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仕掛けられた罠
おなまえは?
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キュッ…と締められた帯を見て息を吐く。
いつもの死覇装とは違う、色鮮やかな着物は重暗い私の気持ちを包み隠しているようだった。
「…母上、やはり考え直して貰えませんか?」
「今更何言ってるの!せっかく行き遅れた貴方に素敵な縁談が舞い込んできたのに!」
「行き遅れたって…私これでも死神だよ?別に結婚なんてしなくても1人で生きていけるよ。」
「ダメよ!死神になるのだって本当は反対だったんだから!せめてもの親孝行として結婚くらいはしてちょうだいっ!」
“それとも貴方は苗字家を潰す気!?”
そうヒステリック気味に怒る母親に、今度は思いっきり大きく息を吐く。
なにが苗字家だ。
貴族は貴族でも下層じゃないか。
本当はそう言って今すぐにでも逃げ出したい私がそうしないのは、全て仕事のためだった。
霊術院を卒業して、配属されたのは四番隊だった。
戦いには向いていないと自分でも分かっていたし、得意の回道で皆を助けられるなら…とその任を受けた。
それから毎日必死に仕事をこなし、気がつけば四席なんていう立派な地位も頂いた。
「名前、貴方には才能があります。きっと私のように多くの人を救う死神になれますよ。」
「!っ…はい!」
憧れの卯ノ花隊長にそんな声をかけられたのはつい数日前のこと。
これからもっともっと頑張ろうと思っていた私にいきなり舞い込んできた縁談話を、私は考える間も無く断った。
しかし相手はどこかの官職さんで、母親は行き遅れた娘を嫁に出す最後のチャンスだと勝手に返事を出してしまったのだ。
「もし少しでも逃げようとしたら、護廷十三隊を辞めて実家を継いでもらうわよ!いいわね!?」
「……わかったってば。」
「相手の方は無口な人らしいけど、アンタお喋りなんだから話するのよ!」
「はいはい。」
「仕事の話はダメよ!もっとこう、趣味とかそういうの話しなさい!」
「ちゃんと話すし、よっぽどの人じゃない限り愛想良くしてるから安心してよ。」
慣れない着物で廊下を歩く。
さっさと終わらせて帰ろう、なんて思いながらチラリと視線を向けた中庭には綺麗な紫陽花たちが色を添えていた。
そうか、もう季節は梅雨なのか。
「名前、早く来なさい!」
「…はいはい。」
ふと紫陽花の花言葉を思い出す。
移り気、浮気、無常…。
色によって様々だったため全てを把握することは出来ていないが、見た目の可愛らしさに反して随分と冷たい花言葉だと思う。
そんな事を考えながら、私は縁談相手の待つ部屋へとその足を進めたのだった。
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