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重なった手の平
おなまえは?
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サラリ…と流れる髪を手のひらで掬う。
あの頃と変わらないその柔らかな髪に口付けを落とせば閉じられていた瞳がゆっくりと開いた。
「…起きたかい?」
「……そう、すけ…?」
「そうだよ。」
「………夢、かな…。」
「どうして、そう思うんだい?」
「…惣右介のこと、私が置いてきたから…。」
“少しいじめ過ぎた。” と口角を上げてみせた市丸を追い出した後だからか、彼女と自分しかいない部屋はひどく静かに感じた。
まるで周りの時間が止まっているかのような…そんな不思議な錯覚を振り切るように、未だに虚ろな目をしている彼女に軽く口付ける。
そのひんやりとした唇はひどく心地がよかった。
「惣右介…?」
「名前、何も考えなくていい。僕だけを見て生きてくれればいいんだよ。」
「…また、甘やかすの?」
「あぁ…そうだね。名前を甘やかすのが僕の趣味みたいなものだから。」
彼女の頬を撫でようと伸ばした手に彼女の小さな手が重ねられ、そのまま握りしめられる。
おそらく寝惚けているのだろう。
まるで僕の腕の中にいたあの頃のように甘えてくる彼女の姿に、自分の頬がユルユルと緩んだ。
「名前、僕のことを今でも愛しているかい?」
「…当たり前でしょ。」
「なら、僕についてきてくれるかい?」
「……嫌だって言ったら、置いていく?」
「そうだね…。もし嫌だと言われたら無理矢理にでも連れていくよ。」
“だから、一緒に行くと頷いてほしい。”
重ね合わさった手を強めに握りしめて、彼女の上へと静かに覆い被さる。
百年ぶりに見下ろす彼女に自分の身体がゾクリと反応したのが分かった。
不思議だ。
この百年もの間、彼女以外の女性達を相手する度に思っていた。
自分の身体は彼女以外に反応しない。
どんなに美人でも、どんなに良い身体をしていても彼女の魅力には敵わない。
「… 名前。」
「んッ……。」
「綺麗だね…百年前と何も変わらない。」
適当な相手を選んで、記憶の中の彼女を重ね合わせて抱いてみても満たされなかった。
そんな自分の腕の中に今、本物の彼女がいる。
その頬を撫でて、汗で髪の毛が張りついている首筋に口付けを落とす。
それだけで、自分の中が懐かしい何かで満たされていくのを実感できた。
「惣右介の匂い…落ち着く…。」
「!… 名前、あまり煽らないでくれ。久しぶりだから優しくしたい。」
「ぁッ…そうすけッ…?」
「大丈夫、僕に全部委ねて…。昔みたいに、僕だけを見て感じればいい。」
額、頬、首筋、と口付けを落としていけば強ばっていた名前の身体から少しずつ力が抜けていく。
この綺麗な肌に他の男の印がなくてよかった。
もしそんなものがあったら、その皮膚を切り取って燃やしたとしても収まらないだろう。
「(あぁ…想像しただけでも憎たらしくなるな…。)」
「ぃたッ…!?」
「これは勝手に離れた名前へのお仕置だよ。」
「んッ…ごめ、ッ…。」
彼女の鎖骨に赤く刻まれた歯型をなぞるように舐めれば、彼女の身体がビクリと跳ね上がる。
あぁ、悪くない。
彼女の身体を撫で上げながら、百年ぶりに色鮮やかに輝く世界をその目に焼き付けた。