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ド天然My HERO
おなまえは?
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その日、私が働いているヒーロー事務所は猫の手も借りたいくらいに忙しかった。
来週に決まった他ヒーロー事務所との合同作戦や、ヒーロー達の健康診断。
それから我が事務所のエース、轟 焦凍のテレビ取材や雑誌取材の受付や原稿確認。
「苗字さんっ、◯◯出版社から雑誌インタビューの仮原稿届いてます!明日までに修正するとこTELしてくださいって!」
「わかった!私のデスク置いておいて!」
「苗字さん大変っ!テレビ取材の人達が密着するとか言い出してます!」
「無理だって押し通して!ヴィラン退治は見世物じゃないんだからって!それでダメなら電話変わって!」
「苗字さーんっ!!」
「今行くから待ってて!!」
私はこの事務所の事務長。
雄英高校時代に仲良くなった轟 焦凍に、独立するから一緒に来てくれと誘われ願ってもない事だと頷いた。
学生時代に垣間見えた彼の有り余るほどの個性や戦闘能力、そして人柄の良さ。
…どれをとってもトップヒーローに相応しい彼に私が向けたのは99%の羨望と、1%の恋心。
「(まぁ今となってはそんな淡い恋心すら良い思い出って感じだけどね…。)」
「苗字、忙しそうだな。」
「!おかえりなさい、焦凍君。」
「あぁ。」
「怪我は?」
「平気だ。」
そう言って拳を握る焦凍君に、そうじゃないと首を振って両手を広げさせる。
それから彼の周りを一周すれば左腕に見つけた裂傷。
彼が “してない。” ではなく、“平気だ。” という時は決まって小さな怪我をしている時だと気づいたのは事務所の始めてすぐのことだった。
「誰か焦凍君の手当てしてあげて!」
「あ、私やりますよ!」
「これくらい大丈夫だろ。」
「焦凍君のその変にワイルドな所、私は素敵だと思うけどもっと自分の身体も大切にしようね。」
「…わかった。」
コクリと素直に頷いてくれるのは、私への信頼の証。
彼の同級生達も数々活躍しているが、彼ほど素直で優しい人は思い当たらない。
「(あのデクでさえ頑固なところがあって大変だって前に何処かで聞いたことあるしな…。)」
「あぁっ!!」
「え、なに!?」
「今日のSNS忘れてましたっ…!」
焦凍君の手当てをしながらショックを受ける彼女は、確かSNS全般の管理と運営を任せていた子だった。
ヒーローは今や人気商売で、SNSはその人気に直結する重大な仕事の一つ。
だが今日は朝から事務所内が戦争状態。
忘れることも仕方がない。
「どうしましょうっ…!私これから別の仕事で会社出なくちゃいけなくてっ…!」
「私もまだやる事あるし…でもここで更新休むのは完璧王子として売っている焦凍君の名に傷をつけることになっちゃうっ…。」
“他に誰か!” と振り向いてみても、事務所の仲は相変わらず怒声と慌ただしい足音が響いていて頼めそうな人物はとてもじゃないが見当たらない。
やっぱり更新を諦めるべきか。
そう思って肩を落とせば、そんな私をジッと見ていた焦凍君がポツリと呟いた。
「俺がやる。」
「……え?」
「俺に任せろ、苗字。」
そう言って私の頭をポンポンと撫でた彼は、やっぱりヒーローなんだと笑ってしまったのは仕方の無いことだ。
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