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唯一愛した男の話。
おなまえは?
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「なぁ、将棋ってさ…ようするに玉を奪ればいいんだよな?」
「そう単純じゃねぇぞ。」
「うん言ってた通り来たぜ、ハーイ!二人ともお疲れ!」
相変わらずうるさい周りのヤツらに小さく息を吐く。
こちらに向かってくるのは若様達を乗せた警察車両。
「名前は随分と静かだ…久しぶりに俺に会えたのに嬉しくないのか?」
「相手の男に本気で惚れたか?」
「主の前だから許すけど…次に生意気言ったら殺しますよ、荼毘。」
ギロリと睨めばわざと怖がるふりをするヴィラン連合の荼毘に舌打ちをする。
だからうるさいヤツは嫌い。
…あの人の傍は、静かでよかった。
「……。」
ふと唇に手を伸ばす。
…あの時の暖かさは、もう無い。
荼毘が炎を出し、車の動きを止める。
ヒーローらしき人物が食い下がってきたが、こっちは荼毘に主…そしてMr. が揃っているのだ。
敵うわけがない。
「殺しにきたのか…。」
車から引きずり出された若様は拘束具を付けられ、ベッドに縛り付けられていた。
ニヤリと笑う主。
「個性を消してやるって人間がさァ…個性に頼ってちゃいけねェよな…?」
主が触れて崩れていく若様の手…。
私は動くことも出来ずにその飛び散る血をただ見ていることしかできなかった。
「お前が費やしてきた努力はさァ!俺のもんになっちゃったよ!!これからは咥える指もなくただただ眺めて生きていけ!!」
「っ……!!」
「!あァ…そうだ…、コイツもちゃんと挨拶しておかなきゃな…?」
“ 名前。” と呼ぶ主に、若様の身体が少しだけ動いたのを私は見逃さなかった。
本当に…主はとことん性格が悪い。
「…こんにちは、死穢八斎會若頭。」
「っ…なんでっ… 名前がっ…。」
「馬鹿かよ…。コイツは一生俺のモノだ、騙されたお前は何者にもなれねェ…ただのゴミだ。」
「…主、そろそろ。」
「!…いくぞ。」
踵を返して車に戻る主と荼毘。
そんな2人に見えないように、私はその人へ手を伸ばした。
「これは、アナタへのお礼です。新しい気持ちを教えてくれた、アナタへの。」
「!っ… 名前っ……。」
切り落とされたところに手をかざせば、今さっきまで流れていた血が止まった。
そういえば若様に個性の話は1回もしなかったな、なんてどうでもいい事を思い出した。
「…若様、ワガママを言ってもいいですか?」
「!!」
「…私がこれから言うことは絶対に誰にも言わないでください。」
ペストマスクのない綺麗な顔に身体を近づけて、その唇に優しく口付ける。
そして耳元で静かに囁いた。
“一生、アナタだけに愛を誓います。”
「…別れのキス、か?」
「愛した人の裏切りなんだから、最後もエンターテイナーとしての仕事をしたの。こういうのMr. も好きでしょ?」
「そーかい。(…まぁ本人も苦しそうだし、今回ばかりはさすがに黙っておいてやるか。)」
これは、私が人生で唯一愛した男の話。
END
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