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1番近い。
おなまえは?
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事務所を立ち上げる時、たまたま紹介されたのが名前ちゃんだった。
俺みたいに飛べる子がいい・・・なんてワガママを言っていた俺は、羽も生えていないその子に最初は微塵も興味を持てなかった。
「苗字 名前です。」
「名前ちゃん、可愛いねぇ?」
「は?・・・あ、えと・・・それ関係あります?」
「!アハハっ、随分と素直な子なんだね。」
可愛いと微笑めば女の子は喜ぶ。
そう思っていたから、その子の怪訝そうな顔は俺にとって新鮮そのものだった。
「俺のサイドキックなら飛べる子がいいんだけど、名前ちゃんなら飛べなくてもいいや。」
「・・・何がいいのか分からないですけど・・・普通に飛べますよ、私。羽で・・・ってことなら無理ですけど。」
「え・・・、飛べるの?」
「個性が風なので。」
“見ますか?” と首を傾げて、自分の身体をフワリと浮かすその子に思わず目を見開く。
風を起こせるとかなら見たことあるが・・・自分を飛ばせるほど風を操れるとなれば、なかなかの強個性だ。
なんでこんな子が俺の事務所に入ってくれる気になったのだろうか。
そう思って聞いてみれば、相手は少しだけ頬を緩めながら口を開いた。
「めんどくさいしがらみとか無さそうじゃないですか。私そういうの面倒なんです。」
「!・・・その気持ちなら俺も分かるよ。」
「あー・・・でしょうね?なんか、ホークスさんの顔みたら分かります。」
「そっか。じゃあ名前ちゃん、これから宜しくね。」
「!・・・よろしく、お願いします。」
俺が差し出した手を彼女が握り返すことは無かったけど、そんな彼女も面白くて・・・。
その日から彼女は俺の一番のお気に入りになった。
「(なのに・・・辞めちゃうんだよなぁ・・・。)」
「・・・あの、そんな風に私の顔見ていても一緒には出掛けませんよ?」
「名前ちゃんって仕事以外では俺と一緒に出かけてくれないもんね。」
「当たり前です。変な噂が立つと面倒なので。」
そう言いながら棚の物をダンボールに入れていく名前ちゃんの後ろ姿を見つめる。
3年と半年・・・自分でもアピールはしていたつもりだったが、どうにも進展しない。
もちろん何人かの女性達と噂になっている自分も問題ではあるが、俺のアピールに靡かない彼女が悪い・・・なんて考えてしまう。
これでも年頃なのだから、誘われたらワンナイトくらいしてしまうのは許して欲しい。
「(・・・なんて、自分勝手過ぎるかな。)」
「ホークスさん?」
「ん?」
「・・・夜ご飯も食べていきますか?」
「あぁ・・・うん。唐揚げが食べたいな。」
「はいはい。本当に鶏肉好きですね。」
「うん、名前ちゃんの次に好き。」
「!・・・そりゃどーも。」
「(信じてないって顔だ、これ。)」
彼女が俺の元から居なくなるまで残り3週間。
どうにか手を打たなければな・・・なんて思いながら、俺は再び作業を始めた彼女を見て息を吐いた。