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自分のやるべきことを
おなまえは?
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「本当に1人で行くのかい?」
「別に逃げたりしないから。玉もー…斬魄刀を返してもらってくるだけ。」
「名前、ギンは君がいた牢を壊して君を連れ出してきた。もちろん証拠なんて残していないだろう。」
「…何が言いたいの?」
「彼らの中での君は、もう敵だ。見つかったら捕まってしまう。」
“ 名前が心配なんだ。” と後ろから優しく抱き締められ、首元に口付けが落ちてくる。
百年前よりも余裕のない惣右介の姿に自分の心臓がうるさくなって、こんな気持ちを捨てられない自分に無性に腹が立った。
結局、私はコイツを拒絶することは出来ない。
それが全てだった。
「(ならせめて彼らの命だけでも守る…。)」
尸魂界に来る前、喜助さんが言っていた。
“黒崎一護” は何もかもが規格外だと。
ならば、規格外のアイツに全てを託していく。
「名前?」
「…なんでもない。」
「出ていく前に、聞いてもいいかい?」
「何?」
「いつも隣にいた筈なのに、僕たちはいつからすれ違っていたんだろうね?」
眉を寄せ、切なそうに視線を泳がす惣右介につられて自身の下唇を噛み締める。
それをお前が言うのか、と叫んでやりたい。
そう思いながらも声が出ないのは私の中にある惣右介への罪悪感のせいなのだろう。
「…惣右介は、何のために死神になったの?」
「!…また意地の悪い質問だね。」
「いいから答えて。」
「……気まぐれ、かな。名前と出会う前の僕は生きていたのに死んでいた。何もかもを諦めて、白黒の世界でただ息をしていたに過ぎないから。」
「……。」
「君のいない世界なんて僕にとっては色も光もなくした何の意味もない箱庭だ。この百年、君が戻ってくることだけを信じて耐え続けて…ようやく僕の世界に光が戻った。」
“それが全てだよ。”
揺れた瞳を誤魔化すように瞼が落ちる。
口元には昔と同じような笑みが張り付けられ、その瞬間だけ出会った当初の惣右介をみているかのような錯覚に陥った。
「いつから、なんて分からない。」
「名前…?」
「もしかしたら、最初から隣になんて並んでいなかったのかもしれない。」
「……。」
「だけど、私は諦めない。」
一歩前に出て、扉に手をかける。
鉛のように重く感じる自分の足は外へ行く事を拒んでいるかのようで、その滑稽さに自分の口角が上がったのが分かった。
「惣右介を止めることを、諦めるつもりはない。」
「… 愛は盲目だね。」
「それはお互いでしょ。」
「そうだね。だからこそ、僕は名前と2人で生きる世界を選ぶ。あの物語のように死を以て永遠の愛を誓うなんてことは許さない。」
あの物語、とは院生時代に私が読んでいた現世の戯曲のことだろうか。
たしかに惣右介はあの頃から物語の終わりに文句を言っていた気がする。
愛する人にはどんな形であっても死なずに生きていてほしい。
そう言った惣右介の寂しそうな顔を、私は何故だか鮮明に思い出すことが出来た。
「それじゃあ、またね。」
「あぁ…待っているよ、名前。」
背中越しに聞こえてきた惣右介の声は嫌に穏やかな声だった。
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