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ぐんぐん大きくなーれ!
おなまえは?
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一番最初はまだ飛雄が7歳の時。
自分の誕生日が来て私と同い年になれるまであと少しだと意気込む飛雄に、その差は一生縮まらないと教えてあげたのがキッカケだった。
何年経っても追いつけないと泣き始めた飛雄に、年齢は無理でも身長なら追いつけると自分のお小遣いで買った“ぐんぐんヨーグル”をプレゼントした。
それから毎年、飛雄の誕生日にはそれを買って渡すのが恒例になって…彼が中学に入ってからは紙袋1個分渡すようになった。
飛雄は昔ほど大袈裟に喜んではくれないけど、毎年キラキラした目で見てくるから内心はきっと嬉しがってくれている筈だ。
「にしてもさ、ぐんぐんヨーグルって本当にぐんぐん大きくなるんだねー?」
「?」
「効果があるって飛雄で証明されたし、将来はCMとか来ちゃうんじゃない?」
「…俺、バレーのプロ選手になる以外の未来は考えてないっスけど。」
「うん、だからプロのバレーボール選手としてCMに出るの。皆もこれを飲んで影山選手みたいに大きくなろう!って。」
そう言ってクスクスと笑えば飛雄の目元が緩む。
日向君たちは飛雄の事を怖いとか仏頂面だとか言うけど、私の目には昔のままの可愛い飛雄に見える。
可愛くて、純粋で、バレーボールが大好きで。
こんな可愛い幼なじみがいるなんて、私の人生はきっと恵まれている。
「(けど…それも今年で終わりだ。)」
「名前さん…?」
「飛雄、お誕生日おめでとう。」
「え…はい、さっきも聞きましたけど…。」
「大きくなったね、本当に。」
「!… 名前さん?」
「もう、ぐんぐんヨーグルは要らないね。」
「!!」
驚いて目を見開く飛雄の頭に手を伸ばして、その柔らかい黒髪をクシャリと撫でる。
あぁ、寂しくなるな。
もうこの可愛い飛雄の頭を簡単に撫でることは出来なくなるなんて。
「飛雄、私ね…京都の大学に行くんだ。」
「!きょ…うと?」
「うん。東京よりも更に西寄りの、大阪の近くって言えば分かるかな…?」
「お、大阪の近く…。」
「だから宮城にはなかなか帰って来れない。」
「で、でもまだ受験前でーーー。」
「誰に言ってるのかな、飛雄くん。」
“これでも学年首席だぞ?” と笑えば飛雄の顔から明らかに血の気が引いていく。
まさか私が自分から離れていくとは思っていなかったのだろう。
当たり前だ。
今まで飛雄の事を可愛い可愛いと愛で続けて、家族同然の顔をして傍にいたのだから。
「な、なんでわざわざ京都なんスか…!?」
「やりたい事があるの。そのためには京都の大学に行くのが手っ取り早いから。」
「ッ……。」
「だから、私からのぐんぐんヨーグルは今年でおしまいね。こんなに大きく逞しくなった飛雄なら私も安心して離れられる。」
校舎からチャイムの音が聞こえる。
そろそろ飛雄のことをバレーボール部に返さなければいけないだろう。
そう思って一歩踏み出した瞬間、私の腕が飛雄の男らしくなった大きい手に勢いよく掴まれる。
そのままグイッ…と引っ張られ、気がつけば私の視界は飛雄の真っ黒いジャージでいっぱいになっていた。
「俺は、ずっとずっと名前さんのこと追いかけて来たんですよ…!」
「飛雄…?」
「だから、これからも追いかけます!貴女が何処にいてもずっとずっと追いかけて…!いつか貴女を俺のものにしてみせます!!」
「!」
“覚悟しといてください、名前さん!”
そう言って抱きしめられた身体は暖かくて、いつか私の隣に追いついた彼に捕まる日が楽しみだ…なんて心の中で呟いた。
2020.12.22 【 Happybirthday 影山飛雄 】
END.
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