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幸せ者
おなまえは?
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あの日、俺と名前は朝からどうでもいい事で口喧嘩をしていた。
明日は2人とも休みだし今日の夜は久しぶりに外食をしよう、なんて話から始まって。
ラーメンが食べたいと言った名前に、たまには別のものを食べたいと俺が文句を言って。
「ラーメン行かないなら外食もしない!!」
「好きにしろ。」
「消太の馬鹿!!」
「……。」
いつものようにギャンギャンと怒る名前を無視して仕事に向かって。
一仕事終えて事務所に帰る途中で連絡が入った。
隣の駅でヴィランが暴れている。
たまたま近くを見回っていた名前が対応中だから念の為に応援に行ってほしいと。
前科もない若いヤンキー男が起こした“銀行強盗”だと電話越しで聞いていた。
だから俺の応援は必要ないだろうとだけ伝えて電話を切った。
「いつもなら応援に行ってた。たとえ名前と喧嘩をしていようが何しようが…いつもならすぐに現場に向かってたんだ。」
「…消太。」
「あの日に限って、俺は選択を誤った。たかが銀行強盗だからと侮って…。」
「消太。」
「事務所に戻ってすぐ、連絡が来た。名前が、搬送された病院で息を引き取ったって。1人だと思われていた銀行強盗は5人いて、そいつら全員を行動不能した時にはもう…名前の身体は限界をむかえていたと現場にいた警官に言われた。」
「消太、こっち向いて。」
「俺が…俺があの時ーーーー。」
「消太…!!」
バチンっという音を立てて俺の両頬を名前の温かい手が包み込む。
相変わらず力技だな。
そう思いながらも罪悪感と後悔で顔を上げられない俺に、名前は大きく息を吐く。
そしてそのまま無理矢理変えられた視線の先で、名前が不機嫌そうに唇を尖らせていた。
「消太のせいじゃないよ。単に私が実力不足だっただけだし、本当にヤバかったならすぐにでも助けを呼ぶべきだった。」
「…いやーーー。」
「消太は信じてくれたんだよね、私が当たり前のように勝てるって。」
「!」
「消太はいつだって、私の強さを1番に信じてくれていたから。だから、私は嬉しい。」
“ありがとう、消太。”
いつの間にか目から流れ出したソレを名前の指が優しく掬いとる。
傍から見たら30歳のオッサンが女子高生相手に涙を流している、なんてよく分からない状況だが…今だけは許して欲しいと心の中で呟いた。
名前が死んで10年…。
俺にとっては長すぎる10年だった。
「名前…、頼むから、死ぬな…。」
「うん。」
「俺は…俺には、お前が絶対に必要だって分かってんだろうが…。」
「うん。」
「だから、頼むから…。」
「うん…死なない。約束する。」
“生きて、消太の隣でまた笑うから。”
名前のその言葉は、いつもよりも優しく俺の鼓膜を揺らした。