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おなまえは?
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「お茶どうぞ。あ、あとお菓子も。」
そう言ってお菓子の入った器を机に置くその人にパチパチと瞬きを繰り返す。
消太が隣でお茶を飲み、それを見てから相手も自分のお茶に口をつける。
その右腕には確かに椿の刺青が入っていた。
「(けど…。)……違う。」
「え?」
「…椿の色が違う。」
「!…えと…?」
困惑したように眉を寄せる相手から視線を外して隣の消太を見る。
すると消太も相手を見てから私へと向き直った。
「…違うのか?」
「違う。」
「…そうか。」
「え、あの…?」
「…確か、伊弦(いげん)…だったな。」
「あ、はい。伊弦 太一です。」
「お前のその刺青、いつからだ。」
「え?えっと…俺が15歳の時からなのでもう10年以上前、ですね。イレイザーヘッドさんに捕まった時にはもう彫り終わってました。」
それがなにか?と首を傾げるその人はパッと見では元ヴィランだと思えないくらい爽やかだった。
少しオドオドはしているものの受け答えはハッキリしているし、怪しい動きもない。
刑務所では模範囚だったという校長先生の話も、こうして本人を見たら納得が出来る。
…本当に、別人のようだ。
「(けど…。)」
「名前…?」
「…その椿の刺青って、元から白色でしたか?昔は色を変えていたとかありませんか?」
「え、色…ですか?」
「はい。」
纏う雰囲気は全く違うのだが、体格と声は少しだけ似ている気がする。
それに右腕に椿の刺青なんて、探してすぐに見つかるものでもない。
そう思って聞いてみたものの相手は首を横に振っただけで、私の求める返答は返ってこなかった。
「(やっぱり別人なのかな…。)」
「…お前の個性について聞きたい。たしか随分と珍しい個性を持っていた気がするが…?」
「!…よく知ってますね。」
「捕まえた後に小耳に挟んだんだ。」
「なるほど。もしかして今日ここに来たのも個性についての話、ですか?」
「だとしたら、何だ?」
「いや、なんでだろうなぁと思いまして…。」
何故か答えを渋る伊弦をギロリと睨みつける消太。
一瞬だけピリついた空気を黙って見守っていれば次の瞬間、伊弦がケラケラと場違いな笑いを零した。
「すみません、少しふざけ過ぎました。」
「……。」
「そ、そんな怖い顔で睨まないで下さいよイレイザーヘッドさん。」
「イレイザー、まずは話聞こうよ。」
「…分かってる。」
「…それで、話して貰えるんですよね?」
ここからは私が相手だと言わんばかりに身を乗り出せば伊弦は驚いたように目を見開く。
どうやら私が主導するパターンは想像していなかったらしい。
少し悩むように下を見たあと、ソイツは私の顔を見てコクリと頷いた。
「さっき椿の色の話をしてましたよね?」
「え?まぁ…はい。」
「もしかして探しているのは右腕に赤い椿の刺青が入った男、なんじゃないですか?」
「!…どうして、そう思うんですか?」
「刑務所にいる時、同じように椿の刺青をしている男を探しに来た人がいましたから。」
「!」
「お茶、もう一杯入れてきますね。ここから先の話、結構長くなると思うので。」
そう言って立ち上がった伊弦の顔は心做しか先程よりも暗く歪んでいた。