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監禁生活6日目
おなまえは?
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家まで送ると言ってくれたオールマイトさんに大丈夫だと断って街中を1人で歩く。
無事に乗り切った私を誰か褒めてくれ。
そんなことを考えながら、僅かな記憶を頼りに歩き続けていれば何とかたどり着いた今の生活拠点。
トガちゃんを探し出すよりコッチの方が早いと思って戻ってきたのだが、入ってもいいのだろうか?
「…失礼します…。」
キィィッ…とゆっくり扉を開けば中には誰もいない。
誰もいないのに鍵が開いているなんて不用心では無いだろうか…なんて思いながら中に入れば、昨日と同じように目を閉じて眠っている雄英の男の子がいた。
「うわぁっ…本物だっ…。」
「触ってはいけませんよ。」
「!く、黒霧さんっ…!」
興味本位で眠っている彼の髪の毛に手を伸ばせば、後ろから突然聞こえた声。
それに驚いて勢いよく振り向けば、黒霧さんがいつものようにカウンターの向こう側に立ってコチラを見つめていた。
「ずいぶんとお帰りが早かったですね。出掛けた先で、何かありました?」
「い、いえっ…トガちゃんとハグれちゃって…戻ってきてないかなって思ったんですっ…。」
「なるほど。…何か飲みますか?」
「あ…えと、お水を…。」
雄英の子から離れてカウンターの椅子に腰掛ける。
オールマイトさんのことがバレたら、私はどうなってしまうのだろうか。
…ふと、そんなことを考えた。
「…あの、弔さんはまだ帰ってきませんか?」
「えぇ…おそらく夜には帰りますよ。」
「そう、ですか…。」
「何か、お悩みですか?」
コトリと私の前にお水の入ったグラスを置いてそう尋ねてくる黒霧さんに、少し悩んでから頷く。
もちろん余計なことは言えないのだが…今のこのモヤモヤを誰かに話したい衝動に駆られていたのだ。
…幸い、黒霧さんなら私の個性のことも知っている。
そう思ったら、私の口は勝手に言葉を発し始めた。
「怖いんです…。」
「怖い?」
「私は…弔さんを助けたいのに…それをしたら私は悪い人になってしまいます…。」
「……。」
「黒霧さんやトガちゃんも、私には優しいけど…世間ではヴィランだから…私は、どうしたいのか分からなくて…。」
「…なるほど。」
カランッ…とグラスの中の氷が音を鳴らす。
こんなことを黒霧さんに言っても意味は無いと思う。
だけど、誰かに聞いて欲しかった。
今、私は人生を左右する場面にいるということを。
「…私は、名前さんが死柄木 弔の隣にいてくれたら良いと思います。アナタと居ると彼はよく眠る。」
「!ねむ、る…?」
「信じられないでしょうが、死柄木 弔は今まで熟睡することはありませんでした。…ですが、貴方が来てからよく眠る。それはとても喜ばしい事です。」
「…黒霧さんは、なんだかお母さんみたいですね。」
「子供を持った記憶はないのですが…死柄木 弔の面倒をあの方から任されていますから。」
あの方、とは…“先生”の事だろうか。
というより、そもそも黒霧さんは弔さんにとってどういう立場の人なのだろうか。
「(謎だ…。)」
「…あの方が仰っていた通り、名前さんの個性はとても素晴らしいものです。…だからこそ、悩みながら向き合う時間も必要不可欠です。」
「!…そう、でしょうか…。」
「はい。…納得する答えが出たら、教えて下さい。」
そう言っていつものようにグラスを拭き始める黒霧さんに、重かった私の心は少しだけ軽くなった気がした。