↓↓
唯一愛した男の話。
おなまえは?
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「死柄木は俺が開発した個性を消す血清とお前を交換すると言ってきた…。」
「!…そう、ですか…。」
「…お前はアイツのところにいるべきじゃない。俺がお前を正当に評価してやる。」
後ろから伸びてくる腕が私の身体に優しく巻き付き、背中がじんわりと暖かくなる。
あぁ、こんな暖かさ生まれて初めて感じる。
「私は…若様のそばにいていいんですか?」
「…あぁ。」
「こんな暖かさ、初めてです。」
「…あぁ、俺もだ…。」
私に触れても蕁麻疹が出ないのはなぜ?
こんなに暖かい気持ちになるのは、なぜ?
分からないことだらけなのに、このままでいいやと思ってしまうのは、何故なのだろう。
“こんな気持ち、主は教えてくれなかった。”
そう呟いた私の言葉にアナタは気付かないふりをして、再び私の唇を優しく塞いだ。
私が正式な死穢八斎會の組員になって数日…。
その日はなんだか変だった。
ザワザワ…と揺れる木々たちに、なんだか騒がしいなと心の中で呟いて私は縁側に出た。
「名前。」
「!…若様、いかがなさいました?」
「少し買い物を頼みたい。」
駆け寄った私を一度抱きしめて、私の髪にペストマスクのまま口付けを落とす若様にコクンと頷く。
クロノ様が少し離れたところに立っているが、若様はどこ吹く風といったところ。
あの日から若様と私は何度も身体を重ね、何度もお互いの熱を移しあった。
「…遠い、ですね。」
「あぁ…。だがどうしても必要なんだ。」
「分かりました、若様のためなら。」
「買い終わったら連絡しろ。帰りは俺が迎えに行けたら迎えに行く。」
「はい、分かりました。」
貰った紙をポケットに入れてペコリと頭を下げる。
そして背中を向けてから、やっぱりと一度振り向けば相手は少し驚いたように目を見開いた。
「若様、ワガママ言ってもいいですか…?」
「!…どうした。」
「…その、マスクを外して頂きたいのです…。」
「…何故だ?」
「ダメ、でしょうか…?」
肩を落としてうつ向けば少し躊躇ってから、私を近くの部屋へと招き入れた。
そのままゆっくり外されるマスク。
それが完全に外れるよりも前に、私は若様の唇に自分のそれを優しく重ね合わせた。
「!…どうした。」
「なんとなく…離れるので。」
「…少しの間だ。俺も所用が終わったら迎えに行く。」
「はい、お待ちしております。」
もう一度、もう一度…と、何度も重ね合わせてからゆっくりと離れる。
このまま溶け合って一緒になれたら、なんていうのは私の勝手なエゴなのだろう。
「それでは行ってきます…廻様。」
「!…あぁ。」
優しく頷くアナタに触れられるのは、きっとこれが最後だと…私だけが知っていたのは幸か不幸か。