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仮免試験
おなまえは?
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「いやぁ、いよいよだね!」
楽しみだー!と笑えば隣で消太が息を吐く。
本当は私のことをお留守番にしたかったらしいが、そうは問屋が卸さないってね。
「いつの間にバスに乗ったんだ…。」
「轟くんに頼んだの、彼はすっかり私の虜なのさ!」
「すみません先生、でも試験前にモフモフに触れて満足出来ました。」
どや!と尻尾を立てれば消太にギロリと睨まれる。
それに驚いて逃げようとすれば、消太が轟君の腕の中にいた私の身体を持ち上げた。
「大人しくしてろ。」
「分かってるよー…。」
「…ならいい。」
“今更送り返すことも出来ん。” と私の頭を撫でる消太にクルクルと喉を鳴らす。
やっぱり消太の手は1番安心するな…なんて目を閉じれば、その幸せな時間は消太の名前を呼ぶ声のせいで中断されてしまった。
「イレイザー!?イレイザーじゃないか!!」
《!》
「テレビや体育祭で姿は見てたけど、こうして直で会うのは久しぶりだな!!」
「あ、あの人はっ…!」
「結婚しようぜ!」
「(結婚っ!?)」
「しない。」
「しないのかよ!ウケる!!」
ブハーッと吹き出すその人はどう見ても女性。
出会って5秒で求婚なんてどういう神経してるんだ、と私の眉間に皺が寄る。
ていうか消太も当たり前のように返事してるし、何コレどういう関係なのこの人と。
「相変わらず絡みづらいなジョーク。」
「スマイルヒーロー“Ms.ジョーク”!個性は爆笑!
近くの人を強制的に笑わせて思考・行動共に鈍らせるんだ!彼女のヴィラン退治は狂気に満ちてるよ!」
緑谷くんの丁寧な説明にやっぱりプロヒーローかと奥歯をギリッと噛み締める。
消太は基本的に女子と関わらない。
学校でも私用で話すのは私しかいないくらいなのに、このやり取りは明らかに慣れ親しんだそれで…。
「(これが日常ですっていう空気がムカつくっ…!)」
「おいおい、私と結婚したら笑いの絶えない幸せな家庭が築けるんだぞ?」
「その家庭幸せじゃないだろ。」
「ブハッ!」
なに、これ。殴っていいかな?
そう思った私の気持ちを察した女子たちがアワアワと慌て始める。
数日前に私の話を聞いたばかりの彼女達からしたら今見ているそれは明らかなる修羅場だ。
慌てるのも無理はない。
「な、仲がいいんですね…?」
「昔、事務所が近くでな!助け助けられを繰り返すうちに相思相愛の仲へとーーー。」
「なってない。」
「いじりがいがあるんだよなイレイザーは!」
そう言って笑った彼女にプチッ…と何かが切れる。
なるほどなるほど、そうですか。
そっちがその気ならやってやろうじゃないか。
そう思った私は、私を抱える消太の手を思いっきり爪で引っ掻いた。
「!?」
「どうやらお邪魔なようですので…私は先に行ってますね、相澤先生?」
《(あの苗字さんが怒りのあまり敬語にッ…!)》
「おい何言ってんだーーー。」
「ガッティーナっ…?」
“まさかガッティーナなのか?” という女性の言葉に一瞬だけ立ち止まる。
ガッティーナは私のヒーロー名だ。
1年の時に消太と山田が付けてくれた、私の名前。
「…誰の事ですか?」
でも私は今彼女と話したくない。
そう思った私は小さくそう呟いて、その場からさっさと走り去った。
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