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メンヘラ王子
おなまえは?
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布団からモゾモゾと顔を出して窓を見る。
カーテンから差し込む光はまだ薄明かりで、完全な朝にはなっていない時間だと分かった。
「…ベル、ベル。」
「ん…なに…?」
「そろそろ私も仕事行くね。」
「は…?なんで?」
「何でって…そりゃあ私も独立暗殺部隊ヴァリアーの一員だからね。仕事くらい行くよ。」
そう言ってベッドから立ち上がれば後ろから伸びてきた手が私の腰に巻き付く。
やっぱり起こさずに行けばよかっただろうか?
いや、でもそれはそれで後々面倒なんだよな。
そんなことを考えながらその巻きついている手から独特な形をしたナイフを奪い取れば、相手の口から不服そうな声が漏れた。
「俺のナイフ…。」
「恋人を抱きしめる手には要らないものでしょ。」
「あー…それはお前次第じゃね?」
「嘘でもいいから頷いてよ、そこは。」
近くに脱ぎ捨てられていたシャツを羽織って、枕元に置いてあった携帯を掴む。
時間は朝5時過ぎ。
本来なら4時にアラームが鳴るはずだったのに、それは見事に消されてしまっている。
「(おかげでシャワー浴びる時間もない…。)」
「名前、仕事なんて行くなよ。王子が行くなって言ってんだから行くな。」
「ワガママ言わないの。それから勝手にアラーム切るの止めてって何回言えば分かるの?」
「はぁ?王子に命令すんの?」
「命令じゃなくてお願い。それと今回の仕事はボス直々にお願いされたものだから行かないと私が殺されちゃうの。」
「ボスと王子、どっちが大事なわけ?」
「んー…ボス。」
「ししッ…殺す♪」
ベルがそんな言葉を呟いた瞬間に頬を掠めるナイフを視線だけで追う。
相変わらず自分勝手なワガママ王子だ。
が、おかげで身体が解放された。
そう考えて一歩足を踏み出せば見えたキラリと光る線に、天才は仕事が早いなと感心してしまった。
「しししッ…王子から逃げられると思ってんの?」
「本当…才能の無駄遣い。」
「は…?マジ生意気…。」
「生意気結構。それに、そんな生意気な私が好きなんでしょ?ベルフェゴールは。」
「!」
ベッドの上に座り込んだままナイフを操っていたベルにキスを一つ。
そのまま何度も何度も軽いキスを繰り返せば、私の身体と頭にその手が掛かる。
可愛い可愛い私の王子様は本当にワガママで、それでいて本能に忠実。
「名前ーーーー。」
「はい、おしまい。」
「は…?」
緩んだ線を隠していた短剣で切り落とし、窓を開ければ眩しい朝日と目が合った。
全く…夜属性のヴァリアーに朝から仕事なんて、ベル以上にワガママで俺様なボスにも困ったものだ。
「おい名前テメェ騙したのかよ!?」
「騙してなんていないよ、さっきのは“いってきますのチュー”だもん。」
「ふざけんなコッチはヤる気になったってのにどうすんだよ!」
「浮気は基本許さないけど、一夜限りの相手なら気づかないフリしてあげる。」
“あ、一夜じゃなくて一朝?”
そう呟いた私に再び飛んできたナイフを避けて、私は窓から飛び降りた。
あわよくば仕事が終わる3日後までに愛しの王子様のご機嫌が治りますようにと願いを込めて。
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