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数年越しの許嫁。
おなまえは?
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私には、許嫁がいる。
と言っても親が決めた相手で、小さい頃に1回会っただけの男の子…しかもすっごい嫌われていた。
「すまない、アイツは今取り乱しているんだ。」
「いえっ…。」
「しばらくすればアイツも冷静になる。そしたらまた会いに来てやってくれ。」
そう言った彼の父親エンデヴァーさんの顔は笑っているけど笑っていなくて…。
幼いながらに恐怖心を覚えた。
そんな彼が同じ高校の同じ科にいると知って、私は困惑したまま日々を過ごしていた。
「…って思ってたのに、普通にスルーだし…。」
「!…どうしたんだい、苗字?」
「物間君…。」
「可愛い顔が台無しだよ?」
「エセ紳士うるさいよ。」
そう言って物間君を私の前から退かす一佳ちゃん。
2人とも私のクラスメイトで、とても良くしてもらっているのだけど…今のこの悩みについてはさすがに言えないだろう。
「名前?」
「…私さ、実は初恋の人がいるんだけど…その人にすっごい嫌われてたんだよね。」
「恋バナ?」
「そうじゃなくて…、久しぶりに会ったらさ、相手が私の事なんて覚えてなくて…寂しかったっていうか…。」
「へぇ…。」
隣でモゴモゴ言っている物間君の口を塞ぎながら、私の話を聞いてくれる一佳ちゃん。
クラスメイトの委員長はさすが、聞き上手だ。
そんな事を考えながら、私はついついポロポロと2人に愚痴を零してしまった。
「大体ねっ?私だって親に言われて連れていかれただけなのにいきなりキレられたんだよ!?」
「うんうん、それはひどいねぇ。」
「そりゃあ見た目はカッコイイし?親が有名ヒーローだから私みたいな庶民が関わるのも烏滸がましいのかもしれないけどさっ!?」
「ちょ、ちょっと名前…?」
「なに!?」
「それってもしかしてさぁっ…アイツのことっ…?」
そう言って一佳ちゃんが指さした先にいたのは気まずそうにコチラを見る白と赤の髪の彼。
驚いて固まっていれば、相手は周りのざわめきも気にせず私の前まで歩いてきた。
「… 苗字 名前、だよな?」
「っ…ひ、ヒトチガイデスッ…。」
「あっれぇ?君はA組の轟 焦凍君じゃない!?どうして君みたいなエリートがーーー。」
「アンタは黙ってな。」
“拗れるでしょ。” と物間の口をもう1度塞ぐ一佳ちゃんにペコリと頭を下げる彼。
その顔は少し前まで盗み見ていた彼と違い、どこかスッキリとした表情になっていた。
きっと、体育祭で何かが変わったのだろう。
「(体育祭で炎使ってた…。もしかしてアレが関係してるのかな…。)」
「…あの、さ…少し話したいんだけど。」
「!…ヒトチガイデスっ…。」
「名前、いい加減にしなって。」
「!…一佳ちゃん…。」
「わざわざうちのクラスまで来てくれてるんだよ?ちゃんと話聞いてあげなよ。」
私の頭を撫でながら説得してくる一佳ちゃんに、私は迷った末に仕方なく頷いた。