ナオ side

「おかえり、あらあらこんなに大きくなってねぇ」

「ナオ ！腰に効く薬あるか？！この前父さんがぎっくり腰やっちまってよ」

村に入るなりワッとできる人集りに苦笑する。変わらないなぁこの人達は。
急いでいつもの場所に馬を止めると荷台の荷を解いて即席の屋台を作る。

『皆！今回はお薬を沢山仕入れてきたから足りなくなってる人は買ってって！そっちは衣服、こっちは雑貨だよ！』

全国各地を歩き回って、生活必需品から珍品まで幅広く取り扱っている行商人は指折り数える位しかいない。


私もその1人だ。

荷台いっぱいに詰め込んだ商品をあらかた売り終わって、店仕舞いをしていると見覚えのあるシルエットがはけていく人を避けて近寄ってくる。

「よっ、相変わらず口が上手いやつだ」

ボサボサの髪を無理やり撫で付けてタバコを咥えている。私と似た特徴的なタレ目のグレーの瞳が懐かしむように細められた。

『兄ちゃん！ただいまぁ！』

私は駆け寄って兄の逞しい胸に飛び込んだ…と広げた両腕は空を掴んで、肝心の兄は横にひらりと避けていた。

「おおっと…良い意味でも悪い意味でも変わらねぇなナオは。 良い奴、居なかったのかよ」

『…1人居たけど…ずっと旅しながらなんて無理だってフラれた、あと一歩だったのに…』

「がははっ！まぁ次に期待するこった。っとそうだ、リックの野郎がバーでお前の到着を祝うパーティー開くってよ。もちろん、付き合うよな？」

『アップルパイがあるんだったら行く！』

「よし決まりだ、旅先の話聞かせろよ」