↓↓
おかえり、世界
おなまえは?
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
その場所は極秘だと、オールマイトさんは申し訳無さそうに眉を下げた。
タルタロス。
ギリシャ神話の神の名。
奈落、そのものを表す。
そんなよく分からない説明を聞きながら車に揺られ続けて、どれくらい経っただろうか。
「… 名前ちゃん、ついたよ。」
「……たる、たろす…。」
一般人として生きてきた私でも感じる異様な雰囲気がその建物を覆っていた。
…やはり、来るべきじゃなかったのだろうか。
ついそんな事を考えてしまう私は、弔さんという甘い毒に浸り続けて前よりも弱くなっていた。
「…やめてもいいんだよ。」
「!」
「君に辛い思いはさせたくない。」
「……大丈夫ですよ、オールマイトさん。」
誤魔化すように微笑めば、オールマイトさんは少し迷ったように視線を揺らしてから私の頭に自分の手を置く。
なんだか、その手からオールマイトさんの優しさが流れ込んできているみたいだ。
そう思ったら私の緊張は自然を解けていった。
「やぁ、名前。元気そうだね。」
部屋に響くその声に、私は息を飲み込んだ。
いくつものチューブが身体に繋がれている。
身体は固定された椅子へと括りつけられていて、自分の顔に手を伸ばすことも出来ない。
そんな男は眼球がないにも関わらず、まるで私の姿が見えているかのような挨拶を零した。
「っ……せん、せいっ…。」
「あぁ…そうだよ、よく分かったね。」
「っ……。」
「オールマイトも連れてきたんだね。彼は君の親代わりみたいなものだから、今日は付き添いかな?」
「しって、たんですかっ…?」
「もちろん。君のことで僕が知らない事はないよ。」
ゾワゾワと全身に悪寒が走る。
その言葉は、脅しやハッタリなんかじゃない。
本当にこの人は私の全てを知っている。
その声だけで、私はそれを悟ってしまった。
「名前ちゃん大丈夫かいっ…?」
「っ…だ、大丈夫ですっ…。」
「そうだよ、オールマイト。彼女は僕にとっても大切な子なんだ。傷つけたりはしないさ。」
「…彼女の様子が少しでも変だと判断したら、すぐにここから出ていく。君の思うようにはさせない。」
「随分と警戒しているんだな、オールマイト。まるで名前が君を裏切るかもしれないと心配しているみたいに聞こえるぞ?」
“信じてないのかい?オールマイト。” という言葉にオールマイトさんの手がピクリと動いたのが分かる。
オールマイトさんがヒーローとしての力を失ったキッカケを作ったのは、この人だ。
だとしたらこの2人には私も知りえないぐらい深い繋がりが隠れている。
…それが、肌を通してビリビリと感じられた。
「僕は名前と2人で話したい。」
「それは出来ない。」
「出来るさ。…そうだろう、名前。」
ニッコリと口角を上げたその人に、私は頷くことしか出来なかった。
1/5ページ