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おなまえは?
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入れ直したお茶を私たちの前に置き、自身も元の椅子へと腰掛ける。
そしてゆっくりと話し始めた伊弦の言葉に私と消太は思わず顔を顰めた。
「弟…?」
「はい。…まぁ弟とは言いつつも俺と同い年の、一卵性双生児ってやつです。」
「双子の弟、ってことか。」
「信じられないと思いますが事実です。
名前は伊弦 竜二。右腕に赤い椿の刺青があります。」
赤い椿、という単語に息をのむ。
確かに双子であれば同じ場所に同じ模様で刺青を入れていても納得はできる。
背格好や声が似ていることも一卵性双生児というならば辻褄が合う。
「…個性は、なんですか?」
「…俺達の個性はテレポートです。と言っても俺は半径100mくらいが限界です。」
「俺は…ということは弟は違うのか。」
「はい。弟は俺よりも個性が強くて、確か500mくらいまでなら可能だったと思います。」
そう返した伊弦の顔に動揺などは見られない。
おそらく嘘はついていないのだろう。
「(けど…アイツの個性がテレポートだとしたら私はどうして未来に飛ばされたんだろう…。)」
「……。」
「…あの…?」
「…時代を、越えさせることは出来るのか?」
「は…?」
「ちょ、イレイザー!」
「弟の個性で、人間を未来の時代に飛ばしたりすることは出来るのかって聞いてんだ。」
ポカンと固まる伊弦を見て、慌てて消太の言葉を止めようと手を伸ばす。
が、消太はそんな事も気にせず言葉を続けるものだから私がその口に自身の手のひらを押し付けた。
「す、すみませんっ…!今のは忘れて下さい!」
「…未来に、ですか…。」
「あの、本当に今の質問は気にしないでーーー。」
「不可能ではない、と思います。」
「「!!」」
「…俺達の両親はいわゆる個性婚ってやつでした。テレポートは父親の個性で、母親の個性は時間操作です。といってもほんの1.2分で…その個性も俺らには発現しませんでした。」
“けど…。” と呟いて俯く伊弦に小さく息を吐く。
個性の発現は遅くても4.5歳まで。
しかしごくたまに発現した個性が思っていた個性と仕組みが異なる場合がある。
テレポートだと思っていた個性が、もし時間を操作することで成り立っていたとしたら…。
「弟とは俺が捕まってから一度も会っていません。何処にいるかも分からなくて…。」
「…わかった。仕事中に悪かったな。」
「いえ…俺、感謝してるんです。あのときイレイザーヘッドさんに捕まったおかげで今こうして真っ当に生きられてるから。
だから、少しでも役に立てたのなら嬉しいです。」
「…別に俺だけの手柄じゃない。それに模範囚として努力したのはお前だ。」
「(おお…消太ってばツンデレってやつだ。)」
「あはは、俺なんてまだまだです。」
「(こっちはもう普通に良い人だ…。)」
ガタリと立ち上がる2人につられて私もぬるくなったお茶を飲み干してから立ち上がる。
おそらくこれ以上の成果は期待できないと考えたのは消太も同じらしい。
その視線が私に帰るぞ、と訴えていた。
「あ、最後に一つ聞いてもいいですか?」
「はい、なんですか?」
「弟さんってカラスが好きだったりしますか?」
「!…カラス、ですか?」
「はい。」
「…いえ、むしろ嫌いだと思います。」
“嫌な奴らを思い出すから…。”
そう呟いた伊弦の顔は今までよりも苦しそうな辛そうな、よく分からない顔をしていた。