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幕間
おなまえは?
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浦原喜助から連絡が来て苗字が連れて行かれたと聞いた時、俺の心は案外冷静だった。
「…まァ、そうなるわな。」
“…アタシが不甲斐ないせいですみません。”
「何言っとんねん、お前のせいちゃうわ。」
“ですが……。”
「苗字は覚悟を決めた上で会いに行ったんや。そんで、連れて行かれた。…それだけの話や。」
そう呟けば電話の向こうで息を吐く音が聞こえる。
俺よりも苗字 名前という死神を知っているこの男のことだ、俺が言いたいことも理解はしているのだろう。
「…とにかく、コッチも動き出さなアカンな。」
“ 名前さんは必ず助け出します。”
「当たり前や。苗字は俺たち仮面の軍勢(ヴァイザード)の大切な仲間…見捨てたりしたら俺がお前の首を切り落としたるさかい死ぬ気で取り返しや。」
“そうッスね…死んでも取り戻します。”
プツリと切れた通話。
最後に聞こえたアイツの言葉に、いつもの適当さも緩さも感じなかった。
苗字に幼馴染というより妹に近い感情を向けているアイツが平気な訳が無い。
それでも冷静に頭を働かせられているのは浦原喜助が技術者であり天才だからであって、自分が同じ立場に立たされたら決して平常心ではいられないだろう。
「…難儀なやっちゃなァ。」
「……今の電話、浦原の野郎からか?」
「盗み聞きは泥棒の始まりやで、拳西。」
「それを言うなら嘘つきは泥棒の始まり、だろ。」
いつの間にか後ろにいたソイツに呆れつつ持っていた携帯をポケットへとしまう。
空には綺麗な三日月が浮いていて、その月明かりがいつもよりも眩しく感じた。
藍染惣右介達の逃亡。
自分達が思い描いていた最悪のシチュエーションに世界が転がり始めている。
自分の中のその僅かな焦燥感も、隣の男には手に取るように伝わっているだろう。
「… 苗字、連れていかれたのか。」
「そうみたいやな。」
「だから止めとけっつったのに…。」
「なんや拳西、苗字おらんくて寂しいんか?」
「あ?…その言葉、そっくりそのままテメェに返してやるよ。」
そう言って踵を返す拳西に唇を尖らせながら文句を言えばギロりと睨み返される。
どうやら彼女が連れていかれたことを聞いて不機嫌なのは間違いないらしい。
なんだかんだ面倒見のいいこの男は苗字のことも可愛がっていたし…。
何も言わずとも心配はしていたのだろう。
「苗字のことはアイツらに任せといたらエエ。俺たちは俺たちのやるべき事をやるだけや。」
「そんな事言ってよ…、苗字が連れて行かれたなんて知ったらひよ里のヤツまた暴れんぞ。」
「…アカン、殴られる未来しか見えん。」
「…ま、テメェの顔面はテメェで守れよ。」
“俺は聞かなかったことにする。”
そう言ってさっさと居なくなる拳西に、相変わらず俺に対しての人情は薄いヤツだと少しだけ頬を緩めた。
続
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