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初恋の人
おなまえは?
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バシャァッ・・・とかけられた水に、その場の空気が凍りついたのが分かった。
・・・いや、本気で凍ったわけじゃないけど。
「(でもワインとかじゃなくて良かった・・・。)」
そんな事をのんきに考えていれば、次の瞬間にはその女の金切り声が私の鼓膜を揺らした。
「アンタみたいな尻軽女が私よりも焦凍さんに相応しいって言うの!?」
「っ・・・お前ーーー。」
「焦凍、いいから。」
「!」
ガタッ・・・と立ち上がった焦凍を制止してから、自分のハンカチで垂れてくる水を拭う。
せっかく1時間かけてセットしたのに・・・近頃のご令嬢様はなかなかに気性が荒いのね。
ていうかこんな修羅場みたいな体験が出来るなんて・・・人助けもしてみるものだ、なんて考える私は結構ポジティブだと思う。
「なっ何とか言いなさいよっ!この雑誌にも書いてあるじゃないっ!?アメリカで有名な資産家の息子と付き合ってるって!!」
「少しは落ち着いてください、いくら個室だとしてもアナタの声は響きますよ?」
「っ・・・しかもアメリカでプロヒーロー事務所を開くんでしょう!?なら焦凍さんと結婚なんて出来ないじゃないですか!!」
「私の声は聞こえませんか?声が大きいって言っているんです。」
「っアナタなんてお爺様に言えばプロヒーローも続けられなくなるのよ!?」
“それでもいいの!?” と叫んだその女に、ブチッ・・・と私の中の何かが切れる。
そのお爺様が焦凍の言っていた公安のお偉いさんなのだろうが、もう我慢も限界だ。
本当はエンデヴァーさんの前でこんなことしたくないが背に腹はかえられない。
そう心の中で呟いて、目の前にあったお水をそのご令嬢の頭からぶっ掛けた。
《!!》
「っ・・・キャァァアッ!!」
「あら、失礼?アメリカ帰りで何も知らない尻軽女なので、これがマナーなのかと。」
「なっ・・・!!」
「はぁっ・・・さっきから黙って聞いてればお爺様だ何だとキーキー喚くばっかりでっ・・・本気で私から焦凍を奪いたいなら焦凍の好きなところ言い合うくらいの事したらどーなんですか!」
「それはっ・・・!」
「こちとら焦凍と結婚するためならアメリカの上手い話だって資産家の息子だってプロヒーロー資格だって捨ててやる覚悟持って来てるわ!!」
“お爺様呼んでこいや!” と言おうと思った私の腕が引かれ、気がつけば左右違う色の瞳と目が合った。
それに驚いて目をパチクリする私の身体は流れるように焦凍の腕の中に収まって、そのまま自分の唇に柔らかい何かが押し当てられた。
《!!》
「・・・しょ、しょう・・・と・・・?」
「アンタと結婚出来ないんじゃない。・・・俺がコイツ以外と結婚する気がないんだ。」
「っ・・・//////!?(い、今っ・・・キスっ・・・!?)」
「ハハハハッ!よく言った焦凍ッ!!それでこそ俺の息子だッ!!」
「(ってエンデヴァーさんも乗ってきたっ・・・!!)」
まさかのエンデヴァーさんと焦凍からの追い打ちに泣きながら帰っていくご令嬢とその父親。
どうやら娘のワガママに振り回されるタイプの父親なのだろうが・・・これを機に娘の教育をし直すべきだろう。
そう思いながら、私は未だに私を抱きしめている焦凍をどうするべきかという方へ頭を回転させた。