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おなまえは?
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帰りのタクシーは静かなものだった。
運転手は無言でハンドルを握っているし、隣の消太は行きと同様に目を閉じている。
「(それに…私の心も穏やかだ。)」
本当は朝から心臓がうるさかった。
もし会いに行った伊弦が私を飛ばした張本人だったら私は今ごろ元の時代へと戻っていただろう。
そうなったら隣で寝ている消太はどうなってしまうのだろうか。
そう思ったら落ち着かなくて、朝起きてからも気分が晴れることはなかった。
「……。」
「…帰してやれなかったな。」
「!…起きてたの?」
「あぁ。」
「…別にいいよ。私もまだこの時代でやりたいことあるし。」
「やりたいこと…な。」
「知りたい?」
「知りたい、って言っても教える気ねぇだろ。」
「おお、さすが分かっていらっしゃる。」
「当たり前だ。何年一緒にいると思ってる。」
「あはは、熟年夫婦みたいだねそれ。」
思わずクスクスと笑えば、隣の消太が不機嫌そうに唇を尖らせる。
それが可愛くてさらに頬を緩めればミラー越しに私たちを見る運転手と目が合ってしまった。
会話の内容と私たちの見た目が釣り合っていないからだろうか。
その顔はどこか訝しげだ。
「(今の消太と私じゃ恋人同士にも見えないか…。)」
「…体育祭の映像、明日でもいいだろ。」
「!…いいけど、急にどうしたの?」
「どうもしてない。」
「ていうか行きのタクシーも起きてたの?」
「普通に考えてあんなにうるさくされてたら寝れるもんも寝れねぇだろ。」
「まぁ…確かに。」
あの運転手さん強烈だったもんな。
そう思ってコクリと頷けば、今度は消太の方が少しだけ頬を緩める。
どうやら運転手さんに圧倒されていた私を思い出して可笑しくなってしまったらしい。
「いつもは振り回す側だからな。」
「んー…振り回してるつもりないんだけどなぁ。」
「無自覚は1番タチが悪いぞ。」
「そんなこと言って、私がいないと寂しいくせに。」
「まぁ…静か過ぎるのも落ち着かないからな。」
そう言ってくすりと笑う消太の横顔が私の時代の消太と重なる。
そういえば、私の時代の彼や他の皆はどうしているだろうか。
私がいなくなって少しは寂しがってくれていたら嬉しいな。
「(…なんて、不謹慎かな。)」
「…どうした。」
「ううん、なんでもない。」
まだ当分は帰れなそうだし、私の時代の消太にはもう少し寂しい思いをしていてもらおう。
そして私の大切さとか実感して、いざ帰った時に甘やかしてもらうのもありかもしれない。
「ふふっ、楽しみだなぁ。」
「…なんでもいいが、その緩みきった顔で生徒たちの前に出るなよ。」
「分かってるって。」
→ To be continued.
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