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まだ間に合うだろうか?
おなまえは?
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手に持っていた本を置いて、息を吐く。
私の気持ちなど知る由もない空は綺麗な青色を広げているし、少し向こうには薄く虹が見えた。
その景色だけで私の機嫌は最底辺だ。
「…まァた考えとるんか。」
「!…平子隊長。」
「その呼び方、いい加減止めェや。俺はもう隊長やないんやで。」
「…すみません。」
“よっこいしょ。” なんて言いながら私の隣へと腰をかける平子隊長を横目に息を吐く。
私たちが現世に来て既に50年以上が経った。
せわしなく変わる現世の情景はいつだって私に時の流れを実感させる。
「(私という存在は何一つ変わらないのに…。)」
時が経てば藍染惣右介という男のことを嫌いになれると思っていた。
温もりも忘れ、声も忘れ、顔すらも曖昧になって。
このままアイツへの気持ちなど簡単に消えていくのだと思っていた。
「っ……。」
「…泣きそうになるなら思い出すなや。」
「…はい、」
「藍染惣右介は裏切り者や。」
「は、い…。」
「俺たちの敵で、お前の敵や。」
「っ……。」
ポロポロ…と溢れてきた涙が手のひらに落ちる。
それをどこか他人事のように眺めていれば、私の頭の上にポンッと大きめの手が乗っかった。
その手が、私に泣くなと言っていた。
「…好きなんやなァ、アホみたいに。」
「っ……分かってるんです、裏切り者だって。敵として戦わなきゃいけないんだって…。」
「…せやな。」
「この気持ちは、忘れないといけないんだって。」
「…せやな。」
「っ…嫌いにっ…ならなきゃいけないんだって!」
「…落ち着きィ、苗字。」
いやに落ち着いたその声にハッと我に返る。
なにを言っているのだろうか、私は。
こんなこと…目の前の平子隊長に言ったって意味は無いのに。
単なる八つ当たりにしか、ならないのに。
「…すみ、ませんっ…。」
「…なァ、苗字。」
「はい…。」
「嫌いに、なりたいんか?」
「!…え…?」
「せやから、藍染のこと嫌いになりたいんかって聞いてるんや。」
何を言っているのだろうか、と目を見開く。
嫌いになりたいとか、なりたくないとか…そういう次元の話じゃないだろう。
藍染惣右介は敵で、私はいずれアイツと敵対しないといけないのだ。
それが、私の役目だ。
「…別にええやん、好きでも。」
「は…?」
「好きならしゃーないやろ。こればっかりは意図的に操作できるもんでもないしな。」
「で、でも藍染は敵ですっ…!」
「せやから…敵だからって嫌いになる必要はないやろって言ってんねや。」
「なに、言ってッ…。」
「好きやから、止めたいんやろ?」
「!」
「自分の大切な奴やから間違った道から引き戻したいんやろうが。」
“考えすぎなや、アホ。”
そう言って笑った平子隊長の髪が太陽の光を反射して、私はその目を思いっきり閉じた。
熱を帯びた目元は暫く開けることが出来なかった。
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