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自分勝手
おなまえは?
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コトリ…と出されたお茶を見て、それを持ってきた人を見上げる。
なんだか見た事のある顔だ。
そう思った私の心を読んだかのように、春水さんが彼女の名前を教えてくれた。
「伊勢七緒ちゃんだよ。覚えてるかな?」
「…七緒?」
「はい、お久しぶりです… 名前さん。」
“相変わらずお綺麗ですね。” なんて言って笑うその子に、つい感嘆のため息が口から零れる。
私が知っている七緒は小さくて、無理矢理抱っこをすると顔を赤くして顔を埋めてくる可愛らしい子供だったのに。
目の前に立っているその人はもう立派な大人の女性と言った感じだ。
「…私の方が年下みたいだ。」
「そうかい?」
「長いこと現世にいたから…年齢を見た目で判断する癖が付いちゃったかな。」
「!…そうか、現世に。」
そう言って頷いた春水さんを見て自分が口を滑らせたことに気がつく。
この人の前ではつい口が緩む。
だからこそ1番に警戒しなくてはいけないのに…いきなり七緒という爆弾を投下されたせいで頭が働いていなかった。
「七緒ちゃんは浮竹を呼んできてくれるかい?後始末に手こずっていたら手伝ってあげて。」
「分かりました。…あ、隊長。名前さんに手を出したら許しませんからね。」
「!」
「あはは、大丈夫。どっちかって言ったら名前ちゃんは可愛い妹分だからね。」
「… 名前さん、何かあれば外の誰かに声をかけてくださいね。」
「あ、うん…ありがとう七緒。」
私が頷いたのを確認して出ていく七緒にヒラヒラと手を振る春水さん。
この人…どうやら女関係については七緒からも信用されていないみたいだな、うん。
まぁ派手好きで優しくて強くて顔も整っていて…これでモテない方がおかしいし、その手の問題も少なくないのだろう。
「本当に…モテる男は厄介ですね。」
「そう思うかい?」
「思いますね。」
「そうだなァ…でも、名前ちゃんの彼氏は僕なんかの比じゃないデショ?」
「!…どうですかね。」
ピクリと反応してしまった指先を誤魔化すように目の前のお茶に手をつける。
だから嫌なのだ。
ふわふわと適当そうに見えて核心を突いてくる。
「(さすが、何百年も隊長してる人は違う。)」
「彼には会ってないのかい?」
「…答えません。」
「ずっと待ってたよ、彼。浮いた話しなんて1度も出たことないし…君の名前が出る度に落ち込んで、あまり見れた姿じゃなかったな。」
「……。」
「…うん、ごめんね名前ちゃん。今の言い方は少し意地悪が過ぎた。」
無言でお茶を見つめる私に春水さんが小さく呟く。
本来ならば今すぐにでも拘留されるべきである私を自分の隊舎に匿ってくれている。
それだけでも私からしたら十分すぎるのに、この人は昔のように私を甘やかす。
この人になら、全部話してもいいのではないかという錯覚にまで陥るのだ。
自分で止めると決めたのに、自分よりも強いこの人の手を借りたいと願ってしまう私は弱い。
「…十四郎さんが来たら、話す。」
「!… 名前ちゃん?」
「話せることだけ。…それ以外は話さない。」
“あと、助けてくれてありがとう…春水さん。” と頭を下げた私の頭を春水さんは昔のように優しく優しく撫でてくれた。