色々な場所で聞こえる、戦闘音。

私の役目は終わったと、静かに息を吐いた。



「おい、名前。」

「！…荼毘、迎えに来たの？」

「あァ…。死柄木の奴がお前は必ず連れて帰れってうるさいからな。」

「…あっそ。」

「集合場所に行くぞ。」



ねぇ、焦凍。

貴方は今、どこかで戦っているのでしょう？

きっとヴィラン相手に、どうにか勝とうと頑張っているんでしょう？

それでいいんだよ。

貴方はヒーローなんだから。



「そして私は…ヴィランなんだから。」

《！！？》

「名前っ……？」

「Mr.コンプレス、標的は？」

「もちろん。」


そう呟いたと同時に、奥にいた障子が叫ぶ。


「いまの行動でハッキリとしたっ…！個性は分からんがさっき見せびらかしていた右ポケットに入っていたコレがっ！常闇・爆豪だなエンターテイナー！！」

「障子くんっ！！」

「ホホウ！あの短時間でよく…！さすが6本腕！まさぐり上手め！」


「でかしたっ…！後はお前だけだ名前っ！！」


走り出した焦凍が私に手を伸ばす。

あぁ、信じたくないんだね。

だから、貴方も見て見ぬふりをしたんだね。


「Mr.コンプレス。」

「はいはい、もちろん。君たち、マジックの基本を教えてあげよう。モノを見せびらかす時ってのは…トリックがある時だぜ？」



そう笑うMr. の口にある2つの玉に、焦凍や緑谷、障子は固まる。

本物のヴィランとは…こういうものだ。

性格が歪んでいて、自分の力を誇示したくて、それでいて…必ず油断する。


「Mr.コンプレス半歩下がって。」

「はい…？」


刹那、Mr. の顔をレーザーが掠める。

その拍子に飛び出した玉に、3人が同時に手を伸ばした。



「哀しいなぁ、轟 焦凍。」

「っ…！！」

「確認する。解除してMr. 。」

「っだよ今のレーザー…俺のショウが台無しだ！」


パチンっ…と指を鳴らしたのを合図に玉は弾け、荼毘の手が爆豪の首を掴んでいることを確認した。

これで、ミッションコンプリートだ。



「問題、なし。行くぞ、名前。」

「ま、待てっ… 名前っ…！」

「！」



ビクリと私の身体が揺れる。

あの日貴方の腕の中で消したはずの気持ちが、ゴポッ…と私の中で溢れたのがわかった。

あぁ、だから嫌だったのだ…こんな仕事。



ベリッ…と剥いだガーゼを地面に落とす。

…これが私だと、彼に見せるために。



「焦凍、貴方のキスは優しすぎたの。」

「！！」

「私を見て、焦凍。私はヴィランだよ。」



さぁ、いなくなれ。

貴方の中の…綺麗な私。