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ぐんぐん大きくなーれ!
おなまえは?
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毎年、この日になると俺は待ち構える。
あの人が今年もアレを持ってくるだろうと。
いつも通りニコニコ笑って、紙袋いっぱいのソレを持って俺の前に現れて。
そして紙袋を突き出してこう言うのだ。
「ぐんぐん大きくなーれ!飛雄!」
「あれ、影山がぐんぐんヨーグル飲んでねぇ!」
「…いいんだよ、今日は。」
「なんで!?なんで今日はいいんだ!?まさか影山また身長伸びたのか!?」
「違ぇよ。」
「決まってんじゃーん、今日は12月22日…。王様の誕生日だからだよねぇ?」
「おい月島ァ、その王様呼びいい加減やめろって言ってんだろうが…!!」
わざと喧嘩を売るようにニヤニヤ笑う月島の胸ぐらを掴んで揺さぶれば隣から山口の制止の声が掛かる。
それでも胸ぐらを掴んだまま離さずに相手を睨み続けていれば、さらに隣にいた日向が何かを思い出したように大きな声を上げてみせた。
どうやら思い出したらしい。
俺が何故、今日に限ってはぐんぐんヨーグルを飲んでいないのかを。
「そっかそっか!今日は影山の誕生日か!それならあの人が来るもんな!」
「!…まぁ、来るか分かんねェけどな。」
「とか言って期待してるくせに。」
「ツッキーそれ以上影山煽るのやめなって!」
「はいはい、山口に注意されなくてもこれ以上は言わないよ。」
“だから離してくんない?” と睨み返してくる月島に舌打ちを零して、その胸ぐらを掴んでいた手を離す。
最後の授業が終わってからまだ15分。
体育館には俺たち2年生4人だけで、まだ他の生徒たちは来ていない。
どうやら1年生は臨時の集会中で、マネージャーの谷地さんは顧問の武田先生に呼び出されているようだ。
「でもよォ、今年は苗字先輩も受験前だし忙しくて忘れてんじゃね?」
「あー…確かに、縁下さん達が今週末に最終模試あるとか言ってたもんね。」
「いや、苗字さん模試前だからとか気にするタイプじゃないでしょ。」
「あはは、確かに。頭は良いけど本能で生きてるタイプだもんね苗字先輩は。」
当事者である俺を放置して盛り上がる3人を横目にボールを取り出してコートの端に立つ。
ごちゃごちゃ言われたせいで不安になってきた。
もしかしたら彼女が来ないかもしれない。
そんな不安やら寂しさやらを吹き飛ばすためにボールを上へと放った瞬間、閉じられていた重い体育館の扉が勢いよく開いた。
「飛雄ーーッ!!!」
《!!》
「お誕生日おめでとう私の可愛い飛雄ーッ!!」
俺を見つけて走り出した彼女の足元にはいつものようにパンパンの茶色い紙袋。
そこから覗いているいつもの青いパッケージに頬を緩めた時、俺の腕の中に彼女が飛び込んできた。
「ぐんぐん大きくなーれ!」
「…うス。」
“もう既に貴女よりは大きいです。”
毎年この日が来たら言おうと思うその言葉を、俺は今年も言えそうにない。
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