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その時が来る
おなまえは?
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立ち塞がる組員らしき奴らを伸しながら目の前を走る黒いマントを追う。
が、どうも逃げ足の速いソイツはスタミナもあるようでなかなか距離が縮まらない。
このままでは私の方がスタミナ切れで追えなくなってしまう。
そう思った私は殴りつけた組員の1人を掴みあげ、前を走るソイツに向かって投げつけた。
「な゙ァッ…!?」
「!?」
「っし、ストライク!」
“バッターアウト!” なんて叫びながら投げた組員の下敷きになっているソイツに近づく。
それから痛みで身動きを取れていない男の腕を掴んでマントを捲れば、黒いカラスと赤い椿が姿を現した。
「伊弦 竜二さん、ですね?」
「ぐッ…!」
「お兄さん…太一さんから貴方がここにいると聞いてきました。」
「あ、兄貴からッ…?あんたプロヒーローじゃないのか!?」
「ヒーローですよ。」
「はッ…?なら何で兄貴から…!?」
「貴方を探していた時に知り合いました。」
「俺をッ…?」
「単刀直入に聞きます。貴方の個性で人をタイムスリップさせることは出来ますか?」
私がそう言い切った瞬間、伊弦竜二の顔が強ばる。
これは心当たりのある顔だ。
そう考えて口を開こうとした一瞬の隙に、伊弦がナイフを取り出して振りかぶる。
それに気づいてギリギリで後ろへと飛び退けば、自分の上で気を失っている組員を押しのけた竜二がゆっくりと立ち上がった。
「まさかアンタもかッ…!」
「は…?」
「まさかアンタも過去の俺にこの時代まで飛ばされたって言うつもりなのかよッ…!」
「!」
「ふざけんなッ…!俺にそんな個性はねェ!!」
「何、言ってーーー。」
「お袋の個性も持ってんのは兄貴の方だ…!」
その言葉に思わず目を見開く。
この男は何を言っているのだろうか。
そう頭では思っているのに、身体から力が抜ける。
黒いマントの男と、伊弦兄弟。
黒いカラスと赤い椿はあるのに、この男の雰囲気はあの時の男とはあまりに違いすぎる。
「ッ…分かったらさっさとーーー。」
「!」
一瞬緩んだ私から逃げ出そうとしたソイツの腕を蹴り上げナイフを弾き落とす。
それから地面に押さえつけて他の武器がないか確認をすれば何やら変な針先のついた銃弾が出てきた。
「!(これ、会議で見た個性を消すっていう…。)」
「おいやめろ返せッ…!それは兄貴用に若頭から譲って貰ったんだ…!!」
「兄貴用ッ…ってまさかアンタ伊弦太一の個性を消すつもり!?」
「そうだよッ…!アイツのせいで俺はお前みたいな変なやつに襲われそうになる!!なら個性を消しちまえばいい!!」
「でもこれは一時的にしか個性消せないんじゃ…?」
「はッ…!それは完成した本物が入ってんだ!出回ってるパチモンと一緒にすんじゃーーー。」
“ねェ!!” と言う前に首元へ手刀を入れてソイツを気絶させる。
幸いな事に後ろから倒した組員を回収してくれる捜査官達が来ているし、コイツはこのまま放置しよう。
そう考えてから取り出したスマホを弄り“伊弦太一”の名前を表示させた。
“もしもし…?苗字さん?”
「…伊弦太一。」
“え?はい、そうですけど…。”
「見事に騙されちゃったよ。本気になればアカデミー賞も夢じゃないんじゃない?」
“!…あはは、それならそのまま一生騙されてくれていれば良かったのに。残念ですよ。”
「今どこにいるの?会いに行ってあげるよ、受賞祝いの花束でも持ってさ。」
“そうですねぇ…会いたいのは山々なんですけど、会えないんですよ。
だって、もうお別れですから。”