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嵌められた兎
おなまえは?
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コンコン…と扉を叩けば、小さく返事が聞こえる。
それを確認してから扉を開けば、返事をしたであろう女性が私に向かって小さく頭を下げた。
「お待ちしておりました、名前様。」
「く、涅副隊長…その様付けは止めていただけませんか?上司に様付けされるのはちょっと…。」
「…ですがマユリ様の妻となる方ですので。」
「ま、まだなるって決まった訳では無いので…!」
「……分かりました。では名前さん、と呼ばせていただきます。」
そう言って私に背を向け奥へと進んでいく涅副隊長に続いて部屋の中へと入る。
最初こそ技術開発局なんて未知の場所だと怖くて震えていた足も、今では慣れたものだ。
あのマッドサイエンティストの涅マユリ隊長に騙されて身体に爆弾を装着されてから早1ヶ月…。
2.3日に1回は仕事終わりに呼び出され、こうして技術開発局まで会いに来ている。
「(マユリ隊長が何を考えているのか、私にはさっぱり分からない…。)」
「マユリ様、名前様が到着されました。」
「(様付けに戻ってる…。)」
「遅いヨ。一体どこで寄り道をしてきたのかネ?」
「す、すみません。帰り際に急患が運ばれてきたので少し残って処置を…。」
「急患…?そんなのは放っておけば良いだろう。」
「よ、四番隊隊士にそれ言います…?」
「ホゥ…何か不満でもあるのかネ?」
手に持っていた書類を机に置いてコチラをギロリと睨むマユリ隊長にブンブンと首を振る。
この目は口答えするな、の目だ。
そう考えてそのまま口を閉じていれば、相手は満足そうに笑って視線を書類へと戻した。
「では名前様、何かあればお声がけください。」
「あ、はい。いつもすみません、涅副隊長。」
「いえ。」
ペコリと頭を下げた涅副隊長が部屋を出ていく。
本当はずっとそばにいて欲しい。
そうは思うものの口に出来ないのは、彼女が私よりも目の前のこの男の言う事を聞いてしまうと分かっているからだ。
「…お茶、入れましょうか?」
「……。」
「…入れますね。」
部屋の隅に置いてある湯のみと急須を使って2人分のお茶を入れる。
無言は肯定。
これもこの1ヶ月で学んだ教訓。
1度返事がなかったため放置していたら数分後に何時になったら持ってくるのだと怒られた。
その当時は返事をしなかったじゃないか、なんて思ったけど…良く考えれば人を非難することを生き甲斐としているような相手だ。
嫌味のひとつも飛んでこないことの方が少ない。
「(なんて考えられるようになった私は随分と洗脳されてきていると思う…。)」
まぁそんなこと、この人の前では言えないけど。
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