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おかえり、世界
おなまえは?
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名前を初めて見たのは、太陽が沈む前…空がオレンジ色に染まった夕暮れ時だった。
先生に連れてこられた公園で、彼女は1人…砂場で何かを作っていた。
「……キレイ…。」
「…弔、あの子の事が好きかい?」
「す、き…?」
「あぁ、分からないなら言い方を変えよう。…あの子が欲しいかい?」
「!……欲しいっ…。」
今考えれば、先生は名前が1人で遊んでいることを知っていたのだろう。
そして…そんな彼女のことを俺が気に入る事も。
「弔、欲しいなら自分の手で掴まないといけないよ。欲しいと口に出すだけで待つなんて…そんな事は弱い人間がやる事だ。」
「……自分で…。」
「そうだよ。…欲しいなら、邪魔なものを壊して手に入れればいいんだ。」
“君には、それが出来る力がある。”
そう言って微笑んだ先生に俺は1週間悩んだ。
その間、俺は名前の事だけを考え…何としてでも手に入れたいという欲望を育て続けた。
1週間が経ち…俺は前と同じ夕暮れ時にあの公園へと向かった。
名前は、1人じゃなかった。
「パパっ!ママっ!これ名前が作ったんだよー!」
「おお、凄いな名前!」
「本当!さすが私たちの子ね!」
自分の両親に褒められて笑う名前の笑顔は、俺の乾いた心を掴んで離さなかった。
…欲しいものは邪魔なものを壊してでも手に入れる。
あの子が、欲しい。
そのためには、隣にいるアイツらが邪魔だ。
「先生…、名前…が欲しい…。」
「……なら、行こうか。」
先生は俺を名前の家に連れていった。
夜の闇に紛れて入り込んだ家の中で、俺は名前を見つけ歓喜した。
だけどその声に名前の両親が起きてきたから、俺は名前の目の前でそのうるさい両親を壊した。
「… 名前は、…僕のだっ……。」
手を伸ばしてその子の頬に触れれば、それはフワフワとして柔らかかった。
不思議なことに…制御出来ていなかった個性が、名前の前では出来た。
次の日、名前は俺の事を忘れていたけど…俺は名前がそばに居てくれるならそれだけでよかった。
「…ずっと一緒にいてくれる…?」
「うん!」
俺の手を握って笑う名前。
その手から伝わってくる温もりが、俺の全てだった。
…この温もりさえあれば、自分は生きていけるんだと子供ながらに理解したのだ。
「…俺は、欲しいものは手に入れる。邪魔なもの全部壊しても… 名前だけは。」
そう呟けば、目の前にいた黒霧は自分の目を少しだけ細めて頷いた。