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遠回り
おなまえは?
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乱菊さんと飲んで潰れて、起きたら隣に弓親さんが寝ていた。
…うん、この展開は初めてだ。
そう考えながら弓親さんの整い過ぎている顔を眺める。
まつげ長いし肌ツルツルだし…この人本当に男なのだろうか…?
「(実は女でしたって言われても信じる…。)」
だけど稽古になると強くてカッコイイんだよなぁ、この人。
自分より大柄な隊員とか普通に伸すし。
「でも、珍しいな…。(いつもは起きてるのに。)」
今までも酔っ払って帰れなくて、弓親さんが迎えに来てくれた事はある。
でも次の日の朝、私が起きる時にはいつも弓親さんは起きているのだ。
大体はご飯作ってたり、本を読んでいたり…。
「(そうだ!たまには私がご飯作ろう!いつもお世話になってるお返しになるし!)」
そう思い私は1人いそいそと出かけることにした。
食材を買うために流魂街へと出れば、朝から嫌な人に出くわした。
つい先日、私を“命がいくつあっても足りない。”と振ったアイツだ。
「!… 苗字。」
「…失礼します。」
「ま、待ってくれっ…!」
ガシッと腕を掴まれ、気がつけばその人の腕の中で抱きしめられていた。
一瞬跳ねた心臓と、どこか違和感を訴える脳。
その違和感を拭い切れず無理矢理抜け出せば相手はもう一度私の腕を掴んだ。
「聞いてくれっ…!俺はやっぱりお前の事がっ…!」
「はっ…!?アナタが私を振ったんですよ!?」
「それはっ…綾瀬川五席に言われてっ…。」
「!…弓親さん…?」
ここに来て急に出てきた先輩の名前に思わずポカンと口を開けて固まる。
この人は弓親さんと関わりがあるのだろうか?
そう思い相手を見つめれば相手は意を決したように口を開いた。
「綾瀬川五席が脅してきたんだっ… 苗字に手を出したら十一番隊が許さないってっ…。」
「…はっ…?」
「あの人言ってた!!ずっとこうしてお前を守ってきたんだって!お前がいつもフラれてたのってあの人のせいなんだよ!」
「…う、うそっ…。」
「本当だ!!」
そう言って私の腕をさらに強く握るその人に、私の脳はグルグルと空回りを続ける。
まさか、あの人がそんなことする訳ない。
私のことをあんなに可愛がってくれる人なのに。
「綾瀬川五席はお前に恋人が出来ないようにしてたんだよっ、最低だっ…。」
「さ、最低っ…?」
「あぁ、最低だっ…!きっとひ弱な自分じゃお前に好きになって貰えないからって躍起になってたんだろっ?」
グイッ…と抱きしめて “俺が守るよ!” と囁くその人に、ようやく何が起きているのか分かった。
あぁ、私ってばこんなに鈍感だったのか。
そう思ったら少しだけ笑えてきた。
「……て。」
「え?」
「離してって…言ってんの!!」
「なっ!?」
自分を抱きしめていた身体を思いっきり蹴って無理矢理離れる。
相手は驚いたように尻餅をついているが、そんなものに気を使っている場合ではないのだ。
「ありがとうございました先輩!おかげでやっと分かりました!」
「えっ…?」
「さようならっ!!」
早く、早く。
帰らなければ、あの人のところへ。
ずっと近くで私を見ていてくれたあの人に、伝えなければならないんだ…今の気持ちを。
そう考えて走る私の瞬歩はきっといつもよりスピードが出ていたに違いない。