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約束
おなまえは?
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その日は朝から憂鬱だった。
別に朝から嫌な事が立て続けに起きた訳では無い。
いつも通りの目覚めだったし、毎日の楽しみである朝ご飯だって美味しく頂いた。
それなのに心の底から憂鬱な気分になるのは、昨日届いた実家からの手紙のせいだろう。
“貴方に良い人が出来たと聞きました。今週末、その方を連れ一度顔を出しなさい。”
「……はぁ…。」
「君らしくないね、苗字。まだ朝なのにそんな大きな息まで吐いて。」
「あぁ…うん、まぁ少しね。」
良い人…なんて十中八九、藍染のことだ。
まさか実家にまで伝わるほど噂になっているなんて思わなかった。
というか、どこから聞いたのだろうか。
手紙の内容からして母親は確実に私の恋人となった男を見極めようとしている。
私の夫となるならば、それはつまり苗字家の跡取り候補の父親となるのだから。
…もちろん私は会わせるつもりなんてないけど。
そう思ってもう一度息を吐けば、藍染が心配そうに私の顔を覗き込んできた。
「悩み事かな?」
「まぁ…。」
「それは、僕にも話せないことなのかい?」
「ん、そうだね。」
「… 苗字、ちゃんと僕の方を向いて。」
グイッ…と無理矢理に藍染の方を向かされる。
その目は少しだけ怒気を含んでいて、自分が再び藍染を怒らせてしまったことに眉を下げた。
藍染に怒られるのは心身ともに疲れる。
だからこそ避けてきたのに、最近の藍染はよく分からない所で怒るから困ってしまう。
「僕は君の一番の良き理解者だと思っていたけど、それは傲りだったのかな?」
「それは…そうだけど。」
「なら、どうして僕に話せないんだい?」
「…話したら、藍染に迷惑が掛かるから。」
「!…構わないよ。僕は出来る限り苗字の力になりたいんだ。」
私の手をギュッと握って、寂しそうに眉を下げる。
最近になって気がついたのだが、どうやら私は藍染のこの顔に物凄く弱いらしい。
自分が悪くない時でもこの顔をされると何故か罪悪感に苛まれ、少しでも藍染の希望を叶えてあげようと思ってしまう。
「苗字。」
「…分かった、話すよ。」
「本当かい?」
「ん…だから手離して、恥ずかしいから。」
嬉しそうに目を細める藍染から解放された両手はいつもよりほんの少しだけ暖かった。
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