↓↓
君が過去からやってきた
おなまえは?
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ガチャリ…と扉を開ければ、中で待っていたその子が僕を見てニコリと笑う。
僕の個性が本当に彼女に効いていたのだとしたら彼女は未来の世界に行っていたハズだ。
そして刺青を元に僕の双子の弟を探し出し、そして元の時代に帰ってきた。
「…こんにちは、苗字さん。」
「急に呼び出してすみません。どうしても貴方自身にお聞きしたいことがあって、色々なコネをフル活用しちゃいました。」
「あはは、さすが未来のプロヒーローですね。」
両手を固定されている手錠が外される。
彼女が雄英高校ヒーロー科の中でもトップクラスの実力だからだろうか?
にしてもこんな個室で手錠を外して2人だけで密会させるなんて、日本の警察も緩くなったものだ。
「それで、私に何の用ですか?」
「…伊弦 竜二、と名乗っているようですね。」
「!…そりゃあ私の名前ですから、私が名乗っても問題はないでしょう?」
「あはは、そうですね。もしそれが本当に貴方の名前ならそれでもいいと思いますよ?」
笑っているけど、笑っていない。
僕も彼女も傍から見たらそう見えるのだろう。
まるで腹の探り合い。
そんな状況も悪くは無いと思えるのは、僕が彼女を完璧に騙せるという自信があるからだろう。
「刺青、見せてくれませんか?」
「!…何故、ですか?」
「ダメですか?…もう一度見たいんですよね、その綺麗な赤い椿の刺青。」
「…どうぞ、好きなだけ見てください。」
彼女の思惑は全く読めない。
が、彼女の中で赤い椿は竜二で白い椿が太一となっているはずだ。
なぜならこれから僕がそういう設定の未来にしていくから。
そのためにわざわざ赤い椿を付けてからこの子に個性を使ったのだから。
捲りあげた腕に彼女の手が這う。
と同時にチクリと傷んだ腕に視線を向ければ、そこには細い針が刺さった自分の腕が見えた。
「まさか未来のプロヒーローが傷害事件ですか?」
「あはは、大丈夫ですよ。ちゃんと赤い椿の中に刺しましたから目立ちません。」
「私を…殺す気ですか?」
「まさか。プロヒーローは平和を守る正義の味方です。殺しなんて以ての外。」
“これは、弟さんからのプレゼントです。”
彼女がそう言って笑った瞬間、グラリと視界が大きく揺れる。
嫌な予感がする。
その得体の知れない恐怖心に煽られ僕の腕に触れる彼女の手を振り払って自身の腕に視線を落とした。
痛みのあった部分には綺麗な赤い椿が咲いている。
その花びらの1つに針が刺さった跡があるものの、小さすぎて数時間後には消えてしまいそうだ。
「双子の弟、竜二に罪を擦り付けようと思ったんでしょうけど、未来の貴方が最後の最後にネタばらしをしてくれたので助かりました。」
「ッ…まさか僕がそんなことーーー。」
「伊弦太一という男ならやるでしょう?自分の身の安全しか考えていないんだから。」
「なッ…。」
「未来の貴方は演技力がアカデミー賞ものでして、1回はしてやられました。けど、個性テストに私を使ったことが間違いでしたね。」
“私、転んでもタダじゃ起きないタイプなんで。”
ヘラリと笑った顔に思わず殴りかかろうとするも簡単に受け止められる。
そのまま床に押さえ込まれて暴れれば、外から彼女を心配するような声が聞こえてきた。
「ちなみに弟さんからのプレゼントなんですけどね、アレってめちゃくちゃレア物なんですよ。」
「れ、レア物っ…?」
「はい。とあるヤクザもの達が何年も研究を重ね続けて出来上がった“個性を壊す薬”らしいです。」
「!!?」
「出来上がるのは今から12年後で、完全に壊しちゃうから元に戻す方法は見つかってませんでした。」
「ま、さかッ…そんな薬出来るわけーーー。」
「出来るわけないと思うじゃないですかぁ。でも12年って長いんですよ、伊弦 太一さん。」
身体から何かが抜けていく錯覚がする。
全身から嫌な汗が吹き出して、脳すらも正常に機能しようとしない。
何かにすがりつきたくて伸ばした手は軽く避けられ、意識がふわりと遠くなった。
「では、さようなら。」
最後に見た女の顔は部屋に入った時に見えた、あの貼り付けられたような気持ちの悪い笑顔だった。
1/4ページ