬鹿だよなぁ龍は。」
声が大きくて、目付きが鋭くて、なのにお友達が沢山いて、バレーボールが好き。
同じクラスになって2年目なのに、私が知っている彼の情報なんてこれくらいだった。
…ついこの間までは。
「苗字!また英語教えてくれッ…!!」
「あ、うん。いいよ?」
「助かる!!やっぱり持つべきものは優しいクラスメイトだぜ!」
「あはは、大袈裟だよ。」
2年に上がって少しした時、授業が終わった後にいきなり彼に声をかけられた。
どうやら赤点回避のためにテスト勉強をしているらしいのだが、英語だけは教えてもらえる人がいなかったらしい。
同じバレーボール部の縁下くんとか頭良かったイメージだったけど…なんて言ったらアイツは鬼だから無理だと何故か怯えていたのを覚えている。
「…あ、そこ。そこは今日の授業で教えてもらった文法を使うからね。」
「あ、そうかッ…!クソッ…!」
最初は彼が悪態をつく度にビクビクしていたけど、今ではすっかり慣れっこだ。
彼は彼で最初は何故か顔を真っ赤にしたり突然固まったりしていたけど…後から聞いたら人見知りをしていたんだと教えてくれた。
それがまた可笑しくて笑ってしまった私を田中くんは笑うな、なんて言いながらその目を優しく細めてくれたのだ。
「(あんなの…好きになるなって方が無理だよ…。)」
友達に相談したら趣味が悪いとか、もったいないとか言われたけど…。
私の目は既に色眼鏡というものをかけているらしく、彼以上にカッコイイと思える人は存在しない。
「(でも、言えないよ…。)」
「…なぁ、一つ聞いてもいいか?」
「あ、なに?」
「Trick or Treatってあるだろ、ハロウィンの。」
「うん。お菓子をくれなきゃ悪戯するぞっていうハロウィンの常套句だよね?」
「最近よ、Trick but Treatって言うの見つけて、何が違うんだろうなってノヤっさんと話してたんだよ。」
“ 苗字なら分かるか?” と首を傾げる田中くんに一応は分かると頷く。
にしてもTrick or Treat が主流のこの世の中で、どこからそんな言葉を見つけてきたのだろうか。
ハロウィンが近いし、その手のドラマとかかな?
なんて考えつつ自分のノートにTrick but Treatと書き込んでいく。
そんな私の文字をジッと見つめる田中くんに少しだけ頬を緩めながら、その訳を下に書き足した。
「Trick but Treat はね、お菓子をくれても悪戯するぞって言う意味。」
「!…なら逃げ場ねェじゃねぇか。」
「ッ…あはは!確かに、これ言われちゃったらもう悪戯されるしかないもんね!」
“逃げられないや!” と笑いながら呟く。
この文章の訳を聞いて逃げ場がない、なんて感想が出てくる田中くんは純粋だと思う。
この文章は恋愛ドラマとか、女性を口説くための文句みたいなものだけど…確かにその訳だけ聞いたらそう思うのかもしれない。
「あ、のよッ…!」
「え、なに?」
「と、とりっくばっと、とりーとッ…つったら苗字も俺に捕まってくれる、かッ…?」
「……え?」
「に、逃げられねぇなら捕まるしかねェだろ!?それならいっそ苗字も大人しく俺に捕まってくれよって思っただけだッ…!!」
「!」
ポカン…と口を開けて固まる私に、田中くんが顔を真っ赤にして叫ぶ。
その瞬間だけ周りの音が止んで、居心地の悪いような良いような無音が暫く続いた。
「え、と…つ、捕まえてくれるなら…ぜひ…?」
「!ッ……いよっしゃァァアッ!!!」
ガタンっと田中くんが立ち上がって叫んだ瞬間、周りから物凄い歓声が湧き上がる。
そういえばここは教室で、周りにはクラスメイト達が沢山いたんだった。
そう考えたら顔中に熱が集まり、これが夢であればと心の底から思ってしまった。
「苗字悪いッ…俺ついッ…!」
「う、ううんッ……わ、私こそッ……。」
お互いに真っ赤になった顔と、周りから聞こえる祝福の言葉達。
本来ならばハロウィンはまだ1ヶ月先であることを田中君に伝えるべきなんだろうけど…。
今はとりあえずこの幸せを噛み締めておこう。
そんなことを思った、9月末の日。
HAPPY HALLOWEEN 田中龍之介ver.