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出会いは桜の木の下で。
おなまえは?
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雄英高校入学式。
そう書かれた看板を素通りする。
時計をみれば集合時間まであと1時間。
なかなか早めについてしまったな、と息を吐いた。
「…散歩でもして時間つぶそ。」
校舎内には入らず、外を歩く。
時々目が合う人達は在校生だろうか?
なんだか注目されていて嫌な気分だ。
そう思って、私は木の影でその姿を猫へと変えた。
「(これなら大丈夫でしょ。)」
雄英高校内に猫がいる、それはそれでレアだけど。
きっとさっきよりは注目されることも無い。
そんな事を考えながら歩き続けていれば見えた1本の大きな桜の木。
…なんて綺麗なのだろう。
吸い寄せられるように近づいて、ヒラヒラと落ちてくる花弁に手を伸ばした。
「(あ…今こっちの姿だったんだ…。)」
自分の視界に入った肉球に息を吐く。
忘れてた。
そう思って人間に戻ろうとした時、私をジッと見つめる人影に気がついた。
「……。」
「……?」
「!」
コテン…と首を傾げれば、ピクリと反応するその人。
よく見れば私と同じ雄英高校の制服だ。
…つまり、この人も学生。
「(個性使ってたのバレたら怒られるよな…。)」
「……。」
変わらない距離。
ジッと私を見るその人は、何を考えているのか分からない全くの無表情。
そんな時間が過ぎていくことに耐えられなかった私は小さくにゃあ、と鳴いてみせた。
「……近づいて、いいのか…?」
「…にゃあ。」
「……俺を見て逃げないなんて、お前は人懐っこいんだな。それともどこかの飼い猫か?」
私を怯えさせないようにゆっくりゆっくり近づいてくる男子生徒。
そしてあと1m、という所でしゃがみこむ。
なるほど、この男かなりの猫好きだ。
この少しの時間だけで感じる猫への愛情。
「(…人間だって、言い出せない。)」
「…今日はおもちゃ持ってないんだ。入学式だから、仕方なく置いてきた。」
「……にゃあ。」
ゆっくりと伸ばされる手。
本当ならここで逃げても良かったのだが、なんだか真剣な顔が可愛くて…しょうがないな、とその手に顔を擦り寄せた。
「!……可愛いな、お前。」
「!っ……にゃあ…。」
ふわりと笑った、さっきまで無表情だった男。
嬉しそうな顔で私を見つめて、その大きな手で私の頭を何度も優しく撫でる。
ヒーローを目指すのに雑念は要らない。
そう決めてきたハズなのに、私の中に感じたことのないむず痒い感情が溢れてきた。