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守りきれなかったもの
おなまえは?
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「卍解…?」
「平子隊長から習得したって聞いたよ。」
「あぁ、うん。まだまだ調整は必要だけどね。」
「…僕に教えなかったのはわざとかな?それとも忘れていただけ?」
「もちろん、わざとだよ?」
「!何故、と聞いてもいいのかな…?」
「そんなの…惣右介が私に始解すら見せてくれないから仕返しに決まってるじゃん。」
そう言って名前が楽しそうに笑ったのはまだ僕達が副隊長をしていた時代だった。
僕の鏡花水月は、始解の発動を見せることで相手を完全催眠下に置くことが出来る。
だからこそ、愛する彼女にだけは始解を見せないように細心の注意を払って生活してきた。
任務が被らないように根回しをしたり、見たいと騒ぐ彼女をあの手この手で宥めたり…。
それだけの犠牲を払ってでも、彼女を僕の催眠下に置くことだけは避けてきたのだ。
「…だから、この目で君の卍解を見ることが叶うとは思わなかったよ。」
「ならその目に焼きつければいい。私の卍解を見るのはきっとこれが最後だから。」
「…そうか。なら、名前も聞いておこうかな?」
「…金剛九尾(こんごうきゅうび)玉藻前。」
フワリと浮いた彼女の身体からはみ出ているのは彼女の周りで吹く風に靡く白金色の尻尾。
おそらく9本あるであろうそれと彼女が持つ始解時よりも少し大きくなった鉄扇が、彼女という存在を人以外のナニかなのでは思わせた。
「はぁ…これはまた、派手な卍解やなァ。」
「あぁ、本当に…とても綺麗だね。」
「藍染様、ここは私がーーー。」
「要、余計な手出しは無用だよ。」
一歩前へと出かけた部下を止めて、チラリと倒れている旅禍の少年を見る。
この卍解も、彼らを助けるためだと思うと少しばかり腹立たしい。
が、それでもいい。
彼女が僕だけのものになる日はすぐそこだ。
「!…どうやら邪魔が入りそうだ。」
「は…?」
「名前、少しだけ待っていてくれるかい?…すぐに終わらせるよ。」
そう呟いた瞬間、目の前にドンッ…と現れたのは七番隊隊長の狛村左陣。
珍しく顔を隠していない彼が振り下ろした刀を手で受け止めながら、この場を早めに片付ける方法を考えてみた。
もちろん斬魄刀は使えない。
名前に始解を見せることになってしまうから。
ならばやはり鬼道で済ますべきだろう。
「聞いているのか藍染ッ…!!」
「あぁ、もちろんだ。…だが、残念ながら残されている時間が少なくてね。」
「な゙ッ…!?」
「…破道の九十、黒棺。」
あぁ、集中力が足りなかった。
いつもよりも威力の落ちたソレを見つめながら小さく息を吐く。
それから少しずつ集まってきている他の死神達の霊圧に、彼女と話すのはアチラにいってからでも良いかと口角を少しだけ吊り上げた。
「(さぁ、そろそろ全て終わらそう。)」
向き直った彼女は僕の奥で倒れていく狛村を見て顔をしかめている。
そんな顔すらも独り占めしたい、と言ったら彼女はどんな顔をするだろうか。
そんな事を考えながら未だに阿散井君の隣で彼を支えている朽木ルキアへと手を伸ばした。